FIRE研究

5000万円を貯めたらFIREできるかの検証

結論は、5000万を貯めたら、十分、FIREできそうだという結論に至った。この記事ではその思考の経路を解説していく。

そもそもFIREとは何か?

FIREとは、資産を形成してその資産から生み出される収益だけで(Financial Independence) 、働かず(Retire Early)に暮らしていくということ。

FIREできるという状況は、まず、資産が減らず(つまり、お金の心配なく)、働かなくても暮らせる。まさに、憧れの大金持ちのみが許されるであろう夢の生活ができるという人生戦略である。

FIREは、実にうまい話であるが、これは本当に現実的なのか? 現在、FIRE実現の具体的なアイディア、
・ 5000万を貯めて
・ オルカン=全世界の株式の投信で運用し
・ その投信を取り崩していく
という戦略で、本当にFIREできるかを検証してみた。

検証するためには、最もFIRE資産の運用が最も不利なる状況で過去データを使いどのように資産が推移するかを考察した。これは、最も不利の状況下でもFIREモデルが成り立てば、ほぼすべてのケースでFIREモデルが成り立つといえるからだ。

目次
1. 5000万円をオルカンで運用し4%切り崩すという戦略について
2. テストケース : 近年で最も「オルカンに5000万円」が不利になると思われるリーマンショックのあった年からFIREをスタートする意味
 2.1 単純4%切り崩しFIREモデルの検証
 2.2 インフレを加味した年間300万円固定取り崩しFIREモデルの検証
 2.3 リーマンショックが問題なのか? 年間300万円固定取り崩しFIREモデルが問題なのか?
3. まとめ:5000万円+オルカン運用でFIREできるか? 答えはできるであるが、FIREにおいて重要なこと。

1. 5000万円をオルカンで運用し4%切り崩すという戦略について

資産の4%を切り崩すというルール

FIREの根拠となっているのが、トリニティスタディーというアメリカでの研究である。この研究によると、資産のすべてを株式で運用した場合、総資産を年間4%づつ崩したとしても、ほとんどのケースで資産が減らないとしている。そこで、スタートはまず、この4%ルールから始めていく。

オルカンという選択肢

これは現在最も流行している株式による積立投資の方法であるからということだ。このオルカンというのは、オールカントリーの略で、全世界の株式市場の総合平均株価指数のようなものである。実際には、MSCI社が運営するMSCI ACWIという指標に基づいて運用している投資信託が多い。MSCI ACWIは、先進国の23市場、新興国の24市場をカバーしており、全世界の約85%の株式市場をカバーしたものと謳っている。

5000万円貯めるということ

一般的な人が、早期に貯められる限界として5000万円ということを採用した。3000万というアイディアも考えたが、3000万円で、4%だと120万円、月間10万円となってしまうためなかなか働かずして生活しずらいのではないか考えたからでもある。

データについて

以下のデータについては、Investing.comのMSCI All-Country World Equity Indexと、USD/JPY - US Dollar Japanese Yenのデータを参照し、円建てのパフォーマンスを計算した。なお、実際の投資信託は、信託報酬、株式売買に関する実費、トラッキングエラー(指数の動き通りに株の販売ができずに完全に連動できないことによる差)があるため、必ずしもMSCI ACWI指数どおりに動くわけではないことをご留意いただきたい。

2. テストケース : 近年で最も「オルカンに5000万円」が不利になると思われるリーマンショックのあった年からFIREをスタートする意味

FIREモデルの弱点として、FIREを運用した当初に株式市場がクラッシュすると運用する資金の元手を失ってしまい、FIRE=安全な資産の取り崩しが成立しないということがある。

100年1度の株式市場のクラッシュ、リーマンショックがあった2008年からFIREを開始したと仮定することにより、FIREモデルに対する最も厳しいテストとなる。このテストに合格すれば、どんな状況でも、5000万+オルカン投資でFIREできると言い切れる。

2.1 単純4%切り崩しFIREモデル

総資産の4%のみを切り崩すというルールを徹底すれば、近年最も不利なケースでも「5000万でオルカン」で資産が減ることはない。

初年度はリーマンショックの影響で資産が半減し、正解費の減少と資産は2,200万円まで減る。しかし、コロナショックからリカバーした、FIRE14年目の2021年の年末残高は、5,982万円と逆に増えている。つまり、4%を守れば、資産で食べていくという永久機関が実現されているといるだろう。

これは現実的なのだろうか?そもそもこのFIREモデルで、生活費=月間10万円以下で足りるのか?

上記のシュミレーション表を見ればリーマンショック直後の生活費が足りるのかというに疑問が残る。特に2009年から2013年までは、月間10万円以下で生活するというモデルであり、その時点で生活できるとも思えず、FIREモデル、つまり、働かずして生活していくことが破綻しているように見受けられる。

資産、生活費ともに、以下のように徐々に復活していくが、生活ができなければ、結局資産を食いつぶすことになり机上の空論となってしまう。

2.2 インフレを加味した年間300万円固定取り崩しFIREモデル

そこで、生活費を月間25万円(年間300万円)という常識的なものとし、また、日本のインフレ率(物価上昇率)のため、コストが可変すると想定してみた。計算上、2008年のインフレ率を、2008年から2009年の生活費の増加率として採用している。

このモデルでは、FIRE生活の16年目の2023年中に資産がマイナスになり、破綻することになる。大きな理由は、初年度に運用益と生活費で-2,553万円となり、5,000万円ではなく、実質、2,200万円程度でFIREしたことと同じなるからだ。

その結果、1年目こそ、資産取り崩し率は6%で収まるものの、2年目以降は15%前後になり、リーマンショックから10年後の2018年の-12%の下落をきっかけに資産の減少がとどまらなくなる。

2.3 リーマンショックが問題なのか? 年間300万円固定取り崩しFIREモデルが問題なのか?

前述のFIREモデルが崩壊した理由として、2つの原因が考えられる。
・リーマンショックのような下落がFIRE開始当初に襲ったのが問題なのか?
・それとも4%以上引き落としたのが問題なのか?つまり、そもそも、5000万円ではFIREを開始するには資金が少ないのか?

そこで、リーマンショックが問題と仮定して、株式市場が50%以下の価値になったリーマンショックが、仮に定期的に襲ってくる20%程度の下落と仮定してみる。試算結果は、以下であるが、試算上、FIREモデルは成功している。

1年目の資産減少は、生活費込みで-25%で、3760万円となるが、FIRE開始から6年後の2013年の期末には5739万円と、資産は回復している。

この資産が意味するところは、リーマンショック級の下落が、FIREスタートと同じ年に起こったら、5000万円では足りない。つまり、FIREをするためには、5000万以上お金を用意したほうが良いということになる。

目安としては、リーマンショックは、株価が半値になる暴落なので、以下の資産の2008年の期末残高の3760万円の2倍、7520万円程度あったほうが安心だといことだ。7500万円程度あれば、初年度に半額になっても、6年目には資産が持ち直し、資産が拡大傾向に入ることになる。

ただし、これは極論すぎるだろう。

3. まとめ:5000万円+オルカン運用でFIREできるか? 答えは「できる」である。そのうえで、FIREにおいて重要なこと

ここまでの試算では、リーマンショック級の株式暴落があれば、5000万円をオルカンで運用するという戦略であると、FIREが成功しない可能性もあるというのが結論になる。しかし、それは現実的ではないように思える。

リーマンショック級の暴落が来た時に、生活コストをそのままにしたり、アルバイトに出たりしないで何も対応しない、というのはあり得ないだろう。

給料が減ったら節約するように、相場に連動した暮らしをすれば何の問題もない。これは、実際に労働収入で暮らしていても失業し、お金がなければ、バイトをするだろう。FIREでも同じである。

そして、トリニティスタディ関連のスタディでは、いくつかのシュミレーションが示されていて、最近の株価のパフォーマンスをベースした場合は、8%から9%のレンジで取り崩しても問題ないとしている。

そこで、初年度は、300万円の生活費、そして、リーマンショックの打撃を受けた直後の10年を9%の取り崩し率、10年以降は8%としてみたところ、15年まで資産は2600万円程度で安定した。

以下のように2年目や5年目、12年目の生活費は月額16万円であるが、あとは、だいたい20万円前後確保されいる。そもそも、5000万円で、4%の取り崩しレートだと、月額17万円であるので、それよりも余裕があるということだ。

100年に1回の大暴落といわれたリーマンショック。それが2008年に発生した。また、近年発生するのか?こればかりはわからないが、たぶん、発生しないような気もする。あくまでも、この記事は最も厳しいケースを想定してみるというストレステストだということを忘れないでほしい。

定期的に訪れる暴落に備えて、フレキシブルな取り崩し戦略をとれば、5000万円をオルカン運用で、十分にFIREできると、結論づけられる

MSCI ACWIのデータについて
多くのオルカンファンドは、MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス(配当込み、円換算ベース)を元に運用されているが、このデータが取得できなかったので、ドル建てベースのデータを採用し、それに、同じくInvesting.comにあるドル/円のデータを織り込み、データを作成した。
MSCI AC World Equity インデックス(MIWD00000PUS) - Investing.com
USD JPY 過去データ - Investing.com

CPIのデータ
こちらのは日本政府発表の消費者物価指数を参考にした
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