SOXLという商品がある。これはSOX指数の毎日の値動きの3倍変化するドル建てのレバレッジETFである。SOX指数は値動きが激しいことで知られているが、さらに3倍ということで大きなボラティリティが見込める。ボラティリティが高いということは、儲かるチャンスがある(損するチャンスもある)ということになる。
今回はこのSOXLをどのように買うか考えていきたい。
SOXLはどのぐらい値動きが大きいのか?
米国で最も資産残高が大きいETFであるSPY(S&P 500連動ETF)と値動きを比べてみよう。
短期保有ということで、月間のパフォーマンスを見ていく。SPYとSOXLはざっくり月間の最低利回りと最高利回り共に、5倍ちかい差があるのがわかる。SPYは1か月で10%程度しか動かない。それに比べてSOXLは、1か月で1.5倍になる可能性もある一方で、1か月で半分になることもある。
短期保有ということで、年単位のパフォーマンスを見ていく。SOXLの2022年の年間利回りは、-85.66%と100ドル分のSOXLを年初に持っていた場合、年末にはわずか15ドル程度になってしまう。長期保有には注意が必要なETFである。
SOXLの値動き
年度 | 最低月間利回り | 該当月 | 最高月間利回り | 該当月 | 年間利回り |
---|---|---|---|---|---|
2019 | -43.63% | 5月 | 40.11% | 6月 | 231.85% |
2020 | -53.75% | 3月 | 63.07% | 11月 | 69.99% |
2021 | -13.98% | 9月 | 35.72% | 11月 | 118.84% |
2022 | -21.04% | 10月 | 54.93% | 11月 | -85.66% |
2023 | -22.24% | 4月 | 53.09% | 11月 | 226.98% |
SPYの値動き
最低月間利回り | 該当月 | 最高月間利回り | 該当月 | 年間利回り | |
---|---|---|---|---|---|
2019 | -6.38% | 5月 | 8.01% | 1月 | 31.22% |
2020 | -12.46% | 3月 | 12.70% | 4月 | 18.37% |
2021 | -4.66% | 9月 | 7.02% | 10月 | 28.75% |
2022 | -9.24% | 9月 | 9.21% | 7月 | -18.17% |
2023 | -4.74% | 9月 | 9.13% | 11月 | 26.19% |
SOXLをどのように買うか?
SOXLは高いボラティリティがあるので儲かる可能性がある。それではどのようなタイミングでトレードしていけばいいのか?
SOXLをカレンダーアノマリーで買う
カレンダーアノマリーは、株価が特定の時期に特定のパフォーマンスを繰り返し起こす現象である。前述したSOXLのパフォーマンス表を見ると2019年から2023年までの様々なイベントがあったが、2019年を除いて1年を通じて最も高い月間利回りを叩き出したのは11月である。
2019年はトランプ政権下で対中貿易摩擦の懸念から5月に大幅に株価が下落した。その反動もあって6月に株価が上昇したという特殊事情もあった。また、2019年もSOXLは+3.25%と高いパフォーマンスであった。2014年までの10年間をさかのぼってみても、2017年に-0.09%とわずかにマイナスだったことを除けば常にプラスの数字だ。
カレンダーアノマリーで言えば11月から株価は上昇局面になることが多く、10月末に勝って12月頭に売ってしまうという短期トレードが成立つの特徴がある。
SOXLをテクニカル(MACD、RSI、ボリンジャーバンド)で買う
カレンダーアノマリーで買うという投資戦略に欠点があるとすると、10月末以外では使えないということである。日常的に買い場を探すというのであれば、SOXLはボラティリティの高さからテクニカル指標がわかりやすい。
・RSIで40程度以下ならば、MACDにおけるゴールデンクロスで買い、デットクロスで売る。
・RSIで40程度以下ならば、ボリンジャーバンドを見て割安な地点で買い割高な地点で売る。
などの一般的なテクニカル分析によって売買をするという投資戦略もある。
SOXLをファンダメンタルスで買う
SOXLは、30社の半導体関連企業の株価の集合体になったSOX指数が元になっている為、各企業のファンダメンタルを分析するという訳にはいかない。
半導体企業群としてとらえるとファンダメンタルズは景気動向となる。わかりやすい指標としてはISM製造業景況指数がある。ISM製造業景況指数は、企業にアンケートから構成されており、数値が50%を上回れば景気拡大、50%を下回ると景気後退と判断される。また、アナリスト等が予想を出しておりそれとの乖離にもマーケットが動く。
より長期的な動向は金利である。米FRBの政策金利の誘導目標レートがどのように動くかというのも一つの注目事項である。
SOXLは夢があるが
一般的な投資商品である「オルカン」に比べて、米国籍のドル建てETFでリスクも大きい「SOXL」はかなりマニアックな商品と言えよう。しかしながら、日本地域からの「SOXL」と「オルカン」の検索キーワード数(Googleトレンドより)を見ると「SOXL」は多くの人に検索されていることがわかる。
SOXLには高いボラティリティがあり夢もあるが、損する可能性も大きい。自身の資金の一部で投資するのが良い投資商品ではないだろうか?