AI相場がバブルかどうかを判断する際、多くの議論は「生成AIによって生産性は向上するのか」という技術評価に集中しがちだ。
投資という意味では、AI生成技術がすごいことと、AI相場がバブルではないことは別問題である。過去のドットコムバブルでも、インターネット技術そのものは本物であった。
バブル判断で本当に重要なのは、AI相場を「期待」ではなく「反証条件」から冷静に見極めることである。
本記事では、人が無意識に正しさを確認する情報だけを集めてしまう確証バイアスに注目し、心理学で知られるウェイソン選択課題の考え方を用いて、AI相場がバブルかどうかを「反証」という視点から判定する思考法を整理する。
投資判断を歪める確証バイアスとは何か
確証バイアスとは、自分の考えを支持する情報ばかりを集め、反対意見や不都合な情報を無意識に避けてしまう心理傾向を指す。
AI相場を信じ始めた投資家は、生成AIの可能性として、
・性能向上
・市場規模の拡大
・大手企業の参入
といった「正しさを確認する情報」ばかりを集めやすくなる。これは検証しているつもりでも、実際には検証になっていない。
ウェイソン選択課題とは何か|人はなぜ誤った検証をしてしまうのか
ウェイソン選択課題とは、以下のようなクイズである。
机の上には、
A、B、4、7
と書かれたカードが並んでいる。
「もしカードの片面がAなら、裏面は4である」これを証明してほしい。
なお、ルールとして
A) めくる必要がないカードをめくるか
B) めくる必要があるカードをめくらないか
は、クイズに失敗になる。
多くの人は、Aと4を選ぶ。しかし間違いだ。
解答は
Aのカード:めくるべき → 裏面が4でないならば、仮説と矛盾する。
Bのカード:めくらなくてよい → Bについては聞かれていないため、裏面に何がかかれていても関係ない。
4のカード:めくらなくてよい → 裏面が何であろうとも仮説の正否には関係ない。
7のカード:めくるべき(反証情報) → 裏面がAだったら、仮説と矛盾する。
それでも人は、仮説を肯定してくれそうなAと4を選んでしまう。これが、確証バイアスの典型例である。本来見るべきなのは、7のカードにあたる反証情報だが、そこを見つけることは非常に難しい。
ウェイソン選択課題が示す「反証を見る」という考え方
ウェイソン選択課題の本質は明確だ。検証とは、正しさを集めることではない。間違いになる条件を探すことである。
4のカードを見る行為は安心材料に過ぎない。本当に重要なのは、仮説を否定しうる7のカード=反証情報を見ることだ。この考え方は、そのまま投資判断に応用できる。
AI相場はバブルかどうかの議論で「AIによる生産性向上」は関係あるのか?
AIがバブルかどうかを判断する際に必要なのは、「生成AIがすごい理由」ではない。
「AI相場が間違っているとすれば、どんな現象が起きるはずか」という反証条件を考えることが重要になる。反対意見を集めることと、反証を探すことは違う。反証とは、前提が崩れる観測可能な条件である。
反証を探さなくてよい領域
実は多くの人が検証しようとしていること自体は、正しいと言える。ドットコムバブルもインターネットによる生産性革命は本当であったわけだ。
| 観点 | ドットコムバブルの事実 | Aバブルの事実 |
|---|---|---|
| 技術の実体(反証を探さなくても良い) | インターネットによる生産性革命(ニューエコノミー)は本物 | AI(生成AI)による生産性革命は本物 |
過去バブルとAIバブルの比較表(反証条件視点)
バブルの特徴を見て、相場の間違いを示す材料を見つけるというのが、バブルかどうかを見分けるコツとなる。
| 観点 | ドットコムバブルの事実 | AIバブルの反証ポイント |
|---|---|---|
| バブルの本質 | 将来の期待感だけで、実需予測が巨大になった(過剰設備) | 期待が過剰に実需を先行していないか? |
| 模倣行動があるか? | 企業名に「.com」を付けるだけで株価上昇 | AIと本質的に無関係な企業がAI銘柄化していないか? |
| 収益モデル | 十分に説明されていなかった。 | AIでユーザーに費用を回収するだけ課金をできる見通しがあるのか? |
| 株主への説明方針 | 収益ではなく、ページビュー・会員数だけを強調 | 収益ではなく、モデル性能(パラメーター数)だけを強調してないか? |
| 理論の飛躍が起きていないか? | 「ネットは世界を変える」が免罪符に | 「国家戦略」が免罪符になっていないか? |
| 投資家(投資評論家)が冷静さを失った解説をしてないか? | ビジネス将来性は株価で判断されると考えた | 学習規模=収益力だと短絡 |
相場全体を見ないとバブルかどうかはわからない
インターネットバブル以前から、マグニフィセント7銘柄のMicrosoft、Apple、Amazon、NVIDIAの4社は存在していた。Alphabet(旧Google)が上場したのは、2004年8月19日とようやくドットコムバブルの底を抜けきったころで、市場は、インターネットバブルの後遺症に悩んでいた時期である。
このような企業を見ても、バブルか、バブルではないかわからないだろう。このような企業は、NVIDIAを除いて、当時から非常に輝いていた。よって、消えた企業、これが、バブルの実態であり、そのためにも相場全体を見ていかないとバブルかどうかはわからない。
そのため、相場全体を見ながら反証を探していくことが重要である。
まとめ|AIバブルはウェイソン選択課題で見抜ける
ウェイソン選択課題が教えてくれるのは、人は放っておくと反証を見ない、という事実だ。
相場の判断の正しさを集めるのではなく、
相場の判断の間違いを見つけに行くこと。
これこそが、今のAI相場がバブルかどうかを判定するための、最も合理的な思考法である。