FIRE研究

30パターン検証で見えたS&P 500でFIREする際の最適取崩し率とは?

5000万円貯めたら人生勝ち組!FIREで自由を満喫しよう!とインターネット上に溢れているFIRE賛美。その一方で推奨されている年間4%の取崩し率では資産が5000万円あったとして年間生活費はわずか200万円。税金を考慮しなくて16.6万円しか月額生活費ない状態で暮らして行けそうにもない。

その一方でS&P 500の平均リターンは年間10%あるとされる。この4%と10%の差は6%はどこから生まれているのか?S&P 500で資産を運用した場合の取崩し率は何%が適当なのか?今回はS&P 500とそれを使った取崩し率を研究してみた。

30パターンを検討

資産運用については取崩し率のほかにいつスタートしたかというのが重要だ。というのも定期的に株式市場は大暴落するので、その暴落がいつ起きるかが最大のリスクだからだ。そこで、この検討では、1985年(FIRE生活39年)から2014年(FIRE生活10年)にFIRE生活をスタートしたの30パターンを検討している。

FIRE運用のルール

  1. 運用開始前年年末に5000万円を元手にFIRE生活をスタートすると仮定する。1985年であれば、1984年年末という意味だ。
  2. 年末(最終営業日)の終値に5000万円から次年度生活費(=5000万円 X 取崩し率)を除いた分を全額S&P 500に投資する。例えば、4%であれば200万円なので、初年度の運用資産は4800万円を投資することになる。
  3. 毎年年末に、前年の年間生活費(取崩した)にインフレ率を加えた加えた金額を年末に取崩す。例えば、初年度の年間生活費200万円でインフレ率が1%であれば、202万円を取崩す。
  4. それを毎年機械的に実施していく。利確(取崩した)金額に関しては税金を加味しない。S&P 500の運用については手数料がほぼゼロになっている、為替手数料についても同じことが言えるので加味しない。

経過36年で14.4億が最大資産?

まず、上記の前提と4%ルールを採用して、S&P 500で運用をしてみた。

この30パターンで4%の取崩し率ならば、2023年末に運用資産がスタート時の5000万円を下回ったケースはない。最も資産を持っているのは1988年の14.4億円(1)、最も資産が少なかったのは、ドットコムバブル崩壊直前の2000年スタートの0.9億円(2)である。リーマンショック直前の2008年スタートの場合は1.3億円(3)である。

以下が30パターンを示した図であるが、スケールが2億単位ということでわかるがかなり資産が増えている。2000年スタート以外のFIRE民はすべて富裕層入りだ。つまり、4%は低すぎるといえよう。

黄金取崩し率は8.8%?

そもそも14.4億円もの資産を築く必要もないだろう。そこで2023年末資産が5000万円(FIREスタート時と同じ資産規模)とした場合に何%の取崩し率が許容できるかという逆算の計算である1

  • 30パターンにおける平均取崩し率は8.8%。
  • 一番少ない取崩し率は2000年スタート(24年経過)の4.6%
  • 一番大きな取崩し率は2012年スタート(12年経過)の18.4%

4%と10%の差は安全係数?

今回はインフレも考慮した計算であるが、日本が低インフレ率の時代だったためこの計算も完全ではない。トリニティスタディの解説でも解説しているが、そもそもこの4%という数字にはかなり安全係数がかなり入っている。

その一方で安全係数が入るのも理解できる。取崩し率が万が一に間違った場合は破綻という結果が待ち構えているからだ。

  1. 計算にはExcelのゴールシークという機能を使った。様々な計算をする際に便利な機能である。 ↩︎

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