インデックス投資

月初か月末か?S&P500に積立投資する際のベストタイミングは?

S&P500の投資信託を毎月の積立設定にしている人も多いだろう。その際に必ず決めなくてはいけないのは積立日をいつにするかということ。月初に投資すべきか、月末に投資すべきか、あるいは月の半ばが適切か?インデックス投資家の間で長らく議論が続いている。

この疑問に対する明確な答えを得るため「月内の特定の営業日に投資した場合、長期的なリターンにどのような違いが生じるか」を過去30年、過去20年、過去10年のデータ1を使って分析してみた。

シュミレーションの前提

毎月、月内の特定の営業日に100ドルを積立てる。データはS&P 500のプライスインデックス(配当を入れない)を利用する。

営業日数がバラバラである問題に対応する

営業日は月によって異なり、たとえば19営業日の月もあれば、23営業日ある月も存在する。そのため、単純に「20営業日目」などで比較を行うと、月によってサンプル数や投資タイミングが不均一となり、結果の信頼性を損なう可能性がある。

2つの視点からアプローチを行った。ひとつは”月初が良い”を検証するために、「月初から数えた営業日」に着目し、1営業日目から19営業日目までの各日に毎月一定額を投資した場合のリターンを計測する方法である。もうひとつは”月末が良い”を検証するために「月末から逆算した営業日」に着目し、最終営業日からさかのぼって1〜19営業日前に投資した場合のパフォーマンスを同様に算出した。そしてそれをを比較した。

なお、分析対象であるS&P500のデータにおいては、過去30年間(1995年〜2024年)のすべての月において最低でも19営業日が存在していることを確認している2

S&P500の過去30年の比較

1995年から2024年のS&P500の過去30年のデータを使った分析の結果、営業日1から営業日19日目および、月末から営業日を数える最終日〜18日前営業日の分析のいずれにおいても、パフォーマンスの大きな差は見られなかった。

つまり、月内のいつに投資を行っても大して変わらないということだ。

最も良かった日と最も悪かった日を比べてもパフォーマンス差は、わずか930ドル(+0.61%)しか発生していない。特質すべきは積立を30年間続けると4.3倍に資産が膨らむということだ。

いつ投資するか投資金額最終残高何倍?
最も良かった日第1営業日$36,000$153,5864.3倍
最も悪かった日最終営業日の1営業日前$36,000$152,6564.2倍

S&P500の過去20年の比較

2005年から2024年のS&P500の過去20年のデータを使った分析の結果も変わらなかった。月内のどのタイミングで積立を行っても大してパフォーマンス差は軽微である。

つまり、月内のいつに投資を行っても大して変わらないということだ。

最も良かった日と最も悪かった日を比べてもパフォーマンス差は、わずか412ドル(+0.53%)しか発生していない。特質すべきは積立を20年間続けると3.2倍に資産が膨らむということだ。

いつ投資するか投資金額最終残高何倍?
最も良かった日最終営業日の17営業日前$24,000$77,8793.2倍
最も悪かった日最終営業日の1営業日前$24,000$77,4673.2倍

尚、最も良かった日は、最終営業日の17営業日前であるが、平均営業日は21日程度なので、4営業目前後に現れるということだ。つまり月初である。

S&P500の過去10年の比較

2015年から2024年のS&P500の過去10年のデータを使った分析の結果も変わらなかった。月内のどのタイミングで積立を行っても大してパフォーマンス差は軽微である。特に10年という期間だとほぼ一緒というようなパフォーマンス差しかでなかった。

最も良かった日と最も悪かった日を比べてもパフォーマンス差は、わずか172ドル(+0.74%)しか発生していない。積立を10年間続けると1.9倍に資産が膨らむことも良いニュースだろう。

いつ投資するか投資金額最終残高何倍?
最も良かった日第1営業日に投資する$12,000$23,3561.9倍
最も悪かった日第12営業日に投資する$12,000$23,1841.9倍

月初有利は本当か?この分析の問題点である長さを考慮する

この3つの期間、30年、20年、10年の分析を通じて、月内のいつに投資を行っても大して変わらないということが分かった。ただし、強いて言えば、月末よりも月初のほうが有利ということになる。

これには理由がある。そもそも論として、これは月初のほうがお金を市場にさらしている時間が長くなる。つまり、保有期間が長くなり、リターンが良くなるという性質がある。そこで、保有期間を補正した分析を行ってみる。やり方としては保有期間を日ごとに積算し日次リターンを計算し、それを比較しやすいように年率リターン換算で割り戻すということだ。

この分析をすると月末のちょっと前がもっとパフォーマンスが良いといえる。ただし、最も悪い月中の数値と年率で僅か0.022%しか発生しない。誤差と言える範囲だろう。

いつ投資するか年率リターン
最も良かった日最終営業日の4営業日前6.896%
最も悪かった日最終営業日の10営業日前6.874%

結論:タイミングはよりもできるだけ早く

今回の分析では、
・ 保有期間を補正しなければ保有期間が長くなる月初が月末に比べてパフォーマンスが良い
・ 保有期間を補正したリターンだけで考えれば月末ちょっと前が有利
となるが、いずれの場合もリターンは誤差レベルである。

つまり、長期で積立投資をやっていく際にはタイミングはあまり関係ないというのが結論だ。

ベストな積立タイミングはいつか?

僅かな誤差レベルのリターンを追及するのではなく「資金はできるだけ早く市場にさらしたほうが得である」と結論づけられる。つまり、積立タイミングは、月初でも、月末でもなく、あなたに余剰資金ができたタイミングというのが結論になる。

会社員であれば給料日の当日ということになるだろう。

  1. S&P 500 Index (SPX) - Investing.comのデータを参照した。 ↩︎
  2. アメリカ同時多発テロの影響により、2001年9月12日から14日は休場となった。この間のデータは2001年9月17日の終値を使って計算している。 ↩︎

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