インデックス投資

オルカンとS&P 500の大流行時代に知りたい3つの投資信託:グロソブ、3分法、インカム株式

2024年6月14日

現在人気の投資信託は資金流入量で言えばオルカン(eMAXIS Slim全世界株式)であり、残高でみればS&P 500(eMAXIS Slim米国株式 S&P500)になる1。この2つとも株式インデックス型投資信託といわれている株式指数に連動した投資信託だ。

新NISAから投資を始めた人達には、とにかく株式インデックス型投資信託を積立てるという行為は当たり前の行為に映るだろう。しかし、1990年代後半からの本格始動した日本の投資信託の歴史からすれば、これはごく最近の流行である。

過去どんなファンドが人気だったのかの紹介と株式インデックスファンドブームに乗っていいのかを考えてみたい。

投信の歴史はアセットクラスのパフォーマンスの歴史

投資において重要なことはパフォーマンスが良いか?である。今の株式インデックス型投信に人気が集まっているのもパフォーマンスが良いからだ。ただし、今のパフォーマンスは、将来のパフォーマンスを約束しているわけではない。

これから紹介する3つのファンドはその時代には抜群のパフォーマンスを見せていたものである。そして、その後、株式インデックス型投信にパフォーマンスで負けたものともいえる。つまり、パフォーマンスが良い=すでに割高=今後下落があるかも=そうすると人気がなくなるというう理論はどの商品にもあり得ることだ。なぜなら、誰もが過去のパフォーマンスがわかるが、将来のパフォーマンスがわからない。

そういった意味で、今株式インデックス型投信を買っていたとしても、過去人気だった投資信託を知ることは重要だ。いつかは乗り換えなくてはいけない時期が来るかもしれない。

株式インデックス型投資信託ブームはここ最近の現象

オルカンが資金流入で1位になったは2023年11月2、S&P 500連動型投資信託が残高首位になったのは2023年1月とここ半年ぐらいの事象である。むしろ、S&P 500連動型投資信託である「eMAXIS Slim米国株式 S&P500」が資産残高首位になった際には、1997年10月以来およそ25年ぶりに株式インデックス型投資信託が投資信託業界の残高首位になったということで大きな話題になった3

アクティブファンド vs. インデックスファンドの議論もあるが、その一方で市場が支持してきたのはここ25年ではアクティブファンドだともいえる。そして、アクティブファンドの投資対象は株式だとも限らないのだ。

そう考えると株式インデックス型投信を盲目的に買い進めるもの良いが、他のオプションも知っておくのは悪くない。

過去話題だったファンド:3選

ここでは過去人気があった3つの投信を紹介したい。

アクティブ債券ファンド:グロソブ(グローバルソブリンオープン)

オールカントリーの略でオルカンであれば、グローバル・ソブリン・オープンはグロソブ。昔から流行る投信にはあだ名がつく。グロソブは、世界主要先進国のソブリン債券4を対象にしたアクティブファンドである。これだけ株式インデックス型投信ブームになったしても、大人気商品だったグロソブには現在でも破られていない2つのトラックレコードがある5

グロソブの2つのトラックレコード
1つ目は資産残高トップ期間:数ある投信の中でグロソブは、2002年1月から2014年3月までの147カ月と長期間にわたって資産残高トップの地位にあった(2位は、新光US-REITオープンの25カ月である)
2つ目は純資産総額:ピーク時には5兆7685億円(2008年8月8日時点、現在のeMAXIS Slim米国株式 S&P500は約4.8兆円、これだけ投資ブームになっても1兆円の差がある)の資産残高があった。

グロソブが人気があったのはパフォーマンスが出やすい時代背景があった。この時代、
日米の株式パフォーマンスがそれほど良くない
日本の金利が低かった
・1990年代中盤に究極に進んだ円高が、2000年代は是正され円安傾向にあった
といことがあり、他の資産クラスに比べて、相対的に海外の債券のパフォーマンスが良かったのだ。

しかし、時代が変わった。リーマンショックからしばらくたって株高が始まると、債券はパフォーマンスは伸び悩んだ。例えば著名投資家レイ・ダリオ氏が運営するファンドは、リーマンショック時には下落する株価の一方で、保有する債券がクッション材料になりその利回りは安定し、多くの称賛を集めた。

が、時代は変わる。その後のレイ・ダリオ氏が運営するファンドは、債券にこだわりすぎるあまりに株高時代に乗り遅れてパフォーマンスが落ちたとされる。それに加え、2022年の株式下落時に債券がそのクッション材料にならずに株式&債券両方下落したことから、戦略を疑問視される結果となった6

人気の元はアセットクラス間の相対的なパフォーマンス

投資信託の人気トレンドとは、とあるアセットクラスが持つ、他のアセットクラスへの相対的なパフォーマンスの良さというものがキーになっている。そして、そのトレンドは変わるということである。

現時点では、海外が主体の株式インデックス型投資信託が良いということは誰もが疑わない事実である。オルカンやS&P 500のパフォーマンスがどのアセットクラスよりも良いが、それが今後も永続的に続くかというとグロソブの歴史を見ればわかるようにその保証はないということになる。

現在、米国金利は歴史的に高い水準である。今後の米国金利低下で米国債券ETF等の値上がりを期待する声もあることは書いておこう。これは、レイ・ダリオ氏が信じた戦略に良い影響を与えるかもしれない。ただし、将来は誰もわからない。

バランスファンド:財産3分法ファンド

財産3分法ファンドというのは、株式、債券、不動産の3つのアセットクラスに投資するファンドのことを言う。

景気が良くなると上昇する傾向が強い資産クラスである「株式と不動産」は攻めのアセット。景気後退局面での株式に比べてパフォーマンスが相対的に良い守りのアセットとして「債権」を入れるというのが戦略。これにより、安定性と成長性を求めたある意味、オールウェザー型のファンドである。

現在は株式が好調のためあまり注目を集めていないが、株価が低迷すると人気が出てくるタイプのファンドである。

財産3分法ファンドはいろいろなタイプがあるが、株式、債券、不動産(REIT)といっても
対象地域:海外や国内などいろいろな対象がある(国内型、グローバル型)
アセットの比率:1) それぞれの割合が3分の1になっているもの 2) 攻め資産が半分(不動産25%、株式25%)、守り資産が半分(債券50%)になっておりより安定性を出しているもの、3) 配当金を多く出すために不動産を多くしているもの、4) アセットの比率が可変なもの、などいろいろなバリエーションがある
運用スタイル(アクティブ vs. インデックス):株式、債券、不動産(REIT)のそれぞれの運用方針もアクティブや特定のインデックスに連動したものがある
と、。ユーザーのニーズに合わせてアセットの比率をいろいろと設定したものを各社販売している。

現在、オルカンとS&P 500の投資信託として大人気のeMAXIS Slimシリーズにも「バランス(8資産均等型)」というものがある。これも財産3分法ファンドの流れを汲み、株式(37.5%)、債券(37.5%)、不動産(25%)の3つのクラスのアセットでそれぞれ地域を割り振って8つの資産を均等にしている。

初心者が持ち続け安い資産ミックス型投資信託

この財産3分法戦略は、初心者向けにBuy and Hold戦略をより維持するという視点でもっと語られても良いファンドだ。なぜなら、異なる性格を持つ資産クラスを持っている為、ファンド全体として下落耐性が強いからだ。

最近人気のロボアドバイザーもこの財産3分法ファンドの派生形ともいえる。ただし、3つではなく4大アセットを対象、つまり、株式、債券、不動産(REIT)に加えてが投資対象に含まれており、この4つのアセットでバランスを取る、財産4分法ファンドである。

これらの商品の弱点は信託報酬が1%程度のものが多く、オルカンやS&P 500に比べると割高感を感じてしまう点だろう。

株式インカム型:ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型株式)

オルカンやS&P500と同じ海外株を主体としながらも、それ以外真逆のコンセプトで運営されていた「ピクテ・グローバル・インカム株式ファンド(毎月分配型株式)」は、2019年4月から2020年12月の21か月間、純資産額トップランキング1位だったファンドだ。そして、現在純資産残高ランキング10位と今も人気は高い7

このファンドは、
1. アクティブ運用(NOT インデックス運用)
2. 高配当株の公共株にフォーカス(S&P500は業種のバランスも分散させている)
3. 信託報酬は約1.8%と低コストを追及してない(eMAXIS Slim S&P500は0.0935%)
4. 毎月分配金を出す(eMAXIS Slimシリーズは分配金なしで配当金等も内部再投資で基準価格を上げていく)
と現在人気のeMAXIS Slimシリーズと真逆のコンセプトのファンドである8

このようなタイプのファンドは根強い人気があり、「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」という投資信託が、純資産残高ランキング3位である。

退職者が安心の毎月分配型

配当金を出さないインデックスファンドは資産形成期には向いているが、退職者は自分で切り崩しを行わないといけない。その一方で、ファンドマネージャーが入り毎月安定した分配金を出すタイプのファンドは、自分で切り崩しを行わなくて良いのでより退職者向きである。

ただし、これらの商品の弱点は信託報酬が1%以上のものが多く低コストではない。

現在人気というのが正しいのであるが

過去に人気だった3つのファンドを紹介したが、どれもオルカンやS&P 500連動ファンドと違ったコンセプトで運営され時代ごとのパフォーマンスの変化に合わせて支持されるものが変わってきた。

現在は、
・AIブームもあり市場は米国の大型ハイテク・グロース株に注目が集まっている(S&P 500が有利)
・米国のインフレが強く米国金利は簡単には下がらない状態
・新NISAではつみたて枠、成長枠ともに毎月分配型の商品が買えない
という市場環境から過去人気だったファンドは下火で、オルカンやS&P 500連動ファンドのような、株式インデックス型の投資信託が流行している。

ただし、いつ新しいトレンドが来るかそれは誰にもわからない。投資は流行というわけではないが、オルカン vs S&P 500の議論をするだけでなく、もっと広い視点で商品を知っておくのが良いと考えている。

  1. 投資信託 - Yahoo!ファイナンス 2024年6月14日閲覧 ↩︎
  2. 11月の投信、504億円の資金流入 「オルカン」初の首位 - 日本経済新聞 (nikkei.com) ↩︎
  3. 投信残高、インデックス型が首位に 約25年ぶり - 日本経済新聞 (nikkei.com) ↩︎
  4. 政府や政府機関が発行または保証を行っている債券の総称。先進国などが発行するものは信用力が高いとされている。 ↩︎
  5. 投信残高トップの在位期間、首位は「グロソブ」 投信ランキング - 日本経済新聞 (nikkei.com) ↩︎
  6. ダリオ氏考案の戦略、成績低迷で投資家が逃避-かつての人気から一転 - Bloomberg ↩︎
  7. 投資信託ランキング(純資産残高) - Yahoo!ファイナンス ↩︎
  8. ピクテ・グローバル・インカム株式(毎月分配)【42311052】:投資信託情報 - Yahoo!ファイナンス ↩︎

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