積立によるインデックス投資は、長期的に見れば非常に合理的な投資手法だ。低コストで分散され、経済成長の果実を幅広く享受できる。理論上は「続けさえすれば報われる」と説明できる。
それにもかかわらず、下落相場になるたびに、SNS上ではインデックス投資を全売却したという報告が後を絶たない。「タイミングを図った」「一度リスクを落としただけだ」という自己弁護的なコメントが散見される。
この矛盾こそが、インデックス投資最大の壁である。
なぜインデックス投資の積立は「理論的に正しいのに」続けられないのか。理由は知識不足ではない。むしろ、SNSや書籍では「長期・積立・分散」の重要性が繰り返し語られており、知識としては十分すぎるほど行き渡っている。
それでも続かないのは、人間の感情が理論通りに動かないという仕組みを理解していないからだ。
インデックス投資をやめてしまう最大の原因は「含み損耐性」
人間が含み損耐性が小さいのはプロスペクト理論という形で証明されている。人は本能的に損失を強く嫌い、同じ金額でも利益より損失に大きな痛みを感じる。
積立投資の初期は、投資元本が少なく、価格変動の影響を強く受けやすい。その結果、評価額がマイナスになりやすく、「長期・積立・分散」という理論の効果を実感しにくい期間が続く。
この状態で「精神論で耐えろ」と言われても無理がある。必要なのは根性ではなく、まずプロスペクト理論という人間の行動原理を理解することだ。
「含み益バリア」とは何か?なぜ投資不安が消えるのか
ここで重要になるのが「含み益バリア」という考え方だ。含み益バリアとは、評価額が一時的に下がっても「まだプラスだ」と感じられる心理的な安全域を指す。
含み益バリアの実例
以下の図は、積立投資における含み益バリアの有無によって生じる心理状態の違いを示している。

- この図が示しているのは価格ではなく“心理の違い”である -
上段は、十分な含み益バリアが形成されていない積立初期の状態だ。わずかな下落でも評価額がマイナスに転じやすく、「将来が見えない」「今売るべきではないか」という不安が強くなりやすい。
一方、下段は含み益バリアが形成された後の状態である。一時的に大きな下落が発生しても、評価額は依然としてプラス圏にあり、心理的な余裕が保たれている。
含み益が安定して積み上がると、投資家は価格下落を以前より冷静に受け止められるようになる。「それでも以前より資産は増えている」という事実が、不安を和らげてくれるからだ。
この含み益バリアが形成されるまでの期間は、一般的には少なくとも1年程度が目安となることが多い。ここを超えると、投資に対する不安は大きく下がり、価格変動に一喜一憂しにくくなる。
まとめ|インデックス投資は「続けられる理論」を知っている人が勝つ
インデックス投資が続かない理由は、意志の弱さではない。含み益バリアが形成される前に、含み損により大きな痛みを感じ心理的な限界が来てしまう構造にある。
だからこそ、最初に意識すべきなのは、インデックス投資が長期的なリターンをもたらすことではない。短期的に含み益バリアができるまでの期間をどう心理的に乗り切るか、という点だ。
「長期・積立・分散」の重要性を理解することも大切だが、それ以上に、プロスペクト理論を理解し、自分がなぜ不安になるのかを知ることのほうが重要である。
最後に。
インデックス投資は、才能の勝負ではない。
続けられた人が、結果的に勝つ投資である。
