米国を代表する30社の半導体銘柄を集めたSOX指数という株式インデックスがある。半導体銘柄は景気敏感銘柄ということもあり、SOX指数は好景気時には大きく上昇し、不景気の際には大きく下落する。また、情報社会である現代において半導体はすべての産業の基礎とも言え、中期的には大きな上昇もしている。
このようにSOX指数は、短期的に全米株式やS&P 500に比べて大きな上昇を狙える夢のあるインデックスの一方で、そのボラティリティ(価格変動率)の高さから玄人向きともいえる。今回は、このSOX指数を考えていきたい。
SOX指数のパフォーマンスと買い時
SOX指数の特性を理解するためには2020年初頭から2023年末の4年間のチャート分析するのがわかりやすい。
以下の(1)の時期は、コロナ禍における緩和において株価は上昇した。このような株高の時期においては、S&P 500(赤)やNASDAQ(グリーン)がよりもSOX指数(青)のパフォーマンスが良い。ただし、米国で金融引締めにより2022年よりS&P 500が下落局面になる。これが(2)の時期であるが、SOXが最も高い下落率を示している。2023年に入り株価が回復局面になるとSOXが最も上昇している(3)1。2020年から2024年という長期で見るとSOX指数のパフォーマンスが、S&P 500やNASDAQよりも良い。これがSOX指数の特徴である。
SOX指数の年間利回り
SOX指数の利回りは、NASDAQ 100のボラティリティ(変動率)がより大きくなった利回りと表現できる。この4年は株価上昇する年が多かったためパフォーマンスで見ればSOX指数が最もパフォーマンスが良い。
SOX指数 (SOXX) | NASDAQ 100 (QQQ) | S&P 500 (SPY) | |
---|---|---|---|
2020 | 52.73% | 48.62% | 18.37% |
2021 | 44.09% | 27.42% | 28.75% |
2022 | -35.09% | -32.58% | -18.17% |
2023 | 67.13% | 54.85% | 26.19% |
4年で何倍? | 2.4倍 | 2.0倍 | 1.6倍 |
景気敏感なSOX指数
SOX指数がこのような動きを示すのは景気に敏感に反応するからと言われている。SOX指数の構成銘柄の半導体株である。現在、半導体はあらゆる場所に埋め込まれおり「産業のコメ」と言われている。景気が良くなるとあらゆるところで半導体が求められるが、景気が悪くなると一般企業の投資マインドは下がる。そのことにより半導体の需要が一気に冷める。
このようなサイクル=需要予測が難しい。一方で、半導体を作るために長期的な大きな投資が必要だ。需要が減っても投資額(原価償却額)は柔軟には変更できない。そこで、不景気になり需要が落ちると半導体企業の財務状況に懸念が出て一気に株価が下がりやすいのだ。
SOX指数の難しさ
一般的な投資家が、株を買いたいときは2021年後半の上昇局面だろう。多くの場合は、2022年の大幅の下落に耐えられずに売ってしまうだろう。SOX指数に投資した場合であれば、上記のチャートを見れば明らかであるがその取引は損をする。
多くの場合は、損をしたことを覚えていて、その損を取り返そうと2023年後半の上昇局面になり、SOX指数を買い戻したとする。その場合は、昨今の2024年の夏場の下落局面で耐えられず売ってしまうことになる。このような投資スタイルではSOX指数では永遠に儲からない。
SOX指数は、投資経験豊富で金銭的に余裕があり、短期的な下落を耐えられる人が大きく儲かる。玄人向けのインデックスといえる。
SOX指数の構成銘柄
SOX指数はボラティリティが激しいが、構成銘柄は決して中小企業ではない。世界的な大企業ばかりである。そもそも半導体製造は巨額投資が必要なため規模が重要で大企業のみが生き残っていく構造の業界である。
半導体企業といってもいくつかのタイプがある。
A) チップ(半導体)メーカー:生成AIにも広く使われているGPUベンダーのNVIDIA、パソコンのCPU製造で有名なAMDやIntel、携帯用のスナップドラゴンで知られるクアルコム、産業用チップベンダーであるブロードコム、テキサス・インスツルメンツなど
B) 半導体製造会社:A)の会社の大部分はファブレス企業と言って自社の工場は持っていない。そこで製造をファウンドリといわれる半導体製造受託会社に依頼している。世界最大のファウンドリである台湾積体電路製造(TSMC)もSOX指数の採用銘柄だ
C) 半導体を作るための製造&検査装置メーカー:B)の会社が実際に半導体を作るために利用する装置を作る企業。アプライドマテリアルズやASMLなどが採用銘柄である。
このように3つのタイプに分かれるもののすべて半導体関連企業である。A)の製品を作っている企業はチップのヒットなどもあり、最もボラティリティは高いものの、全体的には大企業してはボラティリティが高い企業ばかりである。
日の丸半導体企業はSOX指数に含まれるのか?
日本企業はC)にあたる半導体製造&検査装置に強い。東京エレクトロン、ディスコ、アドバンテストなど日経平均株価への寄与度でよく話題に名前が挙がる半導体企業はすべてこのC)である。ただし、いずれもSOX指数には採用されていない。
SOX指数は、TSMCやASMLなどの非米国企業も採用されている。それらの企業は、先に挙げた日本企業と違い、米国内に上場しており代表的な半導体株としての時価総額や流動性がある。日の丸半導体企業もSOX指数に採用されることで株価向上につながると考えられるので、SOX指数採用も視野に入れて上場戦略を考えてほしいものだ。
株価という面で見れば、採用されていないものの同じ業界であるSOX指数の動向が影響する。半導体の日本株に投資している人はこのSOX指数も注目の指標だ。尚、ソフトバンクが出資するARMは、現時点でSOX指数には採用されてない。これは最近上場されたからであろう。
SOX指数を買うためには
日本でSOX指数に連動したインデックスファンドを買う場合は2つの選択肢がある。
その1:ETFで買う - グローバルX 半導体 ETF (証券コード:2243)
その2:投資信託で買う - ニッセイSOX指数インデックスファンド(米国半導体株)
なお米国でSOX指数に連動するiShares Semiconductor ETF(Ticker:SOXX)は日本の証券会社では取扱ってないようだ3。
SOX指数はボラティリティも高く玄人向けと言われる一方で、広く流通した株価指数(インデックス)の中では最も夢がある。自身の資産のメインに据えることはできないが、一部をSOX指数に連動したファンドに振り分けるのも良いだろう。
- Yahoo FInaceより ↩︎
- https://finance.yahoo.com/ 2024年9月12日閲覧 ↩︎
- SBI証券、楽天証券、Moomoo証券を確認した 2024年9月11日に確認 ↩︎