「ファンドマネージャーが自身の知見をもって運用するアクティブファンドは単なる市場平均のインデックスファンドに勝てない」 これは、インデックスファンド信奉者の中では広く信じられている。その論拠となるのは株式投資は予測不能であり株式市場平均以上のリターンを得ることは不可能だという効率的市場仮説である。
その一方で、投資信託の純資産残高ランキングのトップ10の内、6つがアクティブファンド1である。市場的から見ればアクティブファンドは人気がある商品である。今回は、インデックスファンド vs. アクティブファンドで、実際どちらが勝率が良いのか?言い換えればどちらが儲かるのかを考えたい。
アクティブファンドがインデックスファンドに負けているという論拠
多くのインデックス投資家が、アクティブファンドはインデックスファンドに勝てないといっているが、この際にデータとして挙げられるのがSPIVAリサーチ2だ。これはS&P 500やダウ平均などのインデックスを運営するS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が、運営する自社のインデックスとアクティブファンドのパフォーマンスの比較をリサーチしているものだ。
そのSPIVAリサーチ結果を以下にまとめてみた2。
大型株について:インデックスファンドが圧倒
大型株は市場参加者も多く効率的市場仮説が機能しやすいといわれている。その為インデックスファンドがアクティブファンドより優位に働くと想定される。
アメリカ株:やはりインデックスファンドが良い
大型株に関するファンドで言えば、1年のリターンであればアクティブファンドの40%がS&P 500(インデックスファンド)の利回りを上回っている。アクティブファンドはそんなに悪くない勝率である。
しかし、これが5年間となると、21%のアクティブファンドのみがインデックスファンドのパフォーマンスを超えた。言い換えれば、5本中4本がインデックスファンドに負けているという勝率だ。
さらに長期的になると、アクティブファンドのインデックスファンドへの勝率はさらに悪くなる。15年ではわずか12%のアクティブファンドしか、インデックスファンドのパフォーマンスに勝っていない。10本のアクティブファンドの内1本は、15年間、S&P 500のパフォーマンスを上回っている。
10本に1本のアクティブファンドを見極めることはできるのか?これは非常に難しいとすると、アクティブファンドのインデックスファンドに対する非常に勝率が悪いといえる。
日本株:インデックスファンドが圧倒している
日本株についてはアクティブファンドの勝率がもっと悪い。アメリカ株では1年の短期間では40%ものアクティブファンドが勝利をしていたが、日本株では18%のファンドしかS&P/TOPIX 150に勝利できてない。この勝率を見るとインデックスファンドを選びたくなる気持ちがわかる。
小型株について:アクティブファンドも検討可能
小型株はより市場参加者も少なくイベントに応じて値動きが激しく起こる。株式指数(インデックス)に比べてアクティブファンドが優位に働くと想定される。
アメリカ株:短期ではアクティブファンドが健闘
1年では52%のアクティブファンドがS&P SmallCap 600というインデックスに勝利している。アクティブファンドのほうか勝率が高い。しかし、これが15年となると13%まで下がる。15年という長期で見ると勝率はアメリカ大型株とあまり変わらず、ここでも長期的にインデックスファンドに勝ち続けるのは難しいということになる。
日本株:アクティブファンドが健闘
日本市場の小型株アクティブファンドは非常に健闘している。勝率は1年で33%であるが、10年という長期で見れば46%だ。小型株はやはり目利きが効くのではないか?という理論は日本市場では成り立つ。
マーケット全体:インデックスファンドを選ぶべき
アメリカ株全体:インデックスファンドが圧倒
アメリカ市場全体をターゲットするとインデックスファンドの勝利が際立つ。
詳しくリサーチを見ていくとバリュー株やコア株(バリュー株でもグロース株でもないもの:バリュー株とグロース株については投資を学ぶということは投資戦略を学ぶこと を参考にしてほしい)でのインデックスファンドの勝率が極めて高いということが影響している。
この勝率であるとアクティブファンドを選ぶ理由を積極的には見いだせない。
日本株全体:インデックスファンドが勝利
日本市場全体をターゲットとしても、インデックスファンドの勝率の良さが際立つ。そして、この勝率であるとアクティブファンドを選ぶ理由を積極的には見いだせない。
インデックスファンド vs. アクティブファンド の勝率一覧
平均的に見ればインデックスファンドのほうがアクティブファンドに勝っていると言える。効率的市場仮説が、完璧ではないものの概ね正しく株式市場は予測しにくいものなのだろう。
詳しい調査結果は、SPIVA | S&P Dow Jones Indices (spglobal.com)から閲覧できるので是非とも参考にしてほしい。
アクティブファンドを選ぶ理由はあるのか?
ここまで読むとアクティブファンドを選ぶ理由はないが、どのような人がアクティブファンドを選ぶべきなのかを考えてきたい。
インデックスファンド以上のリターンを目指す
確率論で言えば、日本の小型株についてはインデックスに対して、アクティブファンドの勝率が高い。これは目利きが効く領域なのであろう。日本小型株に投資したい場合で、投資方針が納得できるのであれば、資産の一部は小型株のアクティブファンドに投資しても良いかと思う。
資産形成をするならば小型株よりも大型株、アクティブファンドよりもインデックスファンドが良いというのは間違いないだろう。あくまでも、資産の一部という意味である。
投資には様々なニーズにこたえるアクティブファンド
投資に求めるものは人それぞれだ。インデックスファンドは、良くも悪くも市場平均に連動するだけのファンドだ。例えば退職者などで、投資リターンよりも定期的な配当金重視の場合にはアクティブファンドも選択肢になる。
ファンド運営方針に共感できる場合は、アクティブファンドでも良いだろう。何か何でもインデックスファンドが良いという訳ではない。
投資は流行?アクティブファンドからインデックスファンドへ流れは止められない?
20世紀後半、投資信託といえばアクティブファンドであった。アメリカでは巨大アクティブファンドであるマゼランファンドがあり有名ファンドマネジャーのピーター・リンチ氏がいた。その後、徐々にインデックスファンドの人気が高まり、現在はS&P 500連動ETFや投資信託が大流行中だ。
株式市場のお金の流れを捉えたほうがより勝率が高くなる。よって、流行に乗っておくのがよい。資産形成中は、資産の中心を大型株のインデックスファンドにしながらも、少額で好みのアクティブファンドも楽しむ。そういったスタイルでアクティブファンドを活用してみるのは一考に値する。