インデックス投資

JEPI - 値上がりも狙った高配当ETF

2024年8月23日

JEPIという米国ETFが人気になったのは2022年の米国株の下落場面。JEPIはS&P 500を超えり利回りを生み出した。その後も、姉妹ETFとも言えるJEPQと共に継続的な人気を誇っている。

その理由は、
・カバードコール戦略による高配当の実現(過去1年平均では7.2%
・値上がりの追求(過去1年では12.7%)1
・経費率は僅か0.35%
とまさに良いところ取りの戦略だ。

JEPIは、米国上場のETF純資産ランキングで50位前後の位置にいる。50位と聞くと大したことないと感じるかもしれないが、このランキングにはS&P 500連動ETFのSPYや全米株式ETFのVTI、ナスダック100連動ETFのQQQなどのアメリカの超大型ファンドを含んだ順位である。

JEPIを純資産で言えば約5兆円(145円換算:34.38ビリオンドル)。日本で最も純資産が大きい投資信託「eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 」と同じ規模である。この記事では、JEPIは本当に良いところ取りなのか?をS&P 500連動ETFであるSPYとの比較で考えていきたい。

JEPIとは?

JEPIの運用方針は以下のように明示されている2

米国の大型株とオプションの売却を組み合わせたポートフォリオからインカムを獲得し、株式の配当金とオプションプレミアムを原資として毎月分配を目指します(A)。

独自のリサーチプロセスによって分散された低ボラティリティの株式ポートフォリオを構築します。このリサーチに基づいて株価の割高・割安を判断し、リスク・リターン特性の向上を目指します(B)。

毎月のインカムの分配に加えて、S&P500指数よりもボラティリティを抑えながら同指数の値上がり益の部分的な恩恵を享受することを狙った運用を行います(C)。

また、Yahoo! Financeには以下のように記載されている3

(1)ファンドの主要ベンチマークであるスタンダード&プアーズ500トータルリターン指数(S&P500指数)に含まれる株式を主体としたアクティブ運用の株式ポートフォリオを構築し、(2)株式連動債(ELN)を通じてS&P500指数へのエクスポージャーを持つコールオプションを販売することにより、この目的を達成しようとしています。

これを総合すると
タコ足配当は意図してない:原資産の取崩しを行うような分配は行わず、株式の配当金とカバードコール戦略によるオプション販売収益で分配金を毎月出す(過分な分配金を出す意図はない)
アクティブ運用:ポートフォリオはS&P 500に含まれるような大型株を担当者が目利きして選ぶアクティブ運用を行う(アクティブファンドであるが経費率は0.35%と低い)
値上がりの追求:株価の上下(特に暴落)を抑えながらもS&P500までとはいかないが値上がりも狙う
という運用方針が浮かび上がる。

JEPIのパフォーマンス

2022年の米国株下落局面でS&P 500連動ファンドを大幅に凌駕

JEPIが人気化したのは2022年のS&P 500の下落局面である。2022年のパフォーマンス比較は以下だ4。SPYが18%強下落したのに対して、JEPIは3.5%程度しか下落してない。この年は米国国債(10年債で-17.8%5)下落している。下落相場では、アクティブ運用+カバードコール戦略がうまく働く。まさにJEPIの戦略が際立った年であった。

2022年のパフォーマンスJEPISPY
戦略米国大型株カバードコールETFS&P 500 連動 ETF
年間配当込みパフォーマンス-3.52% -18.17%
最大下落率 -12.99% -23.93%

2023年のパフォーマンスは S&P 500

ただしこれを2023年のS&P 500上昇局面になるとパフォーマンスは一気に逆転する。

2023年のパフォーマンスJEPISPY
年間配当込みパフォーマンス 9.81% 26.19%
最大下落率 -4.11%  -8.32%

S&P 500のパフォーマンスが良いが

これをJEPIがスタートした翌月の2020年6月から比べたパフォーマンスは以下である6

JEPIスタート以来のパフォーマンスJEPISPY
年間平均配当込みパフォーマンス 11.98% 17.08%
最大下落率-12.99% -23.93%

分配金の状況

分配金は安定して7%以上の配布が実現している7

JEPIはお勧めか?

JEPIは、有言実行のパフォーマンスを出しているファンドである。それは、
・継続的な毎月高配当を実現する。
・ボラティリティ(=最大下落率)を抑える。
・S&P 500とはいかなくても、ある程度の値上がりを目指す
実際にそうなっている。つまり、欲張りな退職者やFIRE生活者向けのファンドともいえる。

その一方で、長期的に下落相場も含めて、自分自身でうまく取崩しが管理できるというのであれば、JEPIは必要ないということになる。なぜならSPYのほうが投資パフォーマンスが良いからだ。ただし、収入がない退職者の生活、もしくは、FIRE生活でどれほど冷静に取崩しを管理できるかは疑問だ。

つまり、資産の一部をJEPIに投資して、基礎的な生活費を分配金で受け取るというアイディア自体は悪くないように思える。

  1. 2024年8月23日閲覧 JPMorgan Equity Premium Income ETF (JEPI) Stock Price, News, Quote & History - Yahoo Finance ↩︎
  2. JPモルガン・米国株式・プレミアム・インカムETF | J.P.モルガン・アセット・マネジメント (jpmorgan.com) ↩︎
  3. JPMorgan Equity Premium Income ETF (JEPI) Company Profile & Facts - Yahoo FinanceのETF Summary をGoogle翻訳 ↩︎
  4. https://www.portfoliovisualizer.com/fund-performance?s=y&sl=3RKA8OIKZtDFqpnnBg52Ep ↩︎
  5. pages.stern.nyu.edu/~adamodar/New_Home_Page/datafile/histretSP.html ↩︎
  6. Fund Performance (portfoliovisualizer.com) ↩︎
  7. 2024年8月23日閲覧 JPMorgan Equity Premium Income ETF (JEPI) Stock Dividend Yield Grade & History (seekingalpha.com) ↩︎

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