アノマリー投資は、ファイナンスの理論では説明できないが、経験的に観測的に観測できるマーケットの周期性を使ってアクティブ投資 (自己裁量投資) していく戦略だ。特に米国のS&P 500などでは研究が進んでおり、様々なアノマリーが言われている。
最も有名なアノマリーは、セルインメイ(Sell in May)であろう。これは6月以降、株価が下落することを受けてできた市場の格言である。これは、近年のs&p 500のデータを見ると明確に否定されている。
また、1月の相場観がその年の株式の先行指標となるジャニアリーバロメーター (January Barometer)というアノマリーもある。これについても、近年のs&p 500のデータを見ると明確に否定されており、これに似たようなサンタクロースラリー、つまり、年末年始は株価が上がるということも、否定されている。
このことから、アノマリーはオカルト、怪しい投資理論ともいえる。問題を難しくしているのは、証明されているアノマリーもあることだ。例えば、大統領選挙サイクルと株式市場の関係性だ。また、9月が弱いといった年間の月ごとのパフォーマンスも明確な傾向があり、これらのアノマリーは投資判断に使える。
それでは信用できないアノマリーはどのように見分けるか?それは以下の2つのポイントだ。
その1: 過去には成立していたが、株式市場を取り巻く環境(例えば、インターネットトレードの普及)が変わり、成立しなくなったものアノマリー。前述で言うとセルイインメイ。
その2: 非常に短い短期間の値動きを予測しており、他の市場環境に大きく左右されるもの。そもそも周期性ができにくいアノマリー。前述で言うと、サンタクロースラリー。
いずれにしてもアノマリーは、ネットで見たからのように鵜呑みにせずに、
検証方法1: 何でそのアノマリーが人間の行動パターン上、成立しているかを考える。
検証方法2: そのアノマリーについて、データを使って立証できるかを検証する
を徹底するのが基本となるだろう。
それではよりこのアノマリー投資を深く解説していく。
アノマリーはオカルトではなく信頼できる理由
アノマリーが信頼できる理由は、その根底にある考え方「歴史は繰り返す」という力強い原理だ。
相場は人間の心理によって動き、その心理パターンは時代が変わっても大きく変化しない。欲望や恐怖、群集行動といった本質的な反応が、季節性や曜日効果、イベント前後の値動きといったアノマリーを生み出す。
過去に繰り返し現れた傾向は、未来にも一定の確率で再現されるという前提に立つのがアノマリー投資だ。。つまり、オカルトではなく、心理面に根拠があるアプローチ方法と言える。
成立しなくなったアノマリー:セルインメイを解説する
セルインメイ、5月に売れ!は、実はアノマリーの1部の部分だけを紹介したものである。フルセンテンスは、“Sell in May and go away. Don’t come back until St. Leger Day.” であり、「5月に株を売り、毎年9月第2土曜日のセントレジャー・デーまでに市場へ戻るべきだ」という意味である。
このアノマリーは、5月に売れはデータ的には近年は再現してないが、9月中盤に戻れはデータ的に再現している。
検証方法1: 何でそのアノマリーが成立しているかを考える
セルインメイのコンセプトは、夏場の弱気相場を避けるということだ。夏場は昔からバカンスシーズンで株式トレードどころではない。また、政府や企業の活動も弱くなり、市場の流動性が低くなる。
その為、8月に何かが起きると市場の暴落が起こりやすい、荒れやすい相場である。この夏場の時期の混乱を避けるというロジックは正しい。
ただし、S&P500指数の構造変化があり。指数の中心はテック企業となった。これらの企業の第2四半期決算、つまり、7月の決算発表シーズンに株価が大きく動くように指数が動くようになった。そして、テック企業の業績はドットコムバブル崩壊以降、常に伸びてきたので、5月に売ってしまうと7月というサマーラリー局面を逃すことになる。
検証方法2: そのアノマリーについて、データを使って立証できるかを検証する
データを見ると、格言の後半にある「9月中旬に株式市場に戻るべき」という部分は現代の市場で機能し続けている。9月が弱いというトレンドは過去も今も変わってない。
つまり、この構造的変化を受けて「セルインジュライ=7月に売れ」が、近年版のアノマリーと言える。
この話のデータ的な証明は、以下の記事を参照してほしい。
アノマリーは万能ではないが有益
アノマリーは相場の傾向を読み解くうえで有益だが、決して万能ではない。
というのも株価が最も影響を受けるのは直近の経済イベントである。例えば、2025年の関税ショックによって4月に大幅に株価が下落した。4月に株価が下に動いた影響で、9月のパフォーマンスが良い月となった。つまり、2025年に限っては、9月が弱いというアノマリーは成立してない。だからと言って、9月が弱いという傾向が、変わったか?と言われればそうではないだろう(尚、9月が上昇した年は年間で株価が上昇するというアノマリーもある)。
過去に繰り返し観測されたパターンは、投資家心理や季節要因を反映しており、一定の確率で再現される。しかし、市場環境や金融政策の変化によって効果が薄れることもある。
結論は、アノマリーを絶対視せず、あくまで判断材料の一つとして活用する投資姿勢である。

