「この株主優待のお食事券は明らかに得ではないか」と、株主優待を見ていると強いお得感を覚える一方で、
「うまい話過ぎて、何か騙されている気がする」と不安になることがある。
もしあなたがこの感覚を持っているのであれば、投資家として成功する可能性が高いと言える。
株主優待が強く魅力的に見える背景には、投資対象そのものの良し悪しとは直接関係なく、人間の心理構造そのものが関係している。その中心にあるのが、いわゆる「おまけ効果」である。
株主優待はなぜ過剰に「お得」に見えるのか
ここでは、2つの心理効果が株主優待をよりお得に見せている理由を解説する。
心理効果1:フレーミング効果
株主優待は、配当金のように現金ではなく、食事券や商品券、割引サービスといった実物で提供されることが多い。この形式そのものが、私たちの認知に強く作用する。
ここで重要になるのが、フレーミング効果である。フレーミング効果とは、同じ価値であっても「どのように提示されるか」によって、人の判断が大きく変わる心理現象を指す。
たとえば、
「配当として年間4,000円もらえる」
という表現よりも、
「配当として年間2,000円、そして、個人株主の皆様には特別に食事券2,000円分を提供する」
という表現の方が、多くの人にとって魅力的に映る。
ただし、企業の費用負担は4000円である直感的な理解は変わっていない。ここに漠然とした不安や、騙されているのではないかという感覚が生まれる。
2つの心理効果がおまけをより良く見せている。
心理効果2:メンタルアカウンティング
もう一つ重要なのが、メンタルアカウンティング(心の会計)である。人はお金を合理的に一元管理しているようで、実際には用途や性質ごとに別々の「心の箱」に分けて扱っている。
株主優待投資では、
・配当金 → 投資で得た収入で再投資に回すべき
・優待でもらう商品や割引 → ご褒美・生活費削減の箱
というように、同じお金から生まれた価値であるにもかかわらず、無意識のうちに別物として処理してしまう。
その結果「優待はタダでもらえたご褒美」という感覚が生まれる。
心理効果1と2にで、おまけ効果が生む「価値の転移」
フレーミング効果とメンタルアカウンティングが組み合わさることで、「おまけ効果」はさらに強まる。おまけ効果の本質は、本体とは無関係な付加要素の価値が、全体評価に転移してしまうことにある。
株主優待が魅力的だと、
「この企業は株主思いだ」
「良い会社に違いない」
「投資としても優れているはずだ」
といった評価が連鎖的に生まれる。
しかし、株主優待の充実度と、企業の収益性や成長性は本来、直接結びつくものではない。業績があまりよくない企業が、株価対策として優待に力を入れるケースもある。
株式投資の最初のステップとしては良い
その一方で、株主優待は、投資に興味を持つ最初のステップとしては非常に良い入り口である。株価や決算といった難しい数字よりも、「実際に使える」「生活で実感できる」優待があることで、投資を自分ごととして捉えやすくなるからだ。
いきなりリターンや理論を理解しなくても、投資対象の銘柄を選定できるという意味では有効だ。私も最初に真剣に投資を考えた企業は、優待株投資がきっかけとなったベネフィット・ワン(2412)である。
まとめ
株主優待がすごくお得に見えるのは、フレーミング効果とメンタルアカウンティングが組み合わさった「おまけ効果」が強く働いているからである。この心理を理解すれば、不安の正体も明確になる。
株主優待は主役ではない。本体はあくまで企業価値であり、優待は補助的な楽しみにすぎない。不安を感じたときこそ、一度立ち止まり、判断軸をおまけではなく本体、つまり、企業価値への期待値に戻すことが重要である。
そのために有効な問いは非常にシンプルだ。
「この企業は、株主優待がなくても保有したいだろうか」
その姿勢こそが、長期的に後悔しない投資につながる。
株主優待投資の考え方や注意点を体系的に知りたい方は、こちらの記事を参考にしてほしい。また、株主優待と同様に「株主還元」を重視する投資手法として、代表的な手法である高配当投資については、以下の記事で詳しく解説している。
アクティブ投資、つまり、銘柄選定について体系的に知りたい方は以下の記事も参考にしてほしい。
