投資を学びたい。投資スクールに行きたい。その一方で、投資は学ぶことはできるのだろうか?投資は職人技なので学ぶことは難しいのではないか?という意見もある。
投資を学ぶとは投資戦略といわれる投資の手法を学ぶことだ。この投資戦略を学べば基礎的な投資のやり方が学べる。その中で自分が納得できる戦略を見つけ、それのアレンジを行いながら投資実施する。先人の知恵が詰まった投資戦略をベースに、投資失敗のリスクを減らす。これが投資を学ぶということだ。
この記事では、投資戦略を体系立てて紹介していく。
はじめに:アクティブ投資とパッシブ(インデックス)投資
まずは2つの大きな投資戦略を理解する必要がある。
1つ目は、アクティブ投資。個人投資家やプロのファンドマネージャーが投資対象を分析&選定し投資リターンを追及する方法である。このアクティブ投資の手法としては、経済データや企業の財務諸表などを元に分析を行うファンダメンタルズ分析による商品銘柄選定と、株式チャートを元に行うテクニカル分析の2つに分かれる。
2つ目は、パッシブ投資(インデックス投資)。これは個別の銘柄選定はせずに市場平均(インデックス)にリターンを委ねる戦略(投資家の意志を投資に反映しない)だ。銘柄選定をしなくて良い為、個人投資家向けには最近流行している手法だ。
初心者には銘柄選定等は難しいのでパッシブ投資(インデックス投資)から始めることをお勧めする。
アクティブ投資とは
アクティブ投資は、投資家やファンドマネージャーが自身の判断で銘柄選択する投資。投資というイメージではこれが一番近いだろう。
アクティブ投資の究極的な目標は、パッシブ投資(インデックス投資)のリターン、市場全体のリターンを上回ることができるのか?である。これは「超過リターンを実現」とも呼ばれている。パッシブ投資を上回れないのであれば、労働時間を使ってアクティブ投資する意味がない(勝率については、インデックスファンドとアクティブファンド - 勝率が高いのはどっち?を参考にしてほしい)。
そのアクティブ投資というとまずは、経済状況や企業を分析して投資判断を行うファンダメンタル分析がイメージできるだろう。以下に代表的な投資手法を紹介する。
アクティブ投資:ファンダメンタル分析による株式投資手法
ファンダメンタル分析にもいくつかの軸がある。配当利回りに注目した高配当株投資はとても人気の投資手法である。また、本来の実力よりも割安に取引されている株を見つけるバリュー株投資(割安株投資)も人気である。
これとは真逆の考え方で、将来の成長性が見込める個別株を発掘するグロース株投資(成長株投資)も人気だ。
上記のような企業分析をビジネスとして実行し投資をしているのが機関投資家だ。個人投資家はこれにはかなわないだろう。そこで、このような機関投資家が購入している銘柄をまねして買うパクリ投資(クローン投資)という手法もある。
個別の企業ではなく、時流(テーマ)に合った業種=企業の集合体を見つける投資戦略としてテーマ株投資がある。1つの業種の中で伸びる企業と伸びない企業を合わせて買うロングアンドショート戦略という投資戦略も有名だ。
今までは、経済状況や企業業績に注目した投資方法を紹介してきたが、特定の株価が大きく動くタイミング=時期に注目して投資する方法もある。例えば、決算タイミング、上場タイミング、株式分割タイミング、インデックス投資に使われている株式指数に採用されるタイミングなどがある。また、個別株は各企業の個別の事情に連動しているとはいえ、市場の全体に流れに影響を受ける。市場サイクルに沿ったタイミングに株を売買するのがアノマリー投資も特に米国市場では人気の投資戦略だ。
最後に紹介したいのは、小さな時価総額(低迷する株価)に注目した投資手法である。低い時価総額(株価)のほうが上昇余地が高い。概要はこれぐらいにして細かい投資手法について考えていく。
企業分析:高配当株投資
高配当株投資とは、配当利回りが高い株式を買うことで安定的かつ長期的に市場平均(インデックス)リターンを上回ろうという投資戦略である。高配当株とは、一般的に安定した収益を上げている成熟した産業に属する企業が多い。代表例は、たばこ、エネルギー、鉄鋼、通信、銀行などの巨大企業である。
このような高配当株に集中投資することで市場平均(インデックス)に対して超過リターンを出す戦略であろう。人気の高配当ファンドである日経平均高配当利回り株ファンドは、225社の日経平均から30社の配当銘柄に集中投資する戦略だ1。後述の「ダウの犬」では、ダウ平均の30銘柄の中で10銘柄に集中投資するやり方である。
高配当株投資のメリットとしては、
投資家心理:株を売らなくても配当金としてのリターンが得れる為、長期保有つまり、バイアンドホールド戦略がとりやすい。投資家心理的に頻繁な売買を避けることができ、これが長期的なリターンを獲得できることにつながる。
バリュー株投資:高配当であることは株として割安であるといことと同義であり、同じような同業種の低配当の株式よりも値上がりを望める。
が上げられる。
注意点としては、株価を上げるためにとにかく配当をたくさん出している銘柄を避けるということだ。このような銘柄は、必ずしも業績が良いわけではなく、株価対策のために無理して配当を出しているだけである。このような問題を避けるためには、
・ 継続的に配当を出し続けているのか?
・ 利益の内どのくらい配当に配布しているか?=配当を払うために無理をしていないか?=配当性向が何%なのか?
・ 信用できるのか?=時価総額が大きい企業なのか?
を確認する必要がある。
高配当投資もインデックス投資の流れへ
最近では、高配当株のみを集めたインデックス(株価指数)も開発されておりそれに連動したETFや投資信託も運営されている。
米国では3つの有名な高配当ETF、VYM、SPYD、HDVがある。これはアクティブ運用ではなく、高配当株を対象にしたインデックスに基づいて運営されている。VYMは、FTSE High Dividend Yield Index、SPYDは、S&P 500 High Dividend Index、HDVは、Morningstar-Dividend-Yield-Focus-Indexでそれである。それぞれのインデックスには選定の特徴がありそれにより、株価上昇余地と配当金のバランスが選べる。
日本でも、NF・日経高配当50 ETFというETFがあり、日経平均高配当株50指数という日経平均に選出した銘柄の上位50の高配当銘柄をトラックした株価指数に連動している。高配当株投資にもパッシブ投資(インデックス投資)の波が訪れている。銘柄選定が難しければ、このようなETFを高配当株投資として購入するのも良いだろう。
連続増配株投資
連続増配株投資とは、配当金を毎年増加させている企業に投資を行う手法である。これらの企業は安定した収益力を持っていることが多く、将来的に配当が上がることで、株価も上がっていく傾向になる。前述のように高配当株の中には無理して配当金を支払っている企業もあり、連続増配株を選ぶことでこのような企業を排除することができる。
ここまで見ると連続増配株投資はメリットだけのように思えるが、デメリットもある。それは、
1) 配当が増加傾向ではあるものの、現在の配当利回りが低い。今後段階的に増配しても高配当株として魅力化するまでに時間がかかる銘柄もある
2) 連続増配の記録が何らかの理由により途絶えた場合、連続増配株として買われているので株価が大きく下落する可能性が高い。コロナやリーマンショックのような経済ショックが定期的に起きており、常に増配をすることはそれなりに難易度が高い。
ということだ。
よって、単に連続して増配しているだけでなく、今の配当利回りや安定した業種、ビジネスモデルなのか?についても確認する必要がある。
連続増配株投資もインデックス投資の流れへ
連続増配株投資もパッシブ投資の波が訪れている。米国でもっと有名な連続高配株ETFのVIGは、S&P U.S. Dividend Growers Indexをインデックスとしている。日本では、日経連続増配株指数というものが2023年6月に誕生し2、これに連動する投資信託:iFreeNEXT 日経連続増配株指数3も発売されている。
ダウの犬(Dogs of the Dow)
高配当株に注目してインデックス投資に勝つための投資戦略として「ダウの犬」というものがある。この戦略は、ダウ平均(アメリカの株式市場の市場平均)に対して超過リターンを生み出すために考案された集中投資の方法である。この「ダウの犬」は、ダウ平均だけでなくTOPIX Core 30 (日本を代表する30銘柄による株式指数)を対象に試されておりその有効性は確認されている4。
この投資戦略では、ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)を構成する30銘柄の中から、配当利回りが最も高い10銘柄に投資する戦略だ(尚、ダウのスモールドックという言われる手法は、さらに集中して5銘柄に投資する手法だ)。
ダウの犬戦略の理論的背景は、
1) ダウ・ジョーンズ工業株価平均に含まれる30社はアメリカを代表する企業でビジネスモデルは確立している
2) その企業が配当利回りが高いということは相対的に株価が落ちている
3) 1)と2)であれば株価上昇が望める
4) ダウ平均の30銘柄よりも、選択した割安感がある10銘柄のほうが集中すのでダウ平均よりもリターンが高くなる
ということである。
ただし、この「ダウの犬」という戦略は、配当を出さないハイテク株が株高をリードする昨今に苦戦を強いられている。2019年、2020年、2021年、2023年とダウ平均よりもパフォーマンスで負けている5。パフォーマンスを凌駕した2022年は、全体的な株価下落局面であり、特に2020年から2021年に上昇したハイテク株が大きな打撃を受けた。そういった意味では、このダウの犬は時流に合わなくなってきたのかもしれない。
優待株投資
優待株投資というのは、配当利回りだけでなく株主優待の利回りも入れて配当利回りを計算し、銘柄選定を行う投資戦略である。
株主優待は、個人投資家を集めるために発行されている。その為、株主優待は大量に株式を購入しても株数に応じて増えることはない。以下が、人気の高い株主優待を実施しているレストランチェーンのすかいらーくホールディングス(3197)の株主優待だ6。
保有株式数 | 年間株主優待 |
100株~299株 | 4,000円 |
300株~499株 | 10,000円 |
500株~999株 | 16,000円 |
1,000株~ | 34,000円 |
100株などの少ない金額で購入できる株数でまず優待が付与される。その株を300株、500株、1000株と買い進めても、株式優待の付与率はどんどん下がっていく。また、1000株以上を保有しても優待金額は一切増えない。つまり、100株買って4000円もらえるのであれば、1000株買って4万円、10,000株買えば40万円であれば付与率が一定であるが、そうにはならないということだ。
つまり、優待株投資というのは、最低優待付与株数を購入し、数多くの銘柄を持つことで投資効率が上がる投資戦略だ。
株価の成長、配当リターン以上のリターンを望めるため、インデックス投資に勝つ可能性はある。ただし、株主優待を配っている企業は、株価対策のために個人投資家を集める必要があり、魅力的な優待を出している企業もある。このような株価対策を実施しなくてはいけない企業は、必ずしも好業績の企業ではない。つまり、優待利回りだけを見て投資判断するのは銘柄選定には注意が必要だ。
優待株投資にはいくつかのバリエーションがある。ほぼリスクなしで優待のみを取得する「優待クロス」や優待株狙いの個人投資家の資金が最も蓄積した権利確定日の直前の高値で売る「優待を取らない戦略」などが上げられる。
企業分析:バリュー株投資(割安株投資)
バリュー株投資は、株価が実際の企業価値よりも低く評価されていると考えられる株式に投資する投資戦略だ。
なぜこのような状態が起こるかというとその企業が人気がないからというシンプルな理由である。具体的には、非常にニッチなセグメントでビジネスを行っているるのでそもそも知る人が少なかったり、部品製造のような最終製品がイメージつきにくい企業であるため価値が過小評価されているなど様々な理由がある。
ただし、このような歪みは、株式で儲けたいというアクティブ投資家の発掘意欲から、何かのきっかけで正当な評価に戻るともいえる。そのタイミングで儲けられるのがバリュー株投資だ。
バリュー株の見つけ方としては、オンライン証券会社などが提供するスクリーニングツールを使うのが一般的だ。スクリーニングツールを使って、PERやPBR、配当利回りなどの数値を条件として検索し候補を出していくという作業を行っていく。有望な企業が見つかれば個別企業のIR資料などを読み込んでいくという作業になる。具体的なスクリーニングツールとしては、マネックス証券の銘柄スカウターなどが有名だ。
PER基準(利益基準)でバリュー株を見つける
割安株を見つけるためにPER(株価収益率)という指標を使う投資戦略だ。PERとは株価が1株当たり純利益の何倍の価値になっているか?ということで、利益と株価の関係性を見たものである。
日本市場ではPERの平均は15倍程度と言われているが、このPERは業種によって平均値が様々であり、実際には同業種他社のPERと比べて株価が低いか高いかを判断している。詳しい投資戦略は、記事:企業分析はPER(株価収益率)から始めよう!で解説しているので参考にしてほしい。
PBR基準(資産基準)でバリュー株を見つける
昨今人気を集めているのがPBR基準だ。PBR(株価純資産倍率)の略で、企業の株価が1株あたりの純資産の何倍にあたるかを示すものだ。前述のPERは企業の産出す利益に注目したが、PBRは企業が持つ資産に注目した指標である。
以前はEPSのほうが注目されていたが、2023年3月に東証がPBRが1倍を割っている企業に対して、改善要求を出したことから、注目度が高まった指標である。尚、PBRが1倍を割っているという意味は「その事業をやめて企業の資産を株主に分けたほうが株主が得する」ということで、そのビジネスの価値が全くないどころかマイナス評価である=企業としての存在意義がないということである。
尚、東証が改善要求を出した、2023年3月時点で日本の上場企業の半分以上でPBRが1倍を割れていた。これは、日本市場は魅力がない企業ばかりが上場して市場という風にも受け取れ、東証が改善要求を出すのも無理もない。
ネットキャッシュ比率でバリュー株を見つける
PERとPBRという2つの人気指標に加えて、最近話題の指標がネットキャッシュ比率だ。これは、企業がたくさんの現金及び現金同等物(キャッシュ)を持っているかを示す指標で、現金及び現金同等物を時価総額で割った比率だ。
このネットキャッシュ比率が高い企業は、現金が有効に使われてない金余り企業ということになり、キャッシュ狙いでの企業買収候補先になったりするため、株価を上げる必要性に迫られる。ただし、ネットキャッシュ比率が高いということはビジネスに投資する余地もないということなので、株価を上げるためには配当性向を上げる、自社株買いを行うなどの株主還元策がメインとなる。
このような理論的な背景だけでなく、日本で最も結果を残したファンドマネージャーである清原達郎氏が著書の中で、銘柄選定でネットキャッシュ比率を重視していることを明らかにしたこともある。
企業分析:グロース株投資(成長株投資)
前述の高配当株投資やバリュー株投資と対をなすのがグロース株投資だ。これは成長が望める企業への投資、つまり企業の将来性に投資する戦略である。多くの場合、グロース企業は利益も売上も発展途上であるため、バリュー株視点での分析、例えばPERなどは割高となる。
また、著名なグロース株は話題&人気の企業であることが多く、バリュー株と違って多くの人の注目を浴びている株の為、情報も入りやすい。しかし、結果的にグロースしないで、株価は低迷の一途をたどる銘柄も少なくない。
グロース株投資は、その企業の将来を見極めるという目利き力が必要な領域でありかなり難しいといえよう。その分、リターンも大きい。
小型成長株集中投資
株価は巨大企業よりも中小企業のほうが伸びしろがある、これは企業価値=時価総額には限界があるからだ。
例えば、アパレル事業があったとする。しまむら(8227)の時価総額は約6500億円。パルグループHD(2726)の時価総額は2800億円。アダストリア(2685)の時価総額は約1700億円。中堅のアパレル、バロックジャパンリミテッド(3548)の時価総額は約300億円である(2024年末現在)。ユニクロはグローバル展開をして別であるが、アパレルや雑貨を主体とした企業の時価総額は市場規模を踏まえてだいたい6500億円程度が限界なのかもしれない。そうすると、バロックジャパンリミテッドは、株価が22倍程度になる可能性があるが、アダストリアは3.8倍程度にしかならない。
つまり、時価総額が小さい企業(小型株)のほうが、株価の成長余力が大きい。小型株の中から伸びる原石を見つけ出し、その企業に自己資金を集中的に投資することで爆発的なリターンを得るのが小型成長株集中投資戦略である。
ただし、小型株は大型株に比べて、事業リスクが大きく業績不振によって株価が低迷し続けたままの状況に陥ったり、成長軌道に乗ったとしても、株価が成長しきらない前に買収されたりする可能性もある。リスクが高い投資対象だ。
前述のアパレルで言えば、サマンサタバサジャパンリミテッドは、2005年12月の上場時(初値)の時価総額は756億円7だったが、2024年6月にはコナカに買収される形で上場廃止となっている(上場廃止時の時価総額は27.6億円ほど8)。
難易度が高いが、インデックス投資に圧倒的に勝つためのアクティブ投資の手法とはこの10バガー候補を探し集中投資する、小型成長株集中投資と定義できる。詳しくは小型成長株投資の威力 を参照してほしい。
企業分析:パクリ投資(クローン投資)
パクリ投資(クローン投資)は、著名のアクティブファンドなどの公開されている投資先企業に投資を行う手法だ。
例えば、ウォーレン・バフェット氏が運営するバークシャー・ハザウェイ社の大口投資先は、時間差こそあれ届け出情報などでわかる。これらの投資先は、機関投資家のスクリーニング基準に通った、きわめて有望性が高い投資先といえよう。そこで、この投資先の一部をコピーして投資することでより確実な投資対象を見つけようという試みがパクリ投資(クローン投資)と言われる手法だ。
ただし、これらの著名ファンドとまったく同じタイミングで売買できるわけでなく、人気化した後の高値掴みや、売り遅れ(逃げ遅れ)などが発生しないとは言えないなどの注意点もある。
業界分析:テーマ株投資
広くバランスが取れた株式インデックスに勝つために、特定のテーマ(ex. AI、電気自動車等)に関連する複数社の企業へ投資するのがテーマ株投資だ。
例えば、政権交代により軍事費が増大する見込みが出たとしよう。この時流を株として表現すると防衛関連株、具体的には、IHI(7013)や三菱重工業(7011)、東京計器(7721)などが防衛関連株に集中投資しようというのがテーマ株の具体例だ。
特定のテーマが時流の中で人気化すれば、全業種をカバーしている市場平均(インデックス)よりも多くのリターンを得ることができる。そして、特定の1社を買うよりも分散効果がある。個別株と市場指数の中間を狙う戦略だ。
なお、特定のテーマの株式インデックスも数多く作られており、テーマ株投資にもパッシブ投資の流れは来ている。SOX指数も半導体株というテーマ株の株式インデックスである。
(同一業種の)ロングアンドショート戦略
ロングアンドショート戦略とは、上昇しそうな株式を買い(ロング)、下落しそうな株式を売る(ショート)ことで利益を狙う戦略だ。これを同一業種に対して行うことで利益を追求しようという投資戦略も一種のテーマ株投資だ。
例えは自動車を例に考えてみる。トヨタと日産は同じマーケットで戦っている、そして、トヨタのほうが業績が伸びそうだ。このことは感性的に市場での日産のシェアを奪うことになる。そこで、トヨタを買い(ロング)、日産を売る(ショート)という戦略が考えられる。
このように株は個別株だけでなく業種などのテーマを考えて投資戦略を組み立てることもできる。
タイミング:個別株が持つ性質を使った投資
投資で儲けるためには、株価が上下しないといけない。つまり、上下するタイミングを狙って集中投資する戦略がある。
決算タイミング投資
企業の株価が変動する理由として大きいのは業績である。業績が発表されるのは決算タイミングである。そこで決算タイミングの前後で投資を行い超過リターンを出そうといのが決算タイミング投資である。
企業業績が良ければ株価が上がるわけでもない。企業業績が市場の期待を超えたのか?という非常にあいまいな概念で株価の上下運動が行われる。また、米国のハイテク企業などの注目企業は、決算タイミングで多くの人の注目を浴びており短期間で大きく値が動く。非常にギャンブル的な要素も強い投資戦略でもある。
IPO投資(上場タイミング)
IPO(Initial Public Offering)とは、株式公開、ある企業の株を株式市場で売買することをスタートすることを指す。この株式公開日の初めての株価(初値)が、事前の売り出し価格よりも高くなる傾向にある。これを利用し、売り出し価格で買い(事前売り出しに応募し)、公開初日の初値、もしくは、初値に近い時間帯で売り、利ざやを稼ぐという戦略だ。
確実とは言えないが人気の大型株式公開ではほぼ上昇する。最近では東京メトロの株式公開があったが、
・ 公募価格は1200円
・ 初値は1630円(+35.8%)
・ 公開日の終値は1739円(+44.9%)
というのが結果だ9。1日で45%程度のリターンが取れたことになる。
もちろん株には100%はない。ソフトバンク(9434)が上場した際には、
・ 公開価格は1500円
・ 初値は1463円(-2.5%)
・ 公開日の終値は1282円(-14.6%)
と大幅に割れをした10ことも参考情報として書いておく。
株価よりも問題なのは、事前に売り出しされる株式が人気の為購入できないということにある。値上がりが確実そうな株は申し込みも多く、多くの場合は抽選ということになる。つまり、うまい話はないということになる。
株式分割タイミング投資
企業が株式分割を行うタイミングを使った投資である。株式分割を行うと株価が下がることから買いやすくなる。これが呼び水となり株価が上がるという現象が観察される。
株式分割は企業価値に直結しないので、株式を分割したら株価が上がるというのは理論的には説明できないが、現象として良く起こるとされている。
インデックス(指数)採用タイミング投資
このインデックスの入替えをタイミングを利用した投資戦略である。
日経平均は指数の入れ替えタイミングは、4月と10月の年2回、3銘柄が入れ替えの上限とルールが決まっている。日経平均に採用されるとインデックスファンドなどに買われる一方で、銘柄から外れるとインデックスファンドの取引対象から外れる。これによって、株価の上下が起こる。「指数の銘柄入れかえを使った売買」はこのタイミングを利用した投資戦略である。
尚、入れ替え銘柄が発表される前に証券会社のサイトやインターネットメディアで入替銘柄予想記事が公開されることが多い。誰が当たっていたか外れていたか?是非検索してみてほしい。
タイミング:市場の周期性を使った投資 (アノマリー投資)
アノマリー投資は、ファイナンスの理論では説明できないが、経験的に観測的に観測できるマーケットの周期性を使って投資していく戦略だ。
例えばセルインメイ(Sell in May)という言葉がある。これは5月に株価が下落することを受けてできた市場の格言であるが、これもアノマリー投資の一つである。アノマリー投資はかなり研究されていて現在では、セルインメイのようなシンプルではなく、より周期性を説明できる論拠(定期的な事象)に基づいた投資手法もたくさんある。その一例である大統領選挙サイクルに注目したアノマリーはこちらで解説している。
株価:低迷する企業価値を使った投資
株式投資で儲けるためには株価が低ければ低いほどのほうが良い。なぜなら、理論的に市場規模などを踏まえると企業価値には上限があるからだ。ここでは低い株価に注目した株式投資手法を紹介していく。
超小型株モメンタム投資(イナゴタワー投資・ミーム株投資)
俗にいうイナゴタワー投資である。時価総額が100億円以下の超小型株は大きな値動きを演出できる。このような株は特定の個人や思惑を持ったグループが少量のお金を投資することで大きく株価が動かせることができるからだ。
主にツイッターなどで拡散した情報に乗っかり短期間で上昇の幅を捉えて売る。ミーム株投資もこの考え方に近い。最近は、超小型株だけでなく時価総額が小さい仮想通貨などでも頻繁に行われている。
大きなリターンが追求できる投資手法ではあるがリスクも高い。あまりお勧めはできない方法である。詳しくは「超小型株(イナゴタワー投資)で一発当てる」を参考にしてほしい。
ボロ株投資
超小型株投資モメンタム投資では時価総額=企業規模に注目をしたが、低位株投資はとにかく株価が安いということに注目した投資方法である。もちろん、株価が安いことは株が割安だということと同義ではない。また、株価が安いといことは時価総額が小さい=小型株ということでもない。
1株当たりの価格が安くても発行株式数が多ければ、時価総額=株価 X 株式発行数 = 企業価値は大きくなる。割安・割高は、企業価値に対して判断されるので、超低位株がいくら株価が安いといっても割安かという判断はできない。NTT(9432)やLINEヤフー(4689)など株価が安く時価総額が大きい企業もいくつか存在する。
しかし、実際に株式市場で1株100円前後で取引されている超低位株は、ほぼボロ株である。ボロ株とは、人気もなく市場で放置されている超低位株のこと。その多くは、投資対象ではなく投機対象として語られる。
これらの株価の安さに注目した投資方法は「超低位株はボロ株?急激な株価成長が可能な株」を参考にしてほしい。
アクティブ投資:テクニカル分析を使った株式投資
テクニカル分析は、株価指数やFX(外国為替証拠金取引:ドル円などの通貨の上下運動を使った投資)で多用されるチャートを分析して投資戦略を立てる手法だ。
順張り vs. 逆張り
まず、テクニカル投資で考えるポイントは、順張りか逆張りか?ということだ。
順張りは、市場の上昇トレンドの時に買い、下落トレンドの時に売るという投資戦略。例えば、株価において新しく高値が付いた場合、より上がると判断して株式を購入するというような手法を言う。その一方、逆張りは、市場のトレンドと逆の方向にかける戦略。下落局面で価格が反転するだろうタイミングを狙い買い、上昇トレンドの高値圏で上がりすぎから下落傾向になるだろうというタイミングで売るなどが、逆張り戦略だ。
どちらが良いというのなく、本質的には順張りも逆張りも市場のトレンドを見つけて売り買いするということだ。この市場トレンドを見つけるためには、株式チャートを多用する。そして、このチャートに計算式を当てはめて、オシレーターという計算指標を作り分析することが行われている。このようなオシレーターは、証券会社等が提供するチャートのオプション等で表示できる。
RSI(アールエスアイ)
価格が高値圏か安値圏かを示すオシレーター。逆張り戦略実行上=売られすぎ、買われすぎを見つけるためによくつかわれる。
RSIは、0から100の範囲の数字で表現される。50が平均的な値段であり、一般的に70以上が高値圏で、30以下が安値圏といわれる。つまり、30以下になっていたら安値圏で今後上昇するのではないか?70以上だと買われすぎなので下落するのではないか?というような使われ方である。
計算方法は、過去の特定の日数の上昇幅の平均と下落幅の平均を割ったものを、0から100で表せるように指標化したものであるが、特に詳しい計算方法は知らなくても良いだろう。
確認したほうが良いのは、過去何日の平均を取っているかである。一般的にはRSIの過去14日を取るが、必ずしも過去14日とは限らない。高機能チャートでは、過去9日、過去14日、過去26日などが表示できる。
以下は、Moomoo証券のPCトレードアプリで表現したS&P500のRSIのチャート(2023年10月から2024年末まで)である。尚、3つのRSIを表示させている。RSI2が14日ものであり、多くの人が見ているものである。4月や8月などにS&P500に調整が入った時に相対的に安値圏であることを示している。
RSIは、最も有名なオシレーターともいえる。
MACD(マックディー)
RSIと並んで有名なオシレーター。長期と短期の2つの移動平均線の差と、対象となるシグナル線の差を見ながら、上昇トレンドか、下落トレンドかの転換点を探そうとするものだ。
ゴールデンクロス(下落から上昇)、デットクロス(上昇から下落)といわれる2つの線の交差するポイント=トレンド転換のポイントである。以下は、Moomoo証券のPCトレードアプリで表現したS&P500のMACDのチャート(2023年10月から2024年末まで)である。
黄色がゴールデンクロスしている場所、赤い点を示しているのがデットクロスの場所である。一般的に黄色いゴールデンクロスの場所は、0よりも低い水準でクロスしていることが望ましいとされている。これは、その時の株価水準が安いからだ。
ボリンジャーバンド(オシレーター)
移動平均線の上に価格運動の標準偏差の線を表したチャートです。
その線の外に行くと一般的にではない値動きということでトレンド変換だとするやり方。
出来高
短期トレード
デイトレード
デイトレードというのは、1日で何度も取引を繰り返し収益を上げる方法。一般的にデイ=1日ということでポジションを次の日には持ち越さずに、その日のうちに買って売るという作業を行うトレード手法。主にはチャートを
以前は盛んであったが、コンピューターアルゴリズムを使った1秒間に何回も取引するような高頻度取引(High Frequency Trading)が盛んになるにつれ、人間によるトレードによって歪みを見つけるのは難しくなってきたといわれている。
スイングトレード
数日から数週間のポジションを保持することで価格の上下を取りに行こうという手法。デイトレードよりも期間が長いが、一般的なポジションを作ってトレードする手法よりも短期間の手法だ。
主にはテクニカル分析(移動平均線)などで株価の波を捉えることはから始めるケースが多い。
短期トレードは夢のある話の一方、破綻することも多いので注意が必要な取引手法である。
レバレッジ株価指数(インデックス)商品のアクティブ運用
インデックスは、積立投資だけのためにあるわけではない。メジャーインデックスを使った投資商品は様々あり、この指数を事故裁量で売り買いする投資が行われている。
チャート分析のみではないが、チャート分析によって売り買いの投資判断がなされている場合もあり、このエリアにカテゴライズした。
パッシブ投資(インデックス投資)とは
パッシブ投資(インデックス投資)では、市場指数(インデックス:市場の平均)に連動した投資商品を買う投資戦略である。
個別銘柄を使った投資戦略を立てる必要はなく、どの市場指数を買うかを選ぶだけだ。尚、有名な市場指数というは迷うほどの数はない。
重要な投資戦略:どの指数(インデックス)にするか?
指数は通常、資産クラスと地域で選ぶ。資産クラスとは、株、債券、不動産(REIT)、金などの種類である。地域とは、米国、日本、先進国、新興国などであり、選ばない=全世界という選択肢もある。
資産クラス=株式で、地域=米国であれば、S&P 500、NASDAQ 100、全米株式という3つの選択肢に絞られる。
資産クラス=株式で、地域=日本であれば、日経平均株価(日経225)、もしくは、TOPIXの2つの選択肢に絞られる。
資産クラス=株式で、地域=全世界であれば、MSCI ACWI (オルカン)という選択肢になる。
資産クラス=債券で、地域=先進国であれば、FTSE世界国債インデックスという選択肢になる。
インデックス自体はいろいろなものが存在するが、有名なインデックスでないとインデックス連動投資商品の購入者があまりいない。その為、投資商品が販売されていないケースや手数料が高いケースなどがある。つまり、有名インデックスに連動した商品を買うのが良い。
株式のインデックスでは米国株であるS&P 500と全世界株であるMSCI ACWI(オルカン)の人気が高い。投資残高という意味で一番人気であるのはS&P 500であり、最近投資を始めた方にはオルカンが人気である。
インデックス投資の良いところは、何も投資判断をしなくてもその指標が属する市場の経済成長をそのまま享受できる。悪いところは、リターンは市場の平均になるため、少額資金で大金持ちになりましたというようなことはない。それはアクティブ投資になる。
積立投資とドルコスト平均法
インデックス投資で重要な投資戦略が積立投資である。長期間にわたって一定の金額を定期的に投資する方法だ。多くの場合は証券会社の定期積立機能が準備されている。この積立投資は、ドルコスト平均法といわれる、市場の価格変動リスクを分散し、平均購入価格を抑える効果がある。
ドルコスト平均法のドルはお金という意味である。買うタイミングを分散することで、機械的に購入にかかるお金が平均化される=高値掴みを避ける効果がある。
バイアンドホールド
バイアンドホールドはインデックス投資だけでなくあらゆる場面で使うことができるが、インデックス投資でよく使われる。基本的には買ったら売らないずっと持ち続けること。これにより、短期的な市場の変動の影響を受けずに、右肩上がりの長期的な経済的な成長を享受できるという利点がある。
レバレッジインデックス商品の積立投資(ツミレバ)
レバナスという投資信託を積立てするという投資戦略、ツミレバがある。レバナスというのは、NASDAQ 100というインデックスの価格変動の2倍値動きをする商品(レバレッジ商品)である。「iFreeレバレッジ NASDAQ10011」という商品名を短縮してレバナスという愛称で呼ばれている。
2倍のレバレッジ商品は、値上がり幅(値下がり幅もそうであるが)が通常の商品に比べて2倍なので、資産形成の速度を早まる効果が期待できる。特に株価というのは長期的にみれば右肩上がりだからだ。
レバナスをはじめとした指数にレバレッジをかける商品は、あくまでも毎日の値動きに対して2倍の値動きをする。2日以上運用すると、逓減といわれる指数に対して2倍よりもパフォーマンスが悪くなっていくという現象が発生することもある。もちろん、2倍以上になるケースもあり、すべては値動き次第ということになる。
これのようなことから、レバレッジ製品と積立は相性が悪いという声もあるが、過去のバックテストによると必ずしもそうとは言えない。また、レバナスは5年半ほど運用実績もあり、純資産総額が200億円以上もある人気商品であることからも、意味のある投資戦略といえる。
追記:デリバティブを使った取引とは
先物取引、オプション取引、スワップ取引などを総称してデリバティブ取引という。以前は、プロ投資家向け商品が主流であった。現在は、個人投資家向けの商品がたくさんある。
レバレッジ(=資金が少なくても大きな金額が動かせる)が効いたハイリスク、ハイリターンの商品が多い為注意が必要である。
追記:資金管理方法
投資をするためには資金管理方法を学ぶ必要がある。
- 日経平均高配当利回り株ファンド | 投資信託なら三菱UFJアセットマネジメント ↩︎
- 指数情報 - 日経平均プロフィル (nikkei.co.jp) ↩︎
- iFreeNEXT 日経連続増配株指数(資産成長型)【0431423B】:投資信託情報 - Yahoo!ファイナンス ↩︎
- “ダウの犬投資法”を日本株で適用した戦略|吉野貴晶の『景気や株価の意外な法則』|投資信託のニッセイアセットマネジメント ↩︎
- Dogs Of The Dow 2024: 10 Blue-Chip Dividend Payers ↩︎
- 株主優待制度 | 株式情報 | 株主・投資家情報 | すかいらーくホールディングス ↩︎
- サマンサタバサジャパンリミテッド (7829) : 新規上場(IPO)情報 [STJ] - みんかぶ ↩︎
- (株)サマンサタバサジャパンリミテッド【7829】:株価・株式情報 - Yahoo!ファイナンス ↩︎
- きょうのIPOの初値、東京メトロは初値を上回る1739円で取引終える | 個別株 - 株探ニュース ↩︎
- 裏切られた期待、ソフトバンクIPO“暴落スタートの深層”<株探トップ特集> | 特集 - 株探ニュース ↩︎
- iFreeレバレッジ NASDAQ100 / 大和アセットマネジメント株式会社 (daiwa-am.co.jp) ↩︎