S&P500のアノマリー

S&P500のアノマリー2月編(2026年度版)

経験則的に繰り返し観測される株価の値動きの偏りをアノマリーという。このアノマリー=市場の傾向を知ることが、正しい投資判断を下すための1つの重要な知識になる。

S&P500指数の長期データを用いて、2月の月別パフォーマンスを定量的に検証する。

S&P500の2月の月間平均リターンと上昇確率

S&P500の2月はまず悪い月である。過去10年から過去30年までの平均パフォーマンスはすべてマイナスを示している。

期間月間平均リターン上昇確率
過去10年-0.5%40%
過去20年-0.1%55%
過去30年-0.3%53%
過去40年0.4%60%

そもそもなぜ2月は弱いのか?

2月の米国市場は弱いと言われている。これはなぜだろうか?

1月が強いから
年末の節税売りが終わり、新年度の資金流入での年初ラリーの反動が起こる。株価は上がったら利確される。また、年末にポジションを落として、年始に再構築した機関投資家がポジションの再調整を行うからとも言われている。

2月は何かと中途半端な月だから
1月末のFOMC(連邦公開市場委員会)は、その年を占うということで注目されるが、それを通過すると3月のFOMCまで空白が生じる。

ビックテックによる株価押上げの後だから
S&P 500は時価総額加重なため、以下のような時価総額の大きいビックテックの株価に非常に依存する。そのビックテックの決算が1月後半に集中しており、そこで株価の上昇が起こった場合は、1月のS&P 500のパフォーマンスとして織り込まれてしまう。

以下が2025年の決算発表のタイミングだ。

企業ティッカー決算発表日発表タイミング
TeslaTSLA1月22日(水)After Close
MicrosoftMSFT1月28日(火)After Close
AlphabetGOOGL1月28日(火)After Close
Meta PlatformsMETA1月29日(水)After Close
AppleAAPL1月30日(木)After Close
AmazonAMZN2月6日(木)After Close
NVIDIANVDA2月19日(水)After Close

市場でもっと注目されている銘柄「NVIDIA」の結果が2月にあるが、NVIDIAは期待が高く、株価は決算前に上がりやすい為、S&P 500のパフォーマンスという意味では2月には貢献しない。

なぜ過去40年はプラスリターンを示しているのか?

過去40年平均になると、1986年から1995年までのデータ取り込まれる。

この10年間には、2月に特別に株価が上がるインベントがあった。1986年の原油価格急落にともなうインフレ沈静化、および、利上げがほぼなくなったことによる株高(+7.1%)や、1991年には、湾岸戦争が短期間に終結したこと(+6.7%)などだ。

この時代は、前述のビックテック効果がなく、時価総額の分散のバランスが良かったこともあるだろう。

2月のリターン分布

過去40年の2月の月間リターンの出現回数を0.5%刻みに分けてカウントして棒グラフ化したもの(ヒストグラム)が以下である。

標準偏差(データのバラつき)は4.2%であり、これは、S&P 500の月別データでは標準的なデータである。このデータは、68.3%の確率で、月次リターンが-3.9%から4.6%に収まるということを表している。

また、ヒストリカルデータから見ると5%以上のリターンが得れる確率は12.5%(40年中5年)、-5%以上の損失になる確率は、7.5%(40年中3年)と言える。

ただし、近年では2月のパフォーマンスが落ちてきており、このヒストグラムよりも、パフォーマンスは悪いというのは留意すべきであろう。

2月の年別S&P 500 ベストリターン

近年は、マーケット情報の拡散速度が速まっていることから、ボラティリティが高まっている。よって、他の月の月別ベストパフォーマンスを見ると、過去10年での上位のパフォーマンスが、過去20年、30年、40年でも上位にもなることが多い。ただし、2月はトレンドが変化しており、月別のパフォーマンスが悪化している。

よって、過去40年のデータには過去20年のベスト3は1つも含まれていない。

順位過去10年過去20年過去30年過去40年
1位2024年 (+5.2%)2015年 (+5.5%)1998年 (+7.0%)1986年 (+7.1%)
2位2017年 (+3.7%)2024年 (+5.2%)2015年 (+5.5%)1998年 (+7.0%)
3位2019年 (+3.0%)2014年 (+4.3%)2024年 (+5.2%)2003年 (+8.1%)

2月の年別S&P 500 ワーストリターン

上位パフォーマンスとは全く逆で、下位のパフォーマンスでは近年のものが多く登場している。これも、2月の月別パフォーマンスが悪化傾向にあることを象徴しているだろう。

順位過去10年過去20年過去30年過去40年
1位2020年 (-8.4%)2009年 (-11.0%)2009年 (-11.0%)2009年 (-11.0%)
2位2018年 (-3.9%)2020年 (-8.4%)2001年 (-9.2%)2001年 (-9.2%)
3位2022年 (-3.1%)2018年 (-3.9%)2020年 (-8.4%)2020年 (-8.4%)

S&P 500の2月のアノマリーは?

このアノマリー分析のキーポイントは以下となる。

・2月のパフォーマンスは悪い。近年では9月の次に悪い。
・近年のトレンドが変わっており、過去40年のような長期的なデータから導き出されるアノマリーは疑問がある。

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