アノマリー投資とは?市場アノマリーの例と信頼性と再現性をデータで検証

2025年12月31日

アノマリー投資は、ファイナンスの理論では説明できないが、経験的に観測できるマーケットの周期性を使ってアクティブ投資 (自己裁量投資) していく戦略だ。特に米国のS&P 500などでは研究が進んでおり、様々なアノマリーが言われている。

最も有名なアノマリーは、セルインメイ(Sell in May)であろう。これは6月以降、株価が下落することを受けてできた市場の格言である。これは、近年のs&p 500のデータを見ると明確に否定されている。

また、1月の相場観がその年の株式の先行指標となるジャニアリーバロメーター (January Barometer)というアノマリーもある。これについても、近年のs&p 500のデータを見ると明確に否定されており、これに似たようなサンタクロースラリー、つまり、年末年始は株価が上がるということも、否定されている。

このことから、アノマリーはオカルト、怪しい投資理論ともいえる。問題を難しくしているのは、証明されているアノマリーもあることだ。例えば、大統領選挙サイクルと株式市場の関係性だ。また、9月が弱いといった年間の月ごとのパフォーマンスも明確な傾向があり、これらのアノマリーは投資判断に使える

それでは信用できないアノマリーはどのように見分けるか?それは以下の2つのポイントだ。
その1: 過去には成立していたが、株式市場を取り巻く環境(例えば、インターネットトレードの普及)が変わり、成立しなくなったものアノマリー。前述で言うとセルイインメイ。
その2: 非常に短い短期間の値動きを予測しており、他の市場環境に大きく左右されるもの。そもそも周期性ができにくいアノマリー。前述で言うと、サンタクロースラリー。

いずれにしてもアノマリーは、ネットで見たからのように鵜呑みにせずに、
検証方法1: 何でそのアノマリーが人間の行動パターン上、成立しているかを考える。
検証方法2: そのアノマリーについて、データを使って立証できるかを検証する
を徹底するのが基本となるだろう。

それではよりこのアノマリー投資を深く解説していく。

アノマリーはオカルトではなく信頼できる理由

アノマリーが信頼できる理由は、その根底にある考え方「歴史は繰り返す」という力強い原理だ。

相場は人間の心理によって動き、その心理パターンは時代が変わっても大きく変化しない。欲望や恐怖、群集行動といった本質的な反応が、季節性や曜日効果、イベント前後の値動きといったアノマリーを生み出す。

過去に繰り返し現れた傾向は、未来にも一定の確率で再現されるという前提に立つのがアノマリー投資だ。。つまり、オカルトではなく、心理面に根拠があるアプローチ方法と言える。

成立しなくなったアノマリー:セルインメイを解説する

セルインメイ、5月に売れ!は、実はアノマリーの1部の部分だけを紹介したものである。フルセンテンスは、“Sell in May and go away. Don’t come back until St. Leger Day.” であり、「5月に株を売り、毎年9月第2土曜日のセントレジャー・デーまでに市場へ戻るべきだ」という意味である。

このアノマリーは、5月に売れはデータ的には近年は再現してないが、9月中盤に戻れはデータ的に再現している。

検証方法1: 何でそのアノマリーが成立しているかを考える

セルインメイのコンセプトは、夏場の弱気相場を避けるということだ。夏場は昔からバカンスシーズンで株式トレードどころではない。また、政府や企業の活動も弱くなり、市場の流動性が低くなる。

その為、8月に何かが起きると市場の暴落が起こりやすい、荒れやすい相場である。この夏場の時期の混乱を避けるというロジックは正しい。

ただし、S&P500指数の構造変化があり。指数の中心はテック企業となった。これらの企業の第2四半期決算、つまり、7月の決算発表シーズンに株価が大きく動くように指数が動くようになった。そして、テック企業の業績はドットコムバブル崩壊以降、常に伸びてきたので、5月に売ってしまうと7月というサマーラリー局面を逃すことになる。

検証方法2: そのアノマリーについて、データを使って立証できるかを検証する

データを見ると、格言の後半にある「9月中旬に株式市場に戻るべき」という部分は現代の市場で機能し続けている。9月が弱いというトレンドは過去も今も変わってない。

つまり、この構造的変化を受けて「セルインジュライ=7月に売れ」が、近年版のアノマリーと言える。この話のデータ的な証明は、以下の「S&P 500の月別周期性:アノマリーを使って市場を読む」を参照してほしい。

まとめ|アノマリーは万能ではないが、有益な判断材料である

アノマリーは、相場の傾向を読み解くうえで有益なヒントを与えてくれるが、決して万能な投資法ではない。株価が最も強く影響を受けるのは、直近で発生する経済イベントや政策変更であり、過去の季節性が常にそのまま機能するとは限らない。

例えば、2025年には関税ショックによって4月に大きな下落が起きた。その反動として、例年は弱くなりやすい9月が好調となり、「9月は弱い」というアノマリーはこの年に限って成立しなかった。なお、9月が上昇した年は年間で株価が上昇するというアノマリーもある。

重要なのは、アノマリーを未来を保証する法則として扱わないことである。市場環境や金融政策が変化すれば、その効果が一時的に弱まることもある。だからこそ、アノマリーは「使う・使わない」を二択で考えるのではなく、複数の判断材料の一つとして位置づける投資姿勢が現実的だろう。

なお、アノマリー投資はアクティブ投資の一手法に過ぎない。タイミング投資、テーマ投資、イベント投資などを含めた全体像を体系的に理解したい場合は、アクティブ投資とは?主要戦略を体系化して学ぶ完全ガイドをあわせて参照してほしい。

アノマリーは魔法の法則ではない。しかし、構造を理解したうえで使えば、投資判断の精度を高める有効な補助線になり得る。