生存者バイアスとは?投資判断を狂わせる「成功者だけを見る罠」

2026年1月5日

SNSで投資情報を見ていると、
「5年で1億円の投資術」
「50万円を50億に増やした」
といった成功例が次々と流れてくる。

一方で、自分の投資成績はそこまで派手ではない。すると、「自分は投資の才能がないのではないか」や「自分は投資に向いていない」と、不安や劣等感を抱いてしまう。

しかし結論から言えば、その感情の多くは投資の実力差ではなく、認知の歪みから生まれている。その正体が生存者バイアスだ。

生存者バイアスとは?意味をわかりやすく解説

生存者バイアスとは、「結果的に生き残った成功例だけを見て判断してしまう認知の偏り」のことだ。

まず「5年で1億円の投資術」が高い再現性があれば、もっと日本に富裕層が増えても良い。「行動してないだけ」と成功者は言うかもしれない。これを鵜吞みにする必要もないだろう。というのも、成功者がもつ運(ラッキー)の部分、つまり、生存者ラッキー情報を正しく理解してない可能性があるからだ。

生存者バイアスの具体例|爆撃機の事例

生存者バイアスの理論的背景として有名なのが、第二次世界大戦中の爆撃機の損失分析だ。1。敵の射撃による爆撃機の損失を最小限に抑えるため、帰還した爆撃機の被弾箇所を調査したところ、ある特徴的な分布が確認されたとする2

ここで、クイズだ、以下の図のポイント1とポイント2のどちらが正しい分析だと思うだろうか?

生存者バイアスの具体例|爆撃機の事例を使った問題の正解は?

生存者バイアス生存者のラッキー情報とすると

ポイント1は、被弾した場所の装甲を強化するということだ。被弾に対して耐性をつけるという意味では、一見理にかなっているような気がする。ただし、これが生存者バイアス生存者のラッキー情報の認知の間違いである。

調査対象にできるのは、帰還できた爆撃機だけであり、墜落した爆撃機の損害は調べられない。つまり、被弾した個所は、被弾しても帰還できる場所を示している。

ここまでくると正解は、ポイント2の被弾してないところの装甲を強化するということがわかる。この案の理論的背景は、直感的にも理解しやすい。コックピット、エンジンや後部の胴体が折れやすい部分、羽が折れやすい部分などは、致命傷になりやすい。つまり、結果ではなくその結果にまつわる理論的背景を知ることが一番重要なのである。

ただし、生存者バイアスの存在で、多くの人はポイント1を選んでしまう。

生存者バイアスを投資戦略に当てはめるとどうなるか

株式投資おいては不確実性が高い。その為、生存者バイアスが極端に強調されやすい。

書籍やSNSなどで、少額から株式投資で巨万の富を築いたと紹介される手法、つまり、生存者バイアスが極端に強調された手法は、大きく次の2つの割安株を発見した手法に分類できる。
・清原達郎氏の手法に代表される「小型成長株集中投資」:これは成長余地があるが割安で放置されている小型株を見つけて集中投資する手法
・ウォーレン・バフェット氏の手法にも通じる「バリュー株長期集中投資」:これはやっているビジネスの価値が割安で放置されている株を見つけて集中投資する手法

損失回避バイアスからも生まれやすい割安株

それでは、なぜ割安株が存在するか?。市場は、完全に市場は効率的でないがある程度効率的だ3とすると、このような割安株は存在しないことになる。

これが生まれる原因は、プロスペクト理論における損失回避バイアスで説明できる。プロスペクト理論とは、人は利益を得る喜びより、損失を被る痛みを大きく感じるとする利用論だ。その中核にある概念が、損失回避バイアスで、痛みを感じる損失をできるだけ回避しようという心理が働くとしている。

この心理により、投資家は損失を強く嫌うため、不人気な銘柄はさらに敬遠されやすく、その結果として理論株価以上に売られやすい。つまり、不人気銘柄ほど割安になりやすい構造が生まれる。前述の著名投資家は、これを徹底した銘柄分析で読み解き大きなリターンを上げている。

生存者バイアスから生まれた投資賢者への批判

割安株が放置されるのは不人気だからであるが、これは生存者バイアスを加味しないと投資方針の批判につながる。

「オマハの賢人(Oracle of Omaha)」と呼ばれ、投資の神様とも称されるウォーレン・バフェット氏は、ドットコムバブルの際にはハイテク銘柄に投資しなかった。その為、バブル時には、ハイテク株で高いパフォーマンスが実現していた。つまり、ラッキーな生存者=ハイテクに投資しており莫大な利益を得ていた人からは、その投資スタイルが古くなったのではないかという批判を過去に受けている4

生存者バイアスは、常に今時点でパフォーマンスが良いという状況を訴えているだけであって、本質とは関係ない。

SNSの投資成功例に生存者バイアスがかかる仕組み

現在は、SNSの発展によって人と比べるのが非常に容易になったため、有名投資家でなくても投資方針は、自分による他社との比較という面で、評価される。

つまり、SNS上の投資結果と自分の投資成績を比べて、みじめな気持ちになる人は多い。しかし、それはあなたの投資センスが劣っているからではない。SNSに表示されているのは、銘柄選定でうまくいったという「たまたま生き残った成功例」だけであり、そこには強烈な生存者バイアスがかかっているからだ。

しかし、比較している対象そのものが歪んでいる以上、感情が不安定になるのは当然と言える。

生存者バイアスが自己肯定感を削るメカニズム

生存者バイアスは、投資成績だけでなく、自己評価にも影響を与える。

普通のサラリーマンでも勝てているという情報をSNSで見つけて「自分だけ勝てていない」という生存者バイアスによる誤った情報が
・無理なリスクを取る
・短期売買に走る
・投資方針を頻繁に変える
・投資詐欺に引っかかる
といった行動につながり、結果的にパフォーマンスを悪化させてしまう。

このような投資で焦ってしまう心理をFOMO(取り残される恐怖)という。

まとめ|生存者バイアスを排除する市場平均という考え方

それでは、どのようにして生存者バイアスを排除していけば良いのだろう。

正しい比較対象は「市場全体」と「長期データ」

投資において比較すべきなのは、SNSの成功者ではない。市場全体の平均の長期データと自分の運用結果を比べることが重要だ。これが、生存者バイアスの影響を最小限にできる。

派手な成功例よりも、
・再現性があるか
・長期で成立しているか
・リスクに見合ったリターンか
を基準に判断することで、投資の不安は大きく減らせる。

投資の不安は、感情ではなく、理論と数字で解体できる。生存者バイアスを前提に世界を見ることが、冷静で納得感のある投資判断への第一歩だ。

また、人間が本来持つ思考の癖や心理的な罠を体系的に理解することが重要である。投資判断を狂わせやすい代表的な心理については、投資心理学の観点から整理した以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

  1. Survivorship bias - Wikipedia ↩︎
  2. Martin Grandjean (vector), McGeddon (picture), US Air Force (hit plot concept) - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, リンクを使い筆者が作成 ↩︎
  3. 効率的市場仮説|インデックス投資を支持する理論と反論 ↩︎
  4. 1999年12月27日、米金融誌バロンズは「What’s Wrong, Warren?(ウォーレン、どうしたんだ?)」という記事を掲載し、その中で「ウォーレン・バフェットは、かつての魔法のような投資手腕を失いつつあるのではないか」と示唆した。Value Investing Got Crushed During the Internet Bubble - Here's Why... -からの妙訳 ↩︎