インデックス投資

分配金が多いファンドが良いファンドなのか?投資信託における分配金に関する様々な誤解

最近は分配金がないインデックスファンドが人気であるが、日本の投資信託を引っ張ってきたのは毎月分配型といわれる毎月分配金が出る投資信託である。そして、この分配金が毎月たくさん出るファンドは高いリターンを叩き出しているファンドと勘違いされるケースも多い。

もちろん、分配金の大小はファンドパフォーマンスと関係ない。今回、毎月分配型投資信託を中心に分配型投資信託に対する誤解ということで、分配金とファンドパフォーマンスについて考えていきたい。

分配型投資信託に対する誤解

分配金に関する誤解は大きく分けて以下の3つの領域で起こっている。

1. 分配金=ファンドパフォーマンスという誤解
分配金はファンドが運用で叩き出した利益である。
つまり、高い分配金は高いリターンを意味する、つまり、分配金が高いファンドは良いファンドであるという誤解である。

2. 毎月分配金を配布できるファンドを購入すれば安定した収入源になるという誤解
毎月分配金を出すことができるということは、安定して運用がうまくいっているということだろう。
これを買えば、老後の安定した収入源になるという誤解だ。

3. 分配金には税金が掛からない
分配金は実は税金が掛からないという誤解である。

これについて1つづつ解説していきたい。

1. 分配金とファンドパフォーマンスに関する誤解

分配金は、必ずしも運用利益から払われているのではない。ファンドのパフォーマンスが悪い時は、運用資産(元本)を切崩して分配金を捻出している。

以下の図は、実際に毎月分配型ファンドとして有名な財産3分法ファンド(不動産・債券・株式)毎月分配型の交付目論見書から抜粋1したものである。運用成績がマイナスだった場合は、運用資産を切り崩して分配金を出す可能性があることについて、以下のような注意書きがある。

上記の図を右側を元に解説する。いろいろと細かく書いてあるが、
・100円の分配金を配布している。
・ファンドの運用益(期中収益)から捻出できたのは50円だけ
・後の50円は運用元本を50円切り崩して支払った
というのがポイントだ。

つまり、分配金には以下の2つのタイプがあり、単純な分配金利回りだけではファンドのパフォーマンスがわからないのだ。

分配金タイプ解説
普通分配金上記の右例で例の期中収益の中から出している配当金50円を指す。これは投資したリターンなので課税の対象になる。
特別分配金上記の右側の例で言うと元本を切り崩している50円。これは自分のお金が単に戻ってきているだけなので課税の対象にはならない。

分配金を出している投資信託のパフォーマンスは常にトータルリターン(分配金再投資した場合の基準価格)を確認する必要があるということだ。

2. 分配金が多い投資信託は安定した収入源になるという誤解

「1. 分配金とファンドパフォーマンスに関する誤解」を読めばわかるが、分配金=ファンドのパフォーマンスとはならない。ファンドのパフォーマンが良くても分配金は配布できるが、基準価格=運用資産は減り続けることになる。

運用資産を減らし続けるということは、分配金を捻出する力が弱まっているということになる。将来的にはどこかのポイントで安定した分配金を出せなくなるのは明確であろう。つまり、この多くの分配金を配布していることはファンドパフォーマンスが良いことや、将来も高い分配金を支払い続けることの補償にはならない。

このような配当戦略をタコ足配当と揶揄される。インフルエンサーを通じて有名になった米国の毎月分配金型高配当ETFであるQYLDなどは、まさにこのタコ足配当を行っている。

タコ足配当は悪者か?

ファンド保有者に安定した配当金を出すためにタコ足配当をやるというのは必ずしも悪いことではない。例えば、配当金で暮らしている年金生活者などは、配当金が出なければ結局、運用資産=投資信託自体を売って生活費を捻出しなくてはいけない。パフォーマンスが悪ければ結局、タコ足配当と同じ行為をしなくてはならない。

しかし、自身が納得して判断してやるのと自動的にファンド側がタコ足配当のでは、保有者の理解度という意味では違う。タコ足配当時にはファンド保有者に明確に誤解なきようにコミュニケーションする必要のではないか?

3. 分配金には税金が掛からない

「1. 分配金とファンドパフォーマンスに関する誤解」にも記載したとおりに、特別配当金(ファンドを切り崩して配当するもの)については税金が掛からない。

ただし、一般的な配当金は普通配当金のため、こちらには20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が掛かる。分配金を再投資する場合でも、分配金は一回、ファンド保有者に支払われたことになるので、分配金から税金分を除いた部分が再投資されることになる。

尚、NISA口座で投資信託を保有すれば、分配金も課税されない2

3つの投資信託の分配金にまつわる誤解を解説してきた。納得したうえで楽しい投資信託ライフを送ってほしい。

参考:インデックス型投資信託の分配金ってどうなっているのか?

低コスト型のインデックス型投資信託が大人気である。このような投資信託の代表例である「eMAXIS Slim」などをはじめとして分配金を出していない場合がほとんどだ。

このようなファンドは、投資先の配当金などはすべてファンド内で再投資をしている。その為、連動するインデックスの多くは株価を使った指数ではなく配当込み指数になっている。資産形成期には分配金は必要ないだろう。その場合は、税金もなく再投資されているインデックス型投資信託がお勧めだ。

  1. prospectus (nikkoam.com) ↩︎
  2. NISAを知る:NISA特設ウェブサイト:金融庁 (fsa.go.jp) ↩︎

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