S&P500のアノマリー

S&P500のアノマリー5月編(2025年度版)

2025年4月28日

昨今、株式市場はトランプ大統領に振り回されている。関税に関するやFRB議長解任騒ぎなどでそのたびに株式市場は下落と上昇を繰返している。

そもそも、S&P 500の5月は歴史的には強い月なのか?6月から弱気相場が始まるというアノマリー、セルインメイ=5月に売れは本当なのであろうか?を研究していきたい。

S&P500の5月の月間パフォーマンスは?

S&P500における5月の平均的な月間パフォーマンス

5月のS&P500の月間平均リターンは過去10年平均、20年平均、30年平均、40年平均すべての期間においてプラスリターンを記録している。

過去10年間の5月の平均リターンは+0.9%S&P500の平均的なパフォーマンスと言える。月間0.9%のリターンが12か月続けば(年率換算すれば)、リターンは約11.4%となり、実際のS&P500の過去10年の年間プライスリターン(約11%)と整合するからだ。

月別順を見ても年間で真ん中ぐらい、つまり、平均パフォーマンスな月と言える。

期間月間平均リターン月別順位
過去10年0.9%6位
過去20年0.4%7位
過去30年0.6%7位
過去40年1.3%5位

S&P500における5月の圧倒的な勝率(上昇確率)=安定性

さらに「勝率」- つまりその月がプラスリターンだった確率 - をみると、5月は非常に安定した月であることがわかる。特に過去10年間の勝率は90%に達しており、10回のうち9回は5月に株価が上昇している計算だ。これは、月間パフォーマンスが良いとされる7月(100%)、11月(90%)と並ぶパフォーマンスである。

唯一、マイナスだったのは2019年のみ。この年の下落は、トランプ大統領の関税に関する強硬発言によって市場の不確実性が一気に高まったことが主な要因の異常値であった1

このトレンドは長期的に同じで、過去20年、30年でも3位、過去40年では勝率1位である。

期間上昇確率月別順位
過去10年90%2位
過去20年75%3位
過去30年70%3位
過去40年78%1位

S&P500における5月を他月と比べてみる

5月は、S&P500において過去10年間では6番目のパフォーマンスを記録している。さらに、過去20年から過去40年という長期スパンで見ても、5位から7位と中位に位置している。

期間5月は何番目?ベスト月ワースト月
過去10年6位(0.9%)11月(4.1%)9月(-2.0%)
過去20年7位(0.4%)7月(2.5%)9月(-0.6%)
過去30年7位(0.6%)11月(2.6%)9月(-0.7%)
過去40年5位(1.3%)11月(1.9%)9月(-1.0%)

この結果から分かるのは、5月は「特別に強い月」でも「特別に弱い月」でもない。年間を通じて安定して平均的なパフォーマンスを示す月であるという点だ。

5月のリターン分布

過去40年の5月のリターンの出現をプロットしたのは以下の図である。この図では、リターンの出現回数を0.5%刻みにカウントして棒グラフ化したものである。

・平均リターンは1.3%で、プラスリターンになったのは31年(78%:水色の部分)
・リターンが0%から2.5%の区間に18年分(45%)が集中していることから安定してプラスリターンを出す月ともいえる。
-5%以上の大暴落になったのは3回(7.5%の確率)、+5%以上の大暴騰になったのは6回(15%の確率)
・正規分布を使うと「68.3%の確率で、-2.3%から4.8%のリターン」が得られる、または、「95.5%の確率で、-5.8%から8.3%のリターン」が得られるという分析が成立つ。

セルインメイ=5月に売れは本当か?

アノマリーにおいて「セルインメイ=5月に売れ」という格言は最も有名なもの1つである。

このセルインメイを長いバージョン紹介すると「Sell in May and go away. But remember come back in September. = 5月に売って9月に戻ってくるのを忘れるな」という格言になる。これは、5月末に株を売り、その後の夏場(6〜9月)の低調な相場を回避せよ、そして9月の末に買い戻せということ。歴史的に夏場の株式市場はリターンが低下しやすいアノマリーに由来する。

ここまでの解説で5月は平均的な月であったが、6月以降のS&P500は歴史的に下がるのであろうか?

S&P500の7月は強い

S&P 500の年間周期性:アノマリーを使って儲ける?でも解説しているが、実はS&P500の7月は強い。以前はそれほどでもなかったが、最近傾向がより鮮明になってきており、5月末に売るのではなく、7月末に売り9月末に戻ってくるのが一番効率が良いというのが最近のトレンドだ。

5月もアノマリーを知って楽しい米国株投資をしてほしい。

  1. 【米国株・国債・商品】S&P500種下落、月間で今年最大-国債急伸 - Bloomberg ↩︎

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