株式トレードで勝つ

小型成長株投資の威力

株で儲ける鉄板の投資戦略は「株価の成長余力が高い企業規模が小さな企業を見つけてそこに資金を集中投資をする」である。800億円の個人資産を持ち、日本随一にファンドマネージャーといわれる清原 達郎氏も著書で「割安な小型株」への投資で成功したと語っている。

米国株においては「次のスターバックスを見つける」ともいえる投資戦略。小型成長株を具体的にどのように見つけて良いのであろうか?

株式分析で小型株を見つける

小型成長株投資の定義

小型成長株投資とは、さまざまな理由で将来性が正しく評価されずに安価に放置されている時価総額が小さな企業の株を買い、ある程度長期(1年から5年ぐらい、それ以上も)で保有し利益を得るという戦略。株価が10倍になるケースもあり非常に夢がある戦略である。また、その際に、自己資金の中ではリスクが取れる最大限の割合で単一銘柄に集中投資を行うことで、大きなリターンを得ようという発想でもある。

小型成長株の定義

小型株には明確な定義はなく、一番規模が大きい定義で時価総額が1000億円以下の企業を指す。尚、時価総額を基準とするのは「時価総額が小さい=会社の価値が大きくなりそう=株価の上昇余地がある」からだ。

現在日本の上場企業は4246社1程度あり、時価総額1000億円以上の企業は843社1程度なため市場全体の8割の3403銘柄が小型株といえる。時価総額が500億円以下の会社を小型株とする定義もあるが、これでも市場全体の5割強の2282銘柄1が小型株になる。

投資で言えば時価総額が50億円から300億円ぐらいまでが個人投資家が狙うべき小型成長株といえる。時価総額50億円以下の企業は事業規模も小さく倒産や何らかの理由で上場廃止になるリスクが大きい。上昇余力を見ると時価総額が300億円ぐらいまでが限界になる。なぜなら、株価が10倍(テンバガーを目指す)になる株は、時価総額が10倍になるということだ4。これは、企業価値が300億円の企業が3000億円になるというを意味しており、時価総額の巨大化にはある程度限界があるのも事実だ。

このレンジでは、1483銘柄となり市場の全体の35%程度がターゲットとなる。それでも、スクリーニングの対象は1500社だ。つまり、小型成長株投資の難題は「膨大な銘柄の中からどのようにして信じることができる銘柄をピックアップするか?」ということだ。

スクリーニング方法はあるが

ビジネスを判断するためには、そのビジネスに対しての理解が必要である。よって

  1. 自分の知っている業種を選ぶ
  2. 時価総額
  3. PERの確認

と業種を先に選んでから数字について確認していくというステップになる。

業種で絞ればかなり数が絞られるがここから、財務や企業動向を分析していくということに進む。ただしこの方法はでは難しい。

机上ではなく小型成長株がどうやって見つけていくのか?

銘柄選定の難しさを体感する:物語コーポレーション

小型成長株投資とは、現在の人気の時価総額1000億円程度の企業を5年前に発掘するということになる。個人投資家に大人気の焼肉きんぐを運営するレストラン運営会社 物語コーポレーション(3097:24年2月は時価総額2000億円程度)という企業がある。

物語コーポレーション自体は、今から約16年前の2008年に当時の新興市場であるJASDAQに上場した。2011年には東証一部に鞍替えを実現した。つまり、かなり前から株式が買える状況であった。そして、今から7年前(2017年)には、今年2月のピーク時の20%程度の価格で取引されていた。

結果論から見れば簡単ではあるが、7年前に今の状態を想像するのはなかなか難しいだろう。逆説的にいえば、難しいから割安で取引されていたということだ。

パクリ投資(クローン投資)は難しい

アクティブ投資の一つの領域が中小型成長株である。この領域はまともなインデックスもなく、まさに目利きの領域だ。つまり公募のアクティブファンド型の投資信託のポートフォリオを見て、その中から銘柄を選ぶ、つまり、プロがスクリーニングされた中から選ぶというアイディアだ。

ただし、このような投資信託のファンドマネージャー(つまり、プロ)は、アナリストカバレッジもない時価総額50億円から300億円を小型株を買わない。例えば、SBI岡三アセットマネジメント株式会社が運営している人気ファンド、中小型成長株オープン5で買っている銘柄は時価総額1000億円程度の銘柄だ。

時価総額50億円から300億円の小型株が割安な理由の1つは、逆説的であるがこのようなプロ投資家が参加してないから、適切な価格に変化していくということが少ないということも挙げられる。

現実的な小型成長株との出会い方

もちろん時間と才能があれば前述のアプローチでも小型成長株は見つかる可能性もある。ただし、プロ投資家ではない場合は別のアプローチ論を考えたほうが良い。

自分の生活の中から見つける

自分の生活の中から銘柄を見つけるやり方である。ネット上等でも最も紹介されている銘柄の見つけ方ともいえる。

ドン・キホーテ(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス

今から12年ほどの前の2012年頃のドン・キホーテ。個人的に深夜によく訪問していた。深夜に関わらず暇な人が溜まっており、なかなかの盛況ぶりだった。また、無駄なものを買ってしまう店作りでどんどん財布の紐が緩んでしまっていた。

当時、現在の海外展開やインバウンドブームによる成長の可能性を感じたかと言われればNoである。

ドン・キホーテ自体はかなり歴史が古い企業である。1996年に店頭公開をした。1998年には東証2部に上場、2000年には東証1部に鞍替えしている。つまり、今から12年以上前の2012年ですら、東証に10年以上、店頭市場から含めると16年程度株式が買える状態であった。

そこから株価はざっくり10倍(テンバーガー)になっている。皆さんの中にも12年前にドン・キホーテに訪問している人は多いだろう。その時に株を買おうと思ったか、思わなかった。これが小型株投資の極意ともいえる。

自分の仕事の中から見つける

まず、仕事で得た秘密の情報を使って株を売買するとインサイダー取引とみなされるので注意が必要である。

インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。そうした情報を知らされていない一般の投資者は、不利な立場で取引を行うこととなり、証券市場の信頼性が損なわれかねないため、金融商品取引法で禁止されており、違反者には証券取引等監視委員会による刑事告発や課徴金納付命令の勧告が行われます

インサイダー取引 | 日本取引所グループ (jpx.co.jp)

もちろん、仕事で得た経験を元に一般的な情報をつかい、投資戦略を立てて株を売買することまでは禁止されていない。例えば、会社が無理やり「セールスフォース」を導入したとする。今まで営業活動をごまかせていた転職してきた若い上司が「セールスフォース」使いの名手だったとする。その結果、若い上司が完全管理され毎週月曜日の営業会議で詰めらまくっているしがない営業マンがいたとする。その営業マンが詰められた経験を使って「セールスフォース」の株を買うことは禁止されていない。では具体的に仕事の中で見つけた例を書いていこうと思う。

ベネフィット・ワン

2011年にとある会社を辞めることになった。その会社では、福利厚生の一環としてベネフィット・ワン(福利厚生サービスを提供する会社、現在は買収されたため上場廃止)と契約しており、私はその契約を使ってジムに行っていた。

ベネフィット・ワン(福利厚生サービス)のサービスは、かなり便利であり、いろいろなのジム(ティップネスやコナミ、オアシスなど)が都度払い(1回、1000円程度のものが多かった)で行けるというものだった。もちろん、個人契約ではそのような契約形態はなく月額課金のみであり、法人契約がなせる技である。

会社を退職するとそのサービスが使えなるわけだが、ベネフィット・ワンの株主になれば株主優待が得れる。これが仕事を通じたテンバガー株との出会い方である。尚、ベネフィット・ワンは2024年に第一生命に買収されて上場廃止となった。

小型成長株投資は個人投資家向け?

ここからは個人投資家が小型成長株投資で勝てる理由について説明していきたい。

プロが参加していないため株価が適正ではない可能性が高い

効率的市場仮説6というものがある。市場はすべて織り込むということだ。小型成長株もこの仮説によれば「常に多数の投資家が収益の安全性を分析・評価している」ため割安は発見できないということになる。

ただし、市場を効率的にしているといわれる大量の資金を持ったプロ投資家が参加していない市場があったらどうだろうか。多数の投資家は見ておらず、効率性が阻害されている。つまり、チャンスは見つけやすいといえる。

2011年のベネフィット・ワンや、2012年のドン・キホーテのように市場の折込みとは違った考え方をあなたが発見できれば勝利のチャンスはある。自分の信じられる株を見つけて中長期保有する小型成長株投資は、論理的に悪い選択でもないのだ。

「ずれ」が解消するまで自由に待てる

実際に自分が良いなと思ったものと株価が爆発的に成長していく時期には「ずれ」がある。このような株は、あなたが感じた成長性が割安で放置されているが、突如として何らかのイベント(決算や新製品)をきっかけに株価が上昇し始める。つまり、中小成長株投資というのは、この「ずれ」が修正されるのを待つというのが基本的な理論である。

公募ファンドのマネージャー(プロ投資家)は、毎日基準価格は発表される。つまり、毎日成績が発表され、それによるファンドの資金流入&流出が起こる。特に成績が悪く資金が流出したらファンドの運用資産を売らないけないため、ポートフォリオのバランスにも影響する。また、配当金を出すためにもファンドの資産を売らないといけない。つまり、さまざまな理由で待てないといえる。

その点個人投資家は自由だ。そういった意味で小型株は個人投資家向きともいえる。待てるあなたが買った株が何らかのタイミングで株価が上がり、プロ投資家のお金で株価が吊り上がる。個人投資家にとってはまさに理想的な展開だろう。

とにかく調べる癖をつける

日頃の生活の中で自分が依存したり、感動した企業があれば、その会社が上場してないか調べる癖をつけるのが、小型成長株投資の根本である。株価がなかなか上がらなかったり、逆に下がったりする中、長期的に持ち続けられるのは、その銘柄を信じる心。

そのためには、単なるスクリーニングでの数字が良いということを超えて、自分が良いと思う会社を見つける必要がある。

そのためには今日何の株を買おうという話ではなく、普段から頭の片隅に株を買おうというのを刷り込んでおくというほうが重要なのだ。

  1. 楽天証券のスーパークリーナーを使った東証プロ市場と東証REITを除く東証+名証全体(2024年6月11日閲覧) ↩︎
  2. 楽天証券のスーパークリーナーを使った東証プロ市場と東証REITを除く東証+名証全体(2024年6月11日閲覧) ↩︎
  3. 楽天証券のスーパークリーナーを使った東証プロ市場と東証REITを除く東証+名証全体(2024年6月11日閲覧) ↩︎
  4. 発行済み株式数が同じ場合。実際は公募増資なども行うため株数が増え、10倍になる株の時価総額は10倍以上になる ↩︎
  5. 中小型成長株オープン|ファンド情報|SBI岡三アセットマネジメント (sbiokasan-am.co.jp) ↩︎
  6. 効率的市場仮説 - Wikipedia ↩︎

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