優待株投資とは、配当利回りだけでなく、株主優待の価値も金額換算して利回りに含め、銘柄選定を行う投資戦略である。配当収入を重視する高配当株投資の派生バージョンであり配当金という現金だけでなく「実物価値の優待」を含めて、利回りを計算する手法だ。
株主優待は、企業が個人投資家を株主として囲い込むために提供する制度であり、その多くは飲食券、商品券、自社製品、割引券といった形で支給される。日本市場特有の制度であり、海外株式にはほぼ存在しないと言われている1。
株式を保有するだけで「おまけ」が得られる株主優待は、一見すると非常にお得に見える。ただし、株価は本来、企業価値や将来の収益力を反映したものであり、優待の有無そのものが企業価値を直接高めるわけではない。株主優待は一時的に株価へ影響を与えることはあるが、その分、株価にノイズが入りやすく、株価評価が難しくなる。投資手法としては賛否両方あると考えている。
株主優待投資とは何か
株主優待は、個人投資家を集めるために発行されている。その為、株主優待は大量に株式を購入しても株数に応じて増えることはない。以下が、人気の高い株主優待を実施しているレストランチェーンのすかいらーくホールディングス(3197)の株主優待だ。
| 保有株式数 | 最低投資金額2 | 年間株主優待 | 優待利回り |
|---|---|---|---|
| 100株~299株 | 33万7500円 | 4,000円 | 1.2% |
| 300株~499株 | 101万2500円 | 10,000円 | 1.0% |
| 500株~999株 | 168万7500円 | 16,000円 | 0.9% |
| 1,000株~ | 337万5000円 | 34,000円 | 1.0% |
100株などの少ない金額で購入できる株数でまず優待が付与される。その株を300株、500株、1000株と買い進めても、株式優待の付与率はどんどん下がっていくのが基本だ。また、1000株以上を保有しても優待金額は一切増えない。つまり、100株買って4000円もらえるのであれば、1000株買って4万円、10,000株買えば40万円であれば付与率が一定であるが、実際には、3万4000円で頭打ちだ。
最近増える継続保有条件にも注意
株主優待株の基本的な仕組みとして、権利付き最終日までに株を買って保有しておけば、権利落ち日以降に売っても優待がもらえる。権利付き最終日とは株主優待や配当の権利を得るために株主名簿に名前が載るための最終売買日で、その翌日に株を保有していれば優待・配当の権利が確定する。
2026年1月の権利付き最終日は28日、権利落ち日は29日なので、28日だけ保有しておけば、株主優待が貰える。このようなことから1日だけ保有して優待をもらうということが可能だ。ただし、株価対策の為にやっている為、このような行為は発行体としては困るであろう。最近では、1年以上といった継続保有を優待条件に付ける会社が増えている。
以前は、株主優待で大量の肉製品が貰えるということで有名だった優待銘柄、JMホールディングス(3538)は、2021年9月に2022年からは半年、2023年からは1年以上の継続保有が必要に変更になった。
頻繁に変わる優待の条件にも注意
優待の内容も頻繁に変わることも注意したい。RIZAPグループは、200株以上でchocoZAPの利用料が「無料」であったが、半額と変更した(2025年2月14日発表)3。
当初は大盤振る舞いな優待内容を出しても、利用者が増えれば企業側の負担も増える。あくまでも株主優待のみを目的とした長期投資は成立しないということも考慮に入れなくてはいけない。
株主優待投資は、最小単位の株を買って保有し続けるのが一番効率が良い
株主優待投資において、最も効率が良い方法は最小単位の株数を購入し、長期で保有し続けることである。多くの優待は100株など一定の保有株数を満たせば受け取れる仕組みで、それ以上株数を増やしても優待内容が大きく変わらないケースが多い。そのため、必要最小限の資金で条件を満たし、優待を継続的に受け取る方が資金効率は高い。
最小単位で保有を続ける戦略は、こうした制度変更への耐性も高く、優待投資を安定して続けるための現実的な選択肢といえる。
多種多様な株主優待銘柄をもって株主優待だけで暮らしている方もいらっしゃるようであるが、これは、理にかなった投資戦略である。
株主優待投資に潜む4つの罠
株主優待投資は、良い面だけでない。以下の4つの罠にはまらないようにしたい。
罠1: 株価が業績ではなく優待改悪、優待廃止に影響を受ける
株主優待投資の注意点としてまず挙げられるのが、株価が業績ではなく優待内容に左右されやすい点である。優待株では、業績が安定していても優待の改悪や廃止が発表されただけで株価が大きく動くことがある。実際、外食チェーン大手の サイゼリヤ が株主優待を廃止した際には、業績とは直接関係なく株価が急落し、投資家に大きな影響を与えた4。
罠2: 優待株投資家を狙い撃ちされるリスク
優待狙いの個人投資家の資金は、権利確定日の直前に集中しやすい。その高値局面で株を売却し、あえて優待を取らずに利益を確定する「優待を取らない戦略」を取る投資家もおり、結果として権利落ち後の株価下落を加速させる要因になる。
優待は株式投資の初心者が行っているという評判があり、企業業績が悪い外食企業など、株主優待としては魅力的であるが、企業としては魅力的ではない企業を使ってこのようなトレードアイディアを考える投資家もいる。
罠3: 企業評価がゆがむリスク
株主優待を配っている企業は、株価対策のために個人投資家を集める必要があり、魅力的な優待を出している企業もある。このような株価対策を実施しなくてはいけない企業は、必ずしも好業績の企業ではない。かならず、
罠4: 機関投資家が離れるリスク
株主優待は個人投資家向けの制度であり、機関投資家から見ると不公平で資金効率が悪い。結果として機関投資家が株主構成から外れ、株価の安定性が損なわれる可能性もある。株主優待投資は魅力がある一方で、こうした構造的なリスクを理解した上で向き合う必要がある。
その他の注意点としては、制度上のバグを使って、ほぼリスクなしで優待のみを取得する「優待クロス」というアイディアもあるが、これは貸株が潤沢でないためあまり現実的な投資手法とは言えない。
まとめ: 株主優待投資はお勧めか?
株主優待投資の本質を端的に表すたとえとして、「おまけが欲しくて本体を買う」という考え方がある。これは、かつて社会現象にもなったビックリマンチョコレートの構造とよく似ている。
ビックリマンチョコでは、多くの人の目的はチョコレートそのものではなく、中に入っているレアなシールだった。シールを集めるために商品を買い続け、チョコは二の次になる。株主優待投資も同様で、本来の「本体」は企業の価値や業績、将来の成長力であるにもかかわらず、「おまけ」である優待を目的に株を買ってしまうケースが少なくない。
問題は、おまけは企業の判断一つで内容変更や廃止が起こり得る点だ。ビックリマンのシールが入らなくなれば、その商品を買う理由がなくなるのと同じように、優待がなくなった瞬間に株を保有する動機も失われる。優待投資はあくまで“おまけを楽しむ投資”であり、本体である企業価値を理解した上で、余力として受け取るものだと位置づけることが重要である。
高配当株以外のアクティブ投資を知りたい方へ
株主優待投資は一見お得のようであるが、合理性が欠如している部分もある。このような罠にはまらないためには、アクティブ投資にもいろいろな手法を理解する必要がある。
幅広く知りたい方は「アクティブ投資の主要戦略を体系化して学ぶ完全ガイド」を読んで他の投資法を試してほしい。どんなアクティブ投資に向いているのかがわからないという方は、簡易的な投資スタイル診断などを活用し、自分の適性を確認してほしい。
- 株主優待バブル過熱 株価、特典で高止まり/機関投資家「配当軽視」 - 日本経済新聞 ↩︎
- 2026年1月9日の終値: (株)すかいらーくホールディングス【3197】:株価・株式情報 - Yahoo!ファイナンス ↩︎
- RIZAPグループ、株主優待を変更! 従来は200株以上でchocoZAPの利用料が「無料」になったが、今後は「半額」になるかわりに期間延長&利用人数が増えることに|株主優待【新設・変更・廃止】最新ニュース[2026年]|ザイ・オンライン ↩︎
- サイゼリヤ、株主優待の廃止を発表し、夜間取引で株価が9.5%超も下落! 従来の優待を2023年8月分で廃止する代わりに、2024年8月期は18円⇒25円に増配|株主優待【新設・変更・廃止】最新ニュース[2026年]|ザイ・オンライン ↩︎
