FIRE研究

3000万円貯めればFIREはできるのか?

FIRE、つまり、資産を形成してその資産から生み出される収益だけで(Financial Independence) 、働かず(Retire Early)に暮らしていきたい、サラリーマン・サラリーウーマンも多いと思う。

その一方で、一般的に言われているFIRE資金の5000万円、もしくは、1億円が一般的なサラリーマン・サラリーウーマン人生において溜まるかといわれるとそれもかなり難しいだろう。

そこで、最もFIRE資金として最も現実的に貯められる最大の3000万円について考察してみる。答えとしては、「FIREできるが注意も必要」ということになる。

目次
1. 極貧であるが資産が1.9倍になる調整4%ルール取り崩しモデル
2. 8%固定での取り崩しモデルは資産が横ばいでキープするが、生活はできるかどうかは微妙
3. 6%+物価調整モデルは、資産が1.5倍
4. 固定年間300万円+物価調整モデルでは、資産が減少傾向になる
5. 結局、3000万円でFIREできるのか?答えは「できる」であるが

1. 極貧であるが資産が1.9倍になる調整4%ルール取り崩しモデル

このモデルでは、
・2010年にFIREをスタート
・年初残高の4%を年初に崩す
・運用はオルカン(MSCI ACWI)に連動した投信(ただし、手数料、税金は考慮していない)
というモデルを採用している。

当初のFIRE資金は、3000万円であるので、4%は120万円だ。つまり、1か月あたりの生活費は10万円となり暮らしていけるのか?という疑問が湧くレベルである。単身者で家賃がない場合は、このモデルでも成り立つだろう。

このモデルでは、2011年の弱気相場の結果、2012年の月間生活費は8万円台に転落するが、FIRE達成11年後の2021年年末には、資産が約5700万円と1.9倍まで膨らむ。これにより、1か月の生活費は、FIRE開始13年目の2022年には、1か月の生活費が19万円となる。

今後も、年初の残高の4%というモデルを採用していれば、資産が大幅に減ることもなく、むしろ位置的な下落相場があっても増え続けると考えられる。どちらかというとこれは、サイドFIREを達成できるレベルといえるかもしれない。

つまり、FIREが達成できるかという視点では、生活費が少なすぎて、このモデルでは、現実的にはFIRE開始から数年でFIRE卒業となると考えられる。というのも、少ない生活費に耐えられずに、4%以上取り崩してしまい、仕事復帰を真剣に考えるということになると考えらえっる体。

2. 8%固定での取り崩しモデルは資産が横ばいでキープするが、生活はできるかどうかは微妙

そこで、新しいモデルで計算してみる、このモデルでは、
・2010年にFIREをスタートは同じ条件
・当初の残高3000万円の8%、年間240万円(月間20万円)を取り崩していく
という条件を採用している。

この8%というのは、固定取り崩しにおける上限と考えている(参考記事: FIREにおける4%ルールは本当なのか? 論拠のトリニティスタディを考察する)。

このモデルでは、当初の運用成績(特に2011年の株式市場の低迷)から、FIRE開始3年目となる2012年には、10.4%を取り崩さないといけない。ただし、その翌年のFIRE開始4年目には、当初の3000万円の6%増しの3186万円が残高となる。

このモデルでは、下落相場と上層相場を繰り返す中で、8%前後の取り崩し率を繰り返し、資産は3000万円近辺にとどまる。つまり、FIRE資産は増えない。仮に40歳でFIRE生活をスタートして、年金が始まる65歳までFIRE資産が持てば良いと計算すると、2022年の年末から数えてあと、12年ということで、その時点で、20万円X12か月X12年=2880万円が必要資金と計算できる。そう考えるとある程度逃げ切ることはできると想定できる。

毎月、月間240万円というのは、年収300万円の人の手取り収入とだいたい同じだ。社会保険料などをFIRE生活者は自分で払わないといけないことを考えると厳しいが、それでも大都市圏を避ければ暮らせない額ではないだろう。このモデルでは、3000万円でギリギリFIREは達成できるといえるのではないか?

尚、資産が増えるかどうかは、今後、2012年、2013年のような連続上がり目相場が来るのか?、つまり、2023年は上がり目相場なので、2024年も好調さを維持するのかということにかかっている。2024年の市場環境は良いと予想しているので、資産を上昇傾向に持っていけるのではないか?

3. 6%+物価調整モデルは、資産が1.5倍

上記のモデルでは、物価上昇について考慮していない。そこで、物価連動モデルの取り崩しの限界値である6%(参考記事: FIREにおける4%ルールは本当なのか? 論拠のトリニティスタディを考察する)を利用してモデルを作ってみた。

・2010年にFIREをスタートは同じ条件
・当初の残高3000万円の6%、つまり、年間180万円(月間15万円)を取り崩していく
・この年間180万円に前年の物価上昇率をかけたものを年間の取り崩し額とする
という条件を採用している。

このモデルは、昨今、日本はでデフレ状態のため物価上昇がほとんどないため、引き出し額は、2のモデルよりも少なく、資産は、FIRE生活13年目の終わりには、4735万円となる。

FIREとしては成功しているが、生活費は月間15万と現実的に生活するには難しいレベルといえ、8%を取り崩す2のモデルのほうが、FIREとして現実的である。

4. 固定年間300万円+物価調整モデルでは、資産が減少傾向になるが、

2のモデルの生活費は、月間20万円とかなり少なかった。そこで、より現実的に年間300万(月額:25万円)として、それに物価調整をかけた金額を引き落としていくとどうなることになるのか?

このモデルでは、残念ながら、FIRE資金が枯渇する。2015年の株価の低調と円高基調で打撃を受けた上に、2015年以降、運用益で生活費がカバーできたのは、2017年と2022年だけであり、8年中6年が赤字の年となる。

この結果、2022年、FIRE生活13年目期末のFIRE運用資金は、1504万円となる。ここまで運用資金が減っていしまうと今後も、運用益で生活費の約300万がカバーするためには、20%以上のリターン(1500万円*20%=300万円)をオルカンから発生させなくてはいけない。

継続的に20%以上のリターンが発生することはないので、このモデルではFIRE運用資金はいずれかのポイントでなくなるだろう。

ただし、このモデルには、別の試算も出る。FIREできるかどうかというのは、実はタイミングがすべてだったりする。

例えば、2010年ではなく、後、2年遅らせて、2012年にスタートしたとする。2012年からは、2014年は大きくポジティブのリターンを記録しているので、FIRE資産が3年で1.5倍となり、事実上、3000万円ではなく、4600万円でFIREをスタートしたのと同じ計算である。

5. 結局、3000万円でFIREできるのか?答えは「できる」であるが

この2010年スタートか、2012年スタートか、というタイミング+運が、3000万円でFIREを安定的に達成できるのかの大きなポイントだ。

2022年にFIREを卒業しましたコメントが相次いだのも、コロナショック以降の、2020年、2021年の株式市場の急速な伸びの結果、FIRE達成資金に到達した。しかしながら、それらの含み益が2022年吹き飛んでしまったので、不安になり労働市場に戻ったのだと推測できる。

つまり、結論は、
・ モデル2(固定8%取り崩しモデル)を見る限り、3000万円でもFIREは達成できる。
・ ただし、急速に株式市場が成長した結果、FIRE資産が3000万円に到達した場合は、1年から2年は様子を見て、株式市場が悪くなった時に少なくとも3000万円を維持しているのかを確かめてから、FIREするのが良いだろう。この様子を見る間に、FIRE資産も増えてより、FIREが安全なものになるとも考えらえる。
ということになる。

尚、利用したデータについては、「5000万円を貯めたらFIREできるかの検証」のデータを流用した。こちらも参考にしてほしい。

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