インデックス投資

S&P 500とナスダック100、どっちが良いのか?

2024年9月23日

どのインデックスが積立投資の対象として良いのか?この議論には終わりがない。日本では「S&P 500 vs. オルカン、どちらが良いのか?」という議論が熱いが、アメリカになると「S&P 500 vs. ナスダック 100はどちらが良いのか?」という議論になるだろう。

なんとなく利回りが高いのはナスダック 100だが、積立をするならばみんながやっているS&P 500のほうが良いというのは本当だろうか?

指数としてのS&P 500とナスダック100の違いは?

一般的には、S&P 500はアメリカを代表する500社、NASDAQ 100はハイテク銘柄を中心とした100社と説明される。この説明は間違ってはいないが、別物のように感じる人もいるだろう。現実は、別物というよりもナスダック 100は、S&P500のサブセットに近い。

85%のナスダック100企業はS&P 500企業でもある

ナスダック 100の構成銘柄の101社の内、実に85社がS&P 500にリストされている企業である1。特に私たちが知っているアップル社やマイクロソフト社のようなアメリカ大企業は両方にリストされている。

ナスダック 100リストにリストされていて、S&P 500にリストされていない16社は、
- ARM社のような最近上場した企業
- 半導体のASML社(SOX指数に採用されている)や医薬品のアストラゼネカ社のように米国を本拠地としてない企業(S&P 500はアメリカに本拠地がある企業のみリストされている)
- DataDog社やWorkday社などの新興ハイテク企業
などであり、アメリカのハイテク大企業は両方にリストされていることがわかる。

S&P 500とナスダック100のトップ10構成銘柄の80%が同じ

S&P 500とナスダック100の指数を大きく動かすトップ10構成銘柄の内8銘柄(7企業)は同じである。7社とは、アップル社、マイクロソフト社、エヌピディア社、グーグル社、アマゾン社、ブロードコム社、メタ社である。ナスダック100のトップ10に含まれていて、S&P500のトップ10には含まれていないのは2社ある。テスラ社とコストコ社であるが、両方ともS&P500構成企業だ。

保有順位NASDAQ 100 (QQQ) - 社名NASDAQ 100 (QQQ) - 割合2
S&P 500 (SPY) - 社名
S&P 500 (SPY) - 割合3
1位アップル9.16%アップル6.95%
2位マイクロソフト8.09%マイクロソフト6.53%
3位エヌビディア7.66%エヌビディア6.18%
4位ブロードコム5.09%アマゾン3.44%
5位アマゾン4.85%メタ2.41%
6位メタ4.74%アルファベット(クラスA株式)2.02%
7位テスラ2.70%バークシャーハサウェイ1.81%
8位コストコ2.67%アルファベット(クラスC株式)1.70%
9位アルファベット(クラスA株式)2.50%イーライリリー1.61%
10位アルファベット(クラスC株式)2.42%ブロードコム1.49%
 トップ10合計49.89%トップ10合計34.14%

S&P 500がマグニフィセント7に代表されるハイテク銘柄にどんどん集中しているので、ナスダック100とS&P 500の類似性は過去に比べて上がっているといえる。

ナスダック 100は、S&P 500の中で指数の値動きの影響力が大きい(時価額が大きい)企業の内、金融関係と公共関係の企業を抜いたサブセットという説明も成立つ。ナスダック 100はS&P 500のハイテクとコンシュマーセクターに重点を置いてリスト企業をより集中させた指数ともいえよう。

S&P 500 vs. ナスダック100:利回りが高いのはどっち?

以下がドットコムバブルが崩壊した2000年から2023年まで、NASDAQ100連動ETFであるQQQ4とS&P 5000連動ETFであるSPY5の年間利回りのグラフである。

NASDAQ100もS&P500も同じような値動きを示している。NASDAQ100は米国経済が良い時にはS&P500よりもよりパフォーマンスが良く、悪い時にはより悪いという値動きだ。これを多面的に分析していきたいと思う。

比較するために以下の4つの期間を設定した。
ドットコムバブル崩壊以降(24年間:1999年末から2023年末まで)・・・ドットコムバブルで米国株価が下落し、ほどなくしてリーマンショックが起こるという2つのバブル崩壊=利回り悪化を最大限に取り込んだ期間
過去20年 ・・・ 一般的な長期投資という意味での20年
リーマンショック以降(16年間:2007年末から2023年末まで)・・・リーマンショックという利回り悪化要因を取り込んだ期間
過去10年 ・・・ 長期投資の中でも最も期間が短いという視点

S&P 500 vs. ナスダック100:特定期間の利回り比較

ドットコムバブル崩壊時から現在まで、いろいろな期間を計算してみたがNASDAQ100がS&P 500よりも利回りが高いことがわかる。

ドットコムバブル崩壊以降(24年間)過去20年リーマンショック以降(16年間)過去10年
S&P 500 (SPY)7.0%9.6%9.8%11.9%
NASDAQ 100 (QQQ)7.1%13.7%14.9%17.7%

S&P 500 vs. ナスダック100:特定期間で価値は何倍になったのか?

上記の期間で価値が何倍になったか?をまとめたのが以下の表だ。

ドットコムバブル崩壊以降(24年間)過去20年リーマンショック以降(16年間)過去10年
S&P 500 (SPY)5.0倍6.3倍4.4倍3.1倍
NASDAQ 100 (QQQ)5.2倍13.1倍9.2倍5.1倍

S&P 500 vs ナスダック100:値動きの状況は?

ここでは2つの長期的な値動きの状況をグラフ化した。1999年末に1ドル、もしくは、2003年に1ドルをSPYとQQQに投資した場合だ6

S&P 500 vs ナスダック100:ドットコムバブル崩壊以降(24年間)の推移

ドットコムバブル崩壊で打撃を受けたNASDAQ100は、続くリーマンショックでも打撃を受け、1999年末に勝った1ドルのNASDAQ100(QQQ)は、2008年末に33セントしか価値を持たない。まさにアメリカ株版の失われた10年である。これは、S&P500(SPY)でも同じで1ドルが72セントになっている。しかし、長期投資の威力でNASDAQ100は約5.2倍、S&P500は約5倍まで成長する。この期間を比べるとそこまで大きな差がないように思える。

S&P 500 vs ナスダック100:過去20年の推移

ただし、20年となると大きく変わる。2002年末に購入した1ドルは、ドットコムバブル崩壊の影響は限定的である。20年後、S&P500(SPY)は、6.27ドルに成長するが、ナスダック100は13.1ドルまで価値が上がる。つまり、S&P 500に比べて2倍も成長しているのだ。

ハイテク業界中心に起こったドットコムバブルの影響がどれだけナスダック100に影響をしているがわかる。

S&P 500 vs. ナスダック100:年別のパフォーマンス対決での勝率は?

年毎にどちらが利回りが良かったかを比べて勝率を出してみた。近年、ナスダック100の利回りがS&P 500を圧倒的に凌駕していることがわかる。特にリーマンショック以降は75%を超えており、近年はS&P 500に比べてナスダック100の強さを感じる。

ドットコムバブル崩壊以降(24年間)過去20年リーマンショック以降(16年間)過去10年
S&P 500 (SPY)42%
(10年)
35%
(7年)
25%
(4年)
15%
(3年)
ナスダック 100 (QQQ)58%
(14年)
65%
(13年)
75%
(12年)
85%
(7年)

S&P 500 vs. ナスダック100:積立するのならばとっち?

今回は資産形成にどちらが有利ということで簡易的に積立を行っていきたい。以下は1999年末に1ドル投資し、各年末に1ドルづつ積立投資をした場合の2023年年末のパフォーマンスである。

ドットコムバブル崩壊以降(24年)過去20年過去10年
現金 (投資額24 (1倍)20 (1倍)16 (1倍)10 (1倍)
S&P 500 (SPY)98 (4.1倍)73 (3.6倍)51 (3.2倍)20 (2.0倍)
ナスダック 100 (QQQ)181 (7.5倍)136 (6.8倍)88 (5.5倍)29 (2.9倍)

どの期間をとってもS&P 500に比べてナスダック100のほうがパフォーマンスが良い。

S&P 500 vs. ナスダック100:人気があるのはどっち?

米国で人気がある(資産残高が多い)ETFランキングのトップ5位は以下の通りである。

順位名称インデックス資産残高
1位SPDR S&P 500 ETF Trust (SPY)S&P 500554B (80兆円)
2位iShares Core S&P 500 ETF (IVV)S&P 500520B (75兆円)
3位Vanguard S&P 500 ETF (VOO)S&P 500517B (74兆円)
4位Vanguard Total Stock Market ETF (VTI)全米インデックス433B (62兆円)
5位Invesco QQQ Trust Series I (QQQ)NASDAQ 100282B (41兆円)

米国ETFで、NASDAQ 100連動ファンドで大きいのは今回紹介しているQQQだけである。その一方で、S&P500関連では米国の大手3社の投資運用会社が別々の商品を運営しているがそれが1位から3位までランキングしている。人気=資産残高だとするとS&P 500がナスダック100比べて、5.6倍人気があるということになる。

ドットコムバブル崩壊というトラウマが残るナスダック 100

利回りはS&P 500を凌駕しながら、ナスダック 100の人気がそこまで加熱しないのはドットコムバブル以降の値動きがトラウマのように語られることもあるだろう。以下が1999年末に1ドル買った際の値動き(各年の年末価格)である。

ナスダック100(QQQ)は1ドルに戻るまで14年かかっている。ドットコムバブル崩壊で3年後の2002年末には27セント(-0.73%)の水準まで下がっている。その後、リーマンショック前の2007年末(8年後)には半値程度に戻した。ただし、リーマンショック後の2008年(9年後)は、33セント(-0.67%)の水準である。14年後の2013年の年末にようやく1ドルを回復する。ナスダック100にとって、ドットコムバブルの影響が大きかったことがわかる。

S&P 500(SPY)もこの時期はパフォーマンスが振るわなかった。ただし、3年で62セント(-38%)7年目の2006年年末には1ドルを回復している。リーマンショックで再度下落するが72セント(-28%)であり、それも11年目の2010年末には1ドルに到達している。

余談であるが、2000年のドットコムバブル崩壊から2010年頃にリーマンショックから回復するころまでの10年程度は米国株暗黒の時代である。日本株ももちろん振るわなかった。この時期に日本で人気があったのはアクティブ債券投資信託と今では全く見向きもされない商品だ。

S&P 500 vs. ナスダック100:結論

ここまでわかったをまとめると
#1. 利回りはS&P500よりもナスダック100のほうが良い
#2. ナスダック100の利回りが高いのは、銘柄選定というよりも、アメリカ経済の成長要素である巨大ハイテク企業に集中投資を行っているから
#3 ドットコムバブルのようなハイテク企業を直撃する経済イベントが来ると大きな打撃を受ける。
#4 その上で、巨大ハイテク企業が時価総額上位=アメリカを代表する企業になっている為、S&P500とナスダック100の値動きは似てくる。
ということになる。

投資信託は100円から買える。S&P 500だけ、ナスダック100だけということではなく、この2つを混ぜて積立することで、リターンとリスクをコントールするのが良いのではないか。

ナスダック100は、ドットコムバブル崩壊時の下落によって引き起こされた長期的なパフォーマンスの低下により必要以上に恐れられていると感じられる。

ドットコムバブル崩壊を除けば、ナスダック100の利回りはS&P 500の利回りを圧倒している。その一方で、投資残高を見れば多くの人がS&P500を選択していることは明白である。

S&P500とナスダック100を混ぜて投資することは考慮に値するのではないか?

  1. リスト企業はNasdaq-100 - WikipediaList of S&P 500 companies - Wikipediaから取得した(2024年9月23日閲覧) ↩︎
  2. Invesco QQQ Trust (QQQ) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Financeのデータを参考にした(2024年9月23日閲覧) ↩︎
  3. Invesco QQQ Trust (QQQ) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Financeのデータを参考にした(2024年9月23日閲覧) ↩︎
  4. Invesco QQQ Trust (QQQ) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Financeのデータを参考にした ↩︎
  5. SPDR S&P 500 ETF Trust (SPY) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Financeのデータを参考にした ↩︎
  6. ETFは1ドル単位では買えないがあくまでもモデルとして1ドル購入したとした ↩︎

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