「今は投資を始めるべきではない気がする」
初心者が投資を始めようとする際に一度はこの感覚に行き着く。
相場は高く見え、ニュースでは投資に関する不安を煽る言葉が並び、SNSでは成功談と失敗談が入り混じっている。損したくないという感情が強まり、行動に移せなくなる。
結論から言えば、投資のスタート時期を損をしにくい相場のタイミングで決めようとするには無理がある。投資のスタート時期は、相場といった外部環境よりも、納得感というあなた自身の内部環境を重視したほうがよい。
もちろん、迷うのは当然であり、この感覚自体が異常なわけではない。この記事では、なぜ迷うかを人間の心理と株式市場の構造で解説し、どのようなタイミングで投資を始めればよいかを整理する。
なぜ「今は投資が危険だ」と感じてしまうのか?
常に株式相場が高く見える
暴落局面で投資のスタートを検討する投資初心者は少ないだろう。むしろ、市場がホットなときに検討する人が多いだろう。
株価指数が上がり続けると「ここから下がるのではないか」という恐怖が生まれる。人は価格を絶対値ではなく「過去との比較」で判断するため、上昇が続いた相場ほど割高に感じやすい。これは合理的な分析というより、人間の直感的な反応に近い。
専門家は、株価の割高感をPER(株価収益率)などで測るが、それでも、短期的な見通しは誰も当たらない。つまり、専門家でも一貫して当て続けるのは難しい以上、株式相場が高いか安いかは誰にもわからず、感覚的に高いか安いかで判断しても、それが将来の株式市場の予測につながるわけではない(参考: 著名アナリストのS&P500予想はなぜ当たらないのか?)。
そもそも株価は経済成長ともに伸びる性質があり、株価は基本的に右肩あがりである。つまり、多くの局面で“高いと感じやすい状態”にある(参考: 株価が右肩上がりなのはS&P 500の利回りはいくつなのか?が参考になる)。
ニュースやSNSが不安を増幅させる構造
ニュースやSNSが不安を増幅させる構造は、情報の性質そのものに起因している。
ニュースは本来、変化や異常を伝える役割を持つため、「問題」「危機」「下落」といった不安にさせる変化が、優先的に取り上げられる。相場が安定して推移している状態や、長期的に見て合理的なデータは話題になりにくく、結果として投資環境は常に不安定で危険なものだという印象が強化される。
SNSではこの傾向がさらに極端になる。アテンションエコノミー1という、注目を集めることが重要なSNS世界観では、強い言葉や断定的な予測、恐怖を煽る投稿ほど拡散されやすく、冷静な分析や前提条件の多い説明は埋もれやすい。アルゴリズムは感情的な反応を引き出す情報を優先表示するため、利用者は知らず知らずのうちに不安を繰り返し摂取する構造に置かれている。これが「今は危険だ」という感覚を過剰に強める要因となる。
投資の始め時に迷うのは人間だから
損をしたくないという感情が投資を始めるのを迷わせる理由は、投資経験や知識がないからだけではない。人間の認知特性によるものだ。
プロスペクト理論が示す「損の恐怖」
プロスペクト理論では、人は同じ金額であっても「得する喜び」より「損する痛み」を強く感じる、その差は約2倍としている。つまり、1万円を得た喜びより、1万円を失った苦痛のほうが2倍、心理的影響は大きい。この理論は、2002年にノーベル経済学賞(ノーベル記念経済学賞)を受賞した心理学者のダニエル・カーネマン氏らによって提唱された。
つまり、誰もが損を恐れるため、投資の判断に迷うのである。
最適なタイミング探しが終わらない理由
前述の損をしたくないということから、多くの初心者は最適な投資スタートのタイミングを株式市場の動向からを探そうとする傾向がある。しかし、すでに述べたとおり、株式市場の予測が無理なことから、完璧な始め時を事前に知ることは不可能である。
そして、結果として投資開始が遅れやすくなる。
投資を見送る判断は正しいのか
投資開始の判断を見送ることにおいて合理的なケースももちろんある。これは、相場やSNSの情報など外部的な要因ではなく、あなた自身の資金の問題、内部的な要因である。
見送る判断が合理的なケース
生活費が不足している場合や、近い将来に資金が必要なイベントがある場合は、投資を見送ったほうがよい。投資しても、結局、自身の生活のために、自身のタイミングで株式市場から資金を引き揚げなくてはいけない。その時に市場が下落傾向にあれば損失を被ることになる。
そもそも投資は、1年から2年とある程度は長期で取り組んでいかないといけない。また、資金を株式市場で増やそうというような考えで始めると、なかなか成功しないことが多いだろう。
手元資金が少なく、少額の資金でも始めてみたいという人がいるだろう。それであれば、無理ない少額の資金で投資を始めることが、おすすめである。余剰資金でやることが投資の基本である。
見送り続けることのリスク
一方で、相場の状況を見て「不安だから」という理由だけで何年も投資を避け続けると、インフレや機会損失という別のリスクを背負うことになる。
まとめ:納得感を基準に投資を判断する
見送る判断が、内部的な資金ニーズの問題なのか、それとも外部的な問題なのか、に切り分けて考えていった方が良い。
ただし、無理して投資を始めても続かないと意味がない。それまでは情報収集を怠らないことだ。初心者には、インデックス投資がおすすめと言われている。当サイトにも、初心者向けのインデックス投資ガイド記事もある。
最後に。無理に始める必要はない。投資で一番重要なのは投資タイミングでも銘柄選定でもなく、自分自身の納得感だ。なお、こういった投資不安についての体系立ててまとめた記事を参考にして、不安を無くして、納得感がある形で投資をスタートしてほしい。

