「相場が下がっているのに、積立を続ける意味はあるのだろうか?」
積立投資を続けていると、必ず一度はこう思う瞬間が訪れる。
評価額は減り、毎月お金を入れているのに成果が見えない。SNSでは「暴落」「危険」「今は様子見」という言葉が並ぶ。
結論から言えば、積立投資は下落相場のほうが意味がある。これはドルコスト平均法という投資手法の特徴でもある。ただし、その意味を正しく理解していなければ、不安だけが増えてしまう。
ただし、その意味を正しく理解していなければ、積立投資は「理屈では正しいが、精神的につらい投資」になってしまう。本記事では、なぜ下落相場で不安になるのか、その本質を整理する。
なぜ下落相場で「積立投資は意味がない」と感じるのか
評価額が減ると人は合理的に判断できなくなる
人は「増えている時」より「減っている時」に、強い感情を抱く。評価額がマイナスになると、「間違ったことをしているのではないか」と考えてしまうのは自然だ。
プロスペクト理論が示す「損失への過剰反応」
これは、2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者の ダニエル・カーネマンらが提唱したプロスペクト理論によって説明できる。
プロスペクト理論では、人は利益よりも損失に対して強い心理的反応を示し、同じ金額であっても「得る喜び」より「失う苦痛」を大きく感じることが示されている。評価額が下がったときに強い不安や後悔を抱くのは、合理性の欠如ではなく、人間の認知構造そのものに起因する反応である。
積立投資における「含み損=失敗」ではない
積立投資は評価額で成否を判断する投資ではない
そもそも、積立投資は日々の評価額の増減を判断基準とする投資ではない。あらかじめ定めた金額に向けて長期間で、市場環境に左右されずに行う、資産形成である。評価額はあくまで、その過程の途中経過を数値化した指標にすぎない。
短期の価格変動と資産形成は別物である
それ自体が投資判断の正否を示すものではない。短期的な価格変動に一喜一憂することは、積立投資の本質から外れた見方だと言える。
価格が下落する局面があるからこそ、購入単価は平準化され、将来の回復局面で効果を発揮する。これがドルコスト平均法と呼ばれる投資理論の利点の一つと言える。一般に言われる「時間を味方にする」ということだ。
ドルコスト平均法: 下落相場でこそ積立投資が機能する仕組み
ドルコスト平均法とは、価格に関係なく一定額を買い続ける方法であり、価格が下がる局面では同じ金額でより多くの口数を購入できる。
下落相場が「仕込み期間」になる理由
下落相場では評価額が減るため不安を感じやすいが、実際には平均購入単価を下げる重要な期間でもある。将来、相場が回復したとき、下落局面で多く積み上げた口数がリターンを押し上げる。つまり、積立投資は上昇相場よりも、下落相場にこそ「投資効率が高まる局面」があり、長期視点では下落相場の方が意味を持つ投資行動だと言える。
下落相場でも積立投資は続けるべきか?
不安が強いのは投資初期だけ
下落相場で不安になるのは積立を初めて、1年から2年ほどのまだ複利の力を感じられていない人が中心だ。なぜなら、長期で積立投資を続けていくと、ドルコスト平均法のおかげで、やがて「含み益バリア」が形成される。
長期的には含み益バリアができる
含み益バリアとは、過去に積み上げた含み益がクッションとなり、多少の下落では評価額がマイナスに転じにくくなる状態を指す。
含み益バリアができると、相場の変動に対する心理的な耐性が高まり、短期的な下落で投資判断を誤りにくくなる。積立投資を継続する最大の効果は、リターンだけでなく、この構造的な安心感を得られる点にある。
まとめ|下落相場でも積立投資を続けるために大切なこと
下落相場で積立投資が不安になるのは、あなたの判断が弱いからではない。プロスペクト理論で証明された、人間の心理であり、自然な反応だ。そして、それは多くの場合、積立投資の複利の力を感じていない初期の段階で起こる。
その時こそ、積立投資の意味は「今、儲かっているかどうか」ではなく、将来に向けて正しい行動を続けているかにある。将来的には含み益バリアのおかげで、下落時こそ積立投資の合理性を実感できる段階に入る。
つまり、積立開始初期の下落相場でも積立を続けられるかどうか。それこそが、積立投資で最も重要な分かれ道だ。