FIRE、つまり、資産を形成してその資産から生み出される収益だけで(Financial Independence) 、働かず(Retire Early)に暮らしていきたい、サラリーマン・サラリーウーマンも多いと思う。その一方で、一般的に言われている最低FIRE資金の5000万円、標準FIRE資金の1億円を一般的なビジネスパーソンが貯蓄することは難しいだろう。
そこで、最もFIRE資金として最も現実的に貯められる3000万円でFIREすることについて4つのモデルを使って考察してみる。
モデル1. 極貧であるが資産が1.9倍になる年末残高の4%取り崩しモデル
このモデルでは、
・2010年にFIREをスタート
・年末残高の4%を年初に崩す
・運用はオルカン(MSCI ACWI)に連動した投信(ただし、手数料、税金は考慮していない)
というモデルを採用している。
当初のFIRE資金は3000万円であるので4%は120万円だ。つまり、1か月あたりの生活費は10万円となり暮らしていけるのか?という疑問が湧くレベルである。
このモデルでは、2011年の弱気相場の結果、2012年の月間生活費は8万円台に転落するが、FIRE達成11年後の2021年年末には資産が約5700万円と1.9倍まで膨らむ。これにより、FIRE開始13年目(2022年)には、1か月の生活費が19万円となる。
年末残高の4%を取崩すというモデルを採用していれば、資産が大幅に減ることはない。むしろ位置的な下落相場があっても増え続けると考えられる。ただし、このモデルでは2012年の月の生活費が8万円になり、生活していけないということになる。
モデル2. 8%固定(年間240万円)モデルでは資産が横ばい
そこで、生活費をもっと増やしたモデルで計算してみる。
・2010年にFIREをスタートは同じ条件
・年間240万円(月間20万円)を取り崩していく(これは当初資産3000万円の8%の取崩し率)
という条件を採用している。
このモデルでは、当初の運用成績(特に2011年の株式市場の低迷)から、FIRE開始3年目となる2012年には、10.4%を取り崩さないといけない。ただし、その翌年のFIRE開始4年目には、当初の3000万円の6%増しの3186万円が残高となる。その後も、下落相場と上層相場を繰り返す中で、8%前後の取り崩し率を繰り返し、22年の総資産は、3000万円近辺にとどまる。つまり、FIRE資産は増えないが減らない。
毎月、月間240万円というのは、年収300万円の人の手取り収入とだいたい同じだ。社会保険料などをFIRE生活者は自分で払わないといけないことを考えると厳しいが、それでも大都市圏を避ければ暮らせない額ではないだろう。つまり、3000万円でギリギリFIREは達成できるといえるのではないか?
尚、資産が増えるかどうかは、今後、2012年、2013年のような連続上がり目相場が来るのか?、つまり、2023年は上がり目相場なので、2024年も好調さを維持するのかということにかかっている。2024年の市場環境は良いと予想しているので、資産が増える可能性も十分にある。
モデル3. 6%+物価調整モデルは、資産が1.5倍!
上記のモデルでは、物価上昇について考慮していない。そこで、取崩し率を6%として、それにインフレを考慮したモデルを作ってみた。
・2010年にFIREをスタートは同じ条件
・当初の残高3000万円の6%、つまり、年間180万円(月間15万円)を取り崩していく
・この年間180万円に前年の物価上昇率をかけたものを年間の取り崩し額とする
という条件を採用している。
このモデルは、昨今、日本はでデフレ状態のため物価上昇がほとんどないため、引き出し額は、2のモデルよりも少なく、資産は、FIRE生活13年目の終わりには、4735万円となる。
FIREとしては成功しているが、生活費は月間15万と現実的に生活するには難しいのではないか。サイドFIREのレベルともいえる。
モデル4. 固定年間300万円+物価調整モデルでは?
2のモデルの生活費は、月間20万円とかなり少なかった。そこで、より現実的に年間300万(月額:25万円)として、それに物価調整をかけた金額を引き落としていくとどうなることになるのか?
このモデルでは、13年目にFIRE資金は枯渇してないが、今後、枯渇する可能性が高いといえる。2015年の株価の低調と円高基調で打撃を受けた上に、2015年以降、運用益で生活費がカバーできたのは、2017年と2022年だけであり、8年中6年が赤字の年となる。
この結果、2022年、FIRE生活13年目期末のFIRE運用資金は、1504万円となる。ここまで運用資金が減っていしまうと今後も、運用益で生活費の約300万がカバーするためには、20%以上のリターン(1500万円*20%=300万円)をオルカンから発生させなくてはいけない。
継続的に20%以上のリターンが発生することはないので、このモデルではFIRE運用資金はいずれかのポイントでなくなるだろう。
ただし、開始年を変更してみると全く別の結果が出る。例えば、2010年ではなく、後、2年遅らせて、2012年にスタートしたとする。2012年からは、2014年は大きくポジティブのリターンを記録しているので、FIRE資産が3年で1.5倍となり、事実上、3000万円ではなく、4600万円でFIREをスタートしたのと同じ計算である。
この2010年スタートか、2012年スタートか、というタイミングが、3000万円でFIREを安定的に達成できるのかの大きなポイントともいえよう。
結論: 3000万円でFIREできるのか?答えは「できる」であるが
モデル4の試算が物語っているように、FIREは資金量だけでなく、いつスタートするかのタイミングがすべてといえよう。
2020年から2021年の株式市場の急速な伸びの結果、FIRE資金を獲得した人も多かっただろう。ただ、いざFIREしていると2022年の下落局面であり、その結果、FIREを卒業し労働市場に戻るというコメントをしたもの頷ける。
つまり、結論は、モデル2(固定8%取り崩しモデル)を見る限り、3000万円でもFIREは達成できる、とさせていただきたい。
ただし、急速に株式市場が成長した結果、FIREが可能になった場合は、FIRE達成後すぐに下落局面が来ることも考えられる。上昇相場のあとには下落相場が来やすいからだ。その場合は、1年から2年は様子を見て、株式市場が悪くなった時に少なくとも3000万円を維持しているのかを確かめてから、FIREするのが良いだろう。この様子を見る間に、FIRE資産も増えてより、FIREが安全なものになるとも考えらえる。
尚、3000万円も限られた人にしか貯められない資産であろう。FIREの道はいずれにしても険しいものだ。
尚、利用したデータについては、「5000万円を貯めたらFIREできるかの検証」のデータを流用した。こちらも参考にしてほしい。