「やはり自分が考えていた説は正しかった。」
投資に関して不安があり、インターネット検索やSNSなどで情報収集していると自分が信じる説を補強する論拠がどんどん集まってくる。
確証バイアスとは、投資家が自分の考えを正しいと信じたいあまり、都合の良い情報だけを集めてしまう心理的な偏りのことだ。
例えば、インデックス投資とアクティブ投資のどちらが良いかというテーマで、インデックス投資を支持する立場から情報収集を行っていたとする。そうすると、アクティブ投資はインデックス投資に勝てないという主張を支える理論として、「効率的市場仮説」が見つかる。その上でデータ的な背景としてアクティブファンドの僅か13%しかインデックスファンドに勝てていない(米国大型株の10年平均のパフォーマンス)というような情報が次々と見つかる。
その過程では、アクティブファンド業界の著名人の話はかき消されている。例えば、個人投資家に人気のファンド「新ホリコ・フォーカス・ファンド」のファンドマネジャーでメディア出演も多い堀古 英司氏1の投資戦略のYouTubeや、65万円の軍資金から300億円を稼いだとされる伝説的な個人投資家の片山晃氏2のインタビューなどは、見逃されている可能性が高い。
この思考の裏にあるのが確証バイアス(Confirmation Bias)だ。そして、確証バイアスが判断の歪みを生み、時に間違った投資判断につながることを理解しておく必要がある。
なぜ投資家は確証バイアスに陥るのか|不安と意思決定の関係
確証バイアスは、知識不足や性格の問題ではない。人間が不確実な状況で意思決定を行う際に、精神的な不安やストレスを減らすために働く、極めて自然な認知の癖ともいえる。なお、確証バイアスは感覚的な話として捉えられることが多い。しかし、実験によって繰り返し確認されている認知の傾向だ。その代表例が、心理学で有名なウェイソン選択課題である3。
投資判断は常に「正解が分からない」状況で行われる。そのため人は、「自分の判断は間違っていない」と確認できる情報を無意識に探してしまう。これが、都合の良い情報だけを信じてしまう根本的な理由である。
インターネット検索や生成AIはなぜ確証バイアスを強化するのか
検索エンジンや生成AIは、投資家の確証バイアスを無意識のうちに強化しやすい構造を持っている。
「株式市場は割高で怖い」と考えるとその情報しか集まらなくなってきてしまう。そもそも、検索ワードは、「米国株 割高 下落 いつ」というキーワードで検索していると、下落する、という情報以外は集まりにくくなってしまう。
そもそも検索サイトや生成AIは、ユーザーが入力した質問にしか答えない構造を持っている。そのため、自分とは異なる視点の情報は意識しない限り目に入りにくい。
フィルターバブルとは?SNSアルゴリズムと投資判断の歪み
フィルターバブルとは、インターネットやSNSのアルゴリズムによって、自分の好みや考え方に合う情報だけが優先的に表示され、異なる意見や視点が見えなくなる状態を指す。
パーソナライゼーションという名のフィルタリングにより自分の意見や好みに合致する情報ばかりを提示されてしまうと、自分と異なる意見や好み以外の情報をインターネットで見ることができなくなる。
SNSによるバンドワゴン効果が確証バイアスを加速
バンドワゴン効果とは、「多くの人が支持しているものは正しいはずだ」と感じてしまう心理傾向を指す。投資においては、「みんなが買っている」「多くの投資家が注目している」という情報そのものが、判断材料として過大評価されやすい。
SNSは、このバンドワゴン効果を極端に強化する構造を持っている。いいね数、リポスト数、再生回数といった数値は、「その意見がどれだけ広く支持されているか」を可視化する指標として機能する。すると人は、その内容の正しさを吟味する前に、「これだけ多くの人が賛同しているなら正しいのではないか」と感じてしまう。
投資で確証バイアスを避ける2つの実践的対策
確証バイアスを完全になくすことはできない。重要なのは、「自分も影響を受けている」という前提に立つことだ。その上で2つの対策が考えられる。
数字で判断する
確証バイアスと付き合うためには、定量的な数字と付き合うことが重要である。例えば、株価はPERを元に判断されていることが多い。つまり、
・ 競合企業と比べてPERがどのくらいの水準なのか?
・ または、株式指数の平均PERと比べてどうなのか?
・ その企業の過去のPERと比べてみてどうなのか?
といった、数字の情報を合わせてインプットすることが重要になる。
数字の情報を見るときも確証バイアスの影響を受けるが、感情的な意見よりは冷静な判断材料になりやすい。
反証条件を探す
これはウェイソン選択課題からのインプットになるが「この投資判断が間違いだと判明するのは、◯◯が起きたときである」ということを考えることになる。
例えば、AI企業への投資がバブルではないという立場を取るなら、その仮説が崩れる条件を先に考える必要がある。その一つが、「AIと本質的な関係のない企業が、事業実態を変えずにAIという言葉を前面に出すだけで株価が上昇する現象が、広範に観測されるかどうか」である。もし社名変更やIR表現の変更だけで評価が急変する企業が多数出現するなら、AIは実体ではなくラベルとして消費され始めている可能性がある。これは、AI投資がバブルであるという仮説を支持する、重要な反証条件になり得る。
Nvidiaの株価だけを見ていると確証バイアスの罠にかかる可能性が高い。つまり、確証バイアスに陥らないためには、常に反証条件を探すということだ。具体的な反証のやり方については以下の記事を参考にしてほしい。
