S&P500のアノマリー

S&P500のアノマリー7月編(2025年度版)

2025年4月29日

7月は11月とならびS&P500は強い月と言われている。俗にいうサマーラリーである。それでは、7月は歴史的にどのくらい強いのか?

S&P500: 7月の月間パフォーマンスは?

S&P500における7月は強い月

7月の月間リターンは最近の特に強くなってきた。特に過去10年平均ではその傾向がはっきりと表れる。

過去10年は米国株、つまり、米国企業が好調な時期であり、第2四半期の決算発表が行われる時期と重なる7月は、株価が上がりやすくなったといえる。また、夏休み前にこのような優良株を買っておきたい投資家心理もこれを加速している。

期間月間平均リターン月別順位
過去10年3.4%2位
過去20年2.5%1位
過去30年1.3%5位
過去40年1.4%3位

7月の月間パフォーマンスをS&P 500 の月別ベスト、ワーストパフォーマンスと比べてみる

7月は過去20年平均ではNo.1のパフォーマンスである。歴史的に強い月で月別パフォーマンスはベスト月に近い。

期間7月ベスト月ワースト月
過去10年3.4%(2位)11月(4.1%)9月(-2.0%)
過去20年2.5%(1位)7月(2.5%)9月(-0.6%)
過去30年1.3%(5位)11月(2.6%)9月(-0.7%)
過去40年1.4%(3位)11月(1.9%)9月(-1.0%)

S&P500における月の勝率 - 高い勝率

過去10年で7月の上昇率がマイナスになったことはない。これは6月末にS&P500のETFを買って7月末に売れば確実に勝てたということだ。ただし、これが過去30年、過去40年となると勝率が極端に悪くなっている。これは月別順位を見るとわかる。

期間勝率月別順位
過去10年100%1位
過去20年80%2位
過去30年63%7位
過去40年60%10位
2000年から2008年33%10位

この現象は、米国株、つまり、米国企業が良くなった2000年から2008年の9年間を取り出してみるとよくわかる。7月は業績発表もあるため、米国株が業績が悪いと株価は落ちる。その結果この9年間では、わずか3回しか勝利=月間パフォーマンスがプラスになってない。

これを歴史的に強いとされている月、4月、7月、11月と並べてみるとよくわかる。7月のパフォーマンスの悪さが際立つ。7月のパフォーマンスの強さは米国市場の強さと強く連動しているといえよう。

勝率月別順位パフォーマンス月別順位
4月56%6位1.5%1位
7月33%11位-1.4%9位
11月67%2位0.3%6位
2000年から2008年の9年間の平均パフォーマンス

S&P500: 7月の月別リターン分布

過去40年の7月の月別リターンの出現をプロットしたのは以下の図である。この図では、リターンの出現回数を0.5%刻みにカウントして棒グラフ化したもの(ヒストグラム)である。

  • 月間平均リターンは1.4%で、プラスリターンになったのは24年(60%:水色の部分)
  • 全体的にリターンはばらけている。
  • -5%以上の大幅下落になったのは2回(5%の確率)、その一方で+5%以上の大幅上昇になったのは6回(15%の確率)とすごくパフォーマンスが良かった回数は多い。
  • 正規分布を使うと「68.3%の確率で、-2.5%から5.4%のリターン」が得られる、または、「95.5%の確率で、-6.5%から9.3%のリターン」が得られるという分析が成立つ。

2025年7月のサマーラリー(夏相場)に期待する声が大きい理由

過去40年で月間5%以上、7月の相場が上がったことは6回ある。特に2000年代に入ってからの4回には明確な共通点があり「株価下落局面で、テック企業による好決算によって株価がリバウンドする」ということだ。

つまり、年の前半のパフォーマンスが悪くても7月は好決算を切欠に上昇したということになる。2025年は関税問題で市場が下落傾向にあるが、AIの利用拡大が進んでおり、7月に大きく上がる可能性を感じるということだ。

7月リターン (%)

前年末→6月末リターン (%)

6月リターン (%)

2022年9.1%-20.6%-8.4%
景気減速懸念が強まる中、マイクロソフト、アップルなどハイテク企業が想定以上に堅調な決算を発表。特に売上・利益のガイダンス引き上げがリスクオンを促進。
2020年5.5%-4.0%1.8%
コロナのパンデミック下でもGAFAM(Google, Apple, Facebook, Amazon、Microsoft)で称されるハイテク企業好決算を連発。特にリモートワーク需要でIT主導の業績回復が確認される。
2010年6.9%-7.6%-5.4%
企業収益が堅調に回復し、特にハイテク、消費財セクターで予想超過の決算発表が相次いだ。追加金融緩和(QE2)観測も重なり、株価押し上げ。
2009年7.4%1.8%0.0%
リーマンショック後初の本格回復決算期。ゴールドマン・サックス、アップルなどの予想を大幅に上回る決算が市場心理を大きく改善し、リスク選好回復。

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