インデックス投資

投資信託の手数料 - 低コストを追及したいあなたへ

2023年9月18日

投資信託を買う際に最も気になるのが投資信託の手数料。「できるだけ低コストの投資信託を買おう」といわれても、まず、どのような手数料がかかるかわからなければ始まらない。投資信託の手数料は、1. 購入するとき、2. 保有(運用)しているとき、そして、3. 売却するときにかかるのであるが、それを詳しく解説してきたい。

1. 購入時にかかる投資信託手数料(コスト)

投資信託によっては、購入時の販売手数料(購入価格の2%から3%程度)がかかる投資信託がある。

インデックスファンドは、購入時の手数料はない場合が多い

オルカンに代表されるインデックスファンドは、ノーロードファンド、つまり、購入時に手数料はかからないタイプのものだ。もちろん、オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)も購入時の手数料は必要ない。

人気のインデックスファンドは、コスト競争が進んでいる。というのも、インデックスというのは、公開されている株価指標をもとに運営されているため、どの投資信託運営会社が運営しても、パフォーマンスの差がでない。

そのため、インデックスファンドを運用する会社が、より販売を加速するために手数料をできるだけ低くし、購入者にアピールしたいというインセンティブが働く。販売時の手数料は、投信信託を運営している会社が規定しているので、これが、インデックスファンドが、ノーロードファンドが多い理由だ。

このようなノーロードファンドは、取扱っている証券会社・銀行ならどこで買っても、一律に購入時の手数料はかからない。

アクティブファンドは、購入経路によっては手数料を取られることが多い

それに比べて、アクティブファンドは、投信運営会社が運営方針を自社で作って運用しているファンドである。そのため、インデックスファンドに比べて、差別化ができる。

ということもあり、アクティブファンドは、販売時の手数料が取れるようにしてるものが多い。取れるようになっているというのは、0%から3%以下の範囲で、販売する銀行や証券会社が決めるということになっているのだ。

つまり、買う経路によって、同じ商品でも手数料は違うのだ。

手数料の実例を紹介

SBI証券において、人気のインデックスファンドであるeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)については、販売手数料は、インターネットでも対面でもかからない(下記の図の左側の部分)。

同じSBI証券において、同じ投資信託運用会社、三菱UFJ国際投信の人気アクティブファンド、日経平均高配当利回り株ファンドを見てみよう。

インターネット経由では販売手数料がかからないが、対面コースだ2.2%かかる(下記の図の右側の部分)。これは、2%+消費税ということであるが、1000万円購入したら、22万円掛かる。同じ証券会社で買っても、販売経路によって手数料がかかったり、かからなかったりする。

もちろん、手数料2.2%で対面で買ったケースと、手数料0%でインターネットで買ったケースで、パフォーマンスは同じだ。商品が同じだからだ。対面だといろいろと相談ができるその相談料金が、2.2%ということなのであるが、これをどう見るかは、皆さん次第だ。

対面で無料相談に行ったら、非常にコストが高いアクティブファンドを薦められたというのは、この手数料が高いファンドを薦めたということに起因していることが多い。「タダより高いものはない」ということなのか。。。

参考リンク
三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) |投資信託・外貨建MMF|SBI証券 (sbisec.co.jp)
三菱UFJ国際-日経平均高配当利回り株ファンド |投資信託・外貨建MMF|SBI証券 (sbisec.co.jp)

2. 保有(運用)時に支払う投資信託手数料(コスト)

割合の大小はあるが、信託手数料(運用手数料)がかかる

インデックス投資信託の代名詞、オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)が、信託報酬を年0.11330%(税込み)以内から年0.05775%以内へと変更した、というニュースが2023年9月に大きな話題になった。

この信託報酬とは、運用時の手数料(コスト)である。投資信託は、皆さんから預かったお金を株や債券などの金融商品に投資して、運用するための投資信託運用会社の運営費用といえる。

残念ながら、この信託報酬は、さすがに0%にはならないだろう。ただし、オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のような大型インデックスファンドだと、この信託報酬が、0.05%とほぼ無料のようなものである。1000万円運用して、年間6千円以下、ほぼ無視できる金額である。

インデックスの投資信託は、似たような商品を各社が運用していることから、競争原理が働いており、人気インデックスファンドだとだいたい0.3%以下になる。

ただし、差別化ができる、つまり、自分たちで運用方針を作っているアクティブファンドだと、この運用手数料は、1%以上から2%程度になる。この2%だとすると、1000万円運用すると20万円もかかることになる。

オルカン運営する三菱UFJ国際投信が販売する、似たような性格のインデックスファンドとアクティブファンドの信託手数料を並べてみた。

なぜ、投資信託の運用手数料が少ないほうが良いかというと、この投資信託が生み出したリターンからこの部分が引かれるため、見た目以上に大きなインパクトを生み出すのだ。

もし、仮にどのファンドも年率平均10%程度のリターンを出せたとする。
・10%からインデックスファンドの信託報酬の0.05775%を引くと9.94225%のリターン、1000万円運用していたとすると99万4225円
・10%からアクティブファンドの信託報酬の2%を引くと8%のリターン、1000万運用していたとすると80万円
となり、選れる報酬の差は、19.4万円と大きな差になるからだ。20%ぐらい差が出るということになる。

もちろん、アクティブファンドのほうが運用成績が良ければこれを正当化するが、インデックスファンドの運用成績が好調だ。つまり、コストが高いアクティブファンドを買う理由がなくなってきているのが、インデックスファンドの人気の背景にある。

信託手数料のキャッシュバック?

証券会社によっては、この信託報酬を根拠にキャッシュバックを行っている。よくあるのが投信ポイントプログラムだ。

信託報酬は、投資信託運営会社(例えば、三菱UFJ国際投信)が全額もらっているわけではない。実は、3社で分け合っている。
・1つ目は、投資信託を運営している会社(委託会社)
・2つ目は、投資信託を運営している会社から委託を受けて株や債券を管理している会社(受託会社)
・3つ目は、投資信託を販売している証券会社や銀行(販売会社)
である。

1つ目は、実際に投資信託を運用している会社なので、コストがかかるのはわかるだろう。運用だけでなく、ファンドを売るための営業活動などを行っている。2つ目の会社が、投資信託の運用会社が勝手に株を使いこんだりしないために、投資の運用と管理を分離して、問題が起きないようにするための会社で信託銀行と呼ばれる会社だ。

そして、3つ目は、投資信託を販売している会社、つまり、証券会社や銀行だ。つまり、証券会社や銀行は、販売手数料を取らなくても顧客が、投資信託をその証券会社や銀行に保管しているだけで、投資信託会社から信託手数料の分け前をもらえる。

これの割合は、投資信託の説明書(目論見書)に記載されており、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)では、以下のように掲載されている。いわば、
・1つ目は、投資信託を運営している会社(委託会社)が3分の1(33.3%)
・2つ目は、投資信託を運営している会社から委託を受けて株や債券を管理している会社(受託会社)が3分の1(33.3%)
・3つ目は、投資信託を販売している証券会社や銀行(販売会社)が3分の1(33.3%)
と分け合っている。

この率は、常に3分の1ではなく、アクティブファンドのような手数料が高い投資信託では、運用している会社の取り分がより高くなり、販売する販売会社の取り分も多くなっている。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | eMAXIS(イーマクシス)の交付目論見書より

モルガン・スタンレー グローバル・プレミアム株式オープン(為替ヘッジなし) | 投資信託なら三菱UFJ国際投信 (mufg.jp)

このように証券会社や銀行は、販売時じゃなく保有時に儲けている。この収益を根拠にして、投信の保有についてポイント付与をしている証券会社もある。

その代表例は、SBI証券である。SBI証券は、投信マイレージサービスというものを運用しており、投信の毎月の保有金額に応じてポイントを付与してくれる。つまり、投信はどこで買ってもコストが一緒でないというのは、このポイントバックが一番大きな要素だ。

SBI証券のポイントサービス
SBI証券のポイントサービス|SBI証券 (sbisec.co.jp)

なんと、SBI証券であれば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)であれば、年率0.0415%ものポイントキャッシュバックを受けることができる(閲覧日:2023年9月18日 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) |投資信託・外貨建MMF|SBI証券 (sbisec.co.jp))

これはちょっとあり得ない利率である。SBI証券では、各銘柄ごとにポイント付与率が決まっているが、最大で0.25%のポイント付与が受けられる。SBI証券のページでは業界最高水準のポイトバックを謳っているだけでなく、実際にそうであるので、投資信託を買うとすると、SBI証券一択となる

信託手数料以外に必要経費、隠れコストがかかっている

投資信託には、このほかに投信運営上、株売買をするための株式手数料、税金、その他の保管費用など、いわゆる必要経費がかかっている。これは、投資信託の隠れコストと呼ばれるものである。

以下は、オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の例であるが、信託報酬は、0.113%であるが、それ以外に、0.053%分の費用が掛かっており、実際の運用費用は、0.166%かかっていることを示している。

このような実際にかかった費用は、投資信託のページの運用報告書を見てみると記載されている。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) | eMAXIS(イーマクシス)より

3. 売却時に支払うコスト

投資信託を売却する際にかかる費用である。これには、2タイプあり、1つ目が投信運営会社に支払う信託財産留保額、2つ目が証券会社に払う売却手数料がある。

1つ目の信託財産留保額とは、投資信託における手切れ金のようなもので、抜けているときに運用財産に残していってねという費用であり、これは現在、無料なものも多い。相場的には、0.2から0.3%程度といえる。これらの手数料は、売却したときに際し引いて、口座に振り込まれる。

2つ目の売却手数料は、多くのネット証券会社は無料であるが、売却時に追加の手数料がかからないかどうかも確認してほいたほうがいいだろう。

結局どう買えばコストが最も安いのか?

まず、コストとしては以下の3つが掛かる
・買うときの手数料 ・・・ 有名なインデックスファンドだったら無料のケースが多い。運用時の手数料が高いアクティブファンドを対面で購入する場合は確認したほうがいい。
・運用時の手数料 ・・・ 有名なインデックスファンドだったら0.1%から0.3%程度と非常に軽微、だだし、これには、信託報酬というようなもの以外に、投資信託における隠れ費用というその他費用も掛かるので、目論見書を見たほうが良い。尚、SBI証券などの一部のネット証券会社では、ポイントバックを受けられるので、実質のコストはもっと安い
・売却時の手数料 ・・・ 有名なインデックスファンドだったら無料のケースが多い。とられても、0.2%から0.3%程度。

結論としては、人気の大型インデックスファンドを、例えばオルカンをSBI証券のインターネットサービスから購入し、運用時に保有ポイントをもらうというのが最もコストが安い投資信託といえる。

投資信託のコスト模式図

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