投資情報が多すぎて不安になる理由|判断できなくなる心理構造

これからさらに上昇する」という情報と、「今逃げなければ暴落に巻き込まれる」という情報が同時に流れてきて、何を信じればよいのかわからなくなる。
投資をしている人の多くが、一度はこのように感じた経験があるだろう。

結論から言えば、投資情報が多すぎて不安になるのは、知識が足りないからではなく、情報を集めすぎた結果として判断軸を見失っているからである。

投資情報が多いこと自体が問題なのではない。問題は、情報が過剰になることで、人はかえって判断力を失うという点を理解しないまま行動してしまうことである。

投資情報が多すぎると不安になる理由

情報不足ではなく情報過多が不安を生む

投資における不安は、情報が足りないから生じると思われがちである。しかし実際には、ある程度知識を身につけた後に不安が強まるケースの方が多い。

情報が増えるほど、判断に必要な比較対象や選択肢が増え、「本当にこれで良いのか」という迷いが生じるからである。情報不足は調べれば解消できるが、情報過多は判断基準そのものを混乱させる。これが情報過多の本質である。

情報量そのものが爆発的に増えている現代

インターネット、特にSNSの普及により、投資情報の供給量は爆発的に増えた。かつては新聞やテレビの経済ニュースが主な情報源であったが、現在ではオンライン証券会社が高度な分析情報を提供し、YouTubeでは個人投資家の意見が語られ、SNSでは爆益報告が日常的に流れている。

そして、一番大きな問題は、特にSNS上で「極端で整理されていない情報」が同時に押し寄せてくる点にある。

SNSの投資情報はなぜ極端になるのか

アテンションエコノミーが極論を拡散させる

SNS時代の投資情報の最大の特徴は、「正反対の極論が同時に存在し、しかも目立つ形で、断片的に拡散される」点にある。つまり、ある投稿では「今すぐ買うべきだ」と断言され、別の投稿では「今は絶対に買ってはいけない」と警告される。この二つは論理的には両立しないが、SNS上では同じ強さでタイムラインに流れてくる。

その背景にあるのが、SNSがアテンションエコノミー1として設計されている点である。SNSでは、意見の論理性よりも「注目を集めるかどうか」が拡散力を決める。穏健で前提条件付きの意見よりも、強い言葉で断言する極論の方が、いいねやリポストを集めやすい。

注目される情報は全く違う論調

この構造の中では、「上がるか下がるか」「買いか売りか」といった二項対立の主張が増殖する。さらに、「とにかくホールドしていれば問題ない」といった別種の極論も幅を利かせる。

さらに、これらの極論が必ずしも誤っているわけではない点である。前提条件や時間軸が異なれば、どちらの主張も部分的には正しい場合がある。しかしSNSでは、その前提が省略されたまま「結論だけ」が流通するため、受け手は整合的に判断することができなくなる。

結果として投資家は「何も肯定できないが何も否定できない」という状態に陥る。判断できない状態が続くと、不安は増幅し、さらに情報を探しにいく。この循環が、投資情報を見れば見るほど不安になる理由である。

投資判断を迷わせる心理バイアス

こうした状況は、心理学的にも説明できる。

選択のパラドックス(The Paradox of Choice)

選択のパラドックス2とは、選択肢が増えるほど自由度が高まり満足度も上がるはずなのに、実際には判断が難しくなり、不安や後悔が増えてしまう現象である。心理学者バリー・シュワルツが提唱した概念で、人は選択肢が多いほど比較コストや失敗の可能性を強く意識する。

その結果、決断を先延ばしにしたり、選択後の満足度が下がったりする傾向が確認されている。

利用可能性ヒューリスティック

利用可能性ヒューリスティックとは、人が判断を行う際、思い出しやすい情報や頻繁に目にする情報を、実際以上に重要だと評価してしまう心理的な偏りである。投資の世界では、SNSで何度も見かける銘柄や、直近で話題になったニュースが過大評価されやすい。

この結果、本来は確率や長期的な前提で判断すべき投資行動が、目立つ情報に引きずられ、不安定な意思決定につながる。

確証バイアス

確証バイアスとは、自分の考えを支持する情報だけを集め、反対する情報を無意識に無視してしまう心理的な偏りである。SNSのパーソナライゼーションにより、有利な情報ばかりが目に入り、リスク情報が軽視されやすくなる。

この状態が続くと、判断は客観性を失い、極端な意見や陰謀論的な思考に傾きやすくなる。

まとめ:投資不安を減らすために情報を減らす

情報過多による投資不安を解消する方法は、2つある。以下の、
・ 一次情報(加工されていない事実の情報)のみに集中することで情報を減らす
・ PERなどの数値で測れる定量的な情報のみに注力する
ということだ。

具体的に言えば、
・ その会社のIRサイトの情報のみを深く見てみる
・ オンライン証券会社提供するスクリーニングツールなどでPERなどで同業他社と比較してみる
などが挙げられる。

永遠にインターネットやSNSの中で「誰かの正解」を探し続ける行為は、投資不安を深めるだけではないだろうか。なお、不安や悩みを体系的に整理したい人は、投資の不安や悩みを整理したページを参照してほしい。

  1. Attention economy - Wikipedia ↩︎
  2. The Paradox of Choice - Wikipedia ↩︎

-投資の不安や悩み