投資情報に疲れる理由|不安と判断停止を生む4つの思考パターン

投資情報を集めれば集めるほど、なぜか疲れ、不安が強くなってしまう。その原因は、情報の質や量そのものではなく、情報過多の環境で人が陥りやすい「思考パターン」にある。

最近、投資情報を見ていて「疲れる」「不安になる」と感じているなら、次の4つの項目をチェックしてみてほしい。

☐ もっと正しい答えを探し続けてしまう
☐ すべて理解してからでないと動けない
☐ 多くの人の意見が正しいと感じる
☐ 情報収集=行動だと思っている

1つでも当てはまれば、投資情報に疲れやすい思考状態に入っている可能性が高い。2つ以上当てはまる場合、情報過多によって判断軸が揺らぎ、投資不安が慢性化しやすい状態である。

これらは性格や能力の問題ではない。情報があふれる環境では、誰もが自然に陥りやすい思考の癖である。

本記事では、これら4つの思考パターンについて、投資心理学的な視点から一つずつ整理していく。

投資情報で正解を探し続けて疲れる

投資に唯一の正解があると思い込む心理

投資情報に疲れる人ほど、「どこかに正解があるはずだ」と考えがちである。しかし、投資には市場環境・時間軸・目的によって異なる選択肢が存在し、また、将来の市場予測は誰にもできない1。過去データの分析も様々な軸で可能で、情報を良いようにも、悪いようにも解釈できる。

確証バイアスの起動

この思考は、確証バイアス(自分の考えや仮説を正しいと信じたいあまり、それを支持する情報だけを集め、反対する情報を無意識に無視してしまう心理的な偏り)を引き起こす。自分が思う唯一の正解に沿って情報を集めたいという心理的な欲求に負けてしまい、その情報ばかりを集める。

ただし、投資の意見は1つではないので、1つの正解に集約しない。その結果、ネット上で見つけた反対の意見を見て不安を強めてしまう。

選択のパラドックス

そして、このような正解を探す行為は、一時的に安心感をもたらすが、最終的には、結論には到達しない。なぜなら、情報が増えるほど「別の正解候補」が見つかるからである。

この状態は選択のパラドックス(選択肢が増えるほど自由度は高まるが、比較や後悔への不安が強まり、判断が難しくなり満足度が下がるという心理)2とも重なり、選択肢が増えることで判断が難しくなり、不安が慢性化していく。

すべて理解しないと動けない思考パターン

後悔回避バイアスが行動を止める

すべて理解してから投資すべきだ」という考えは、一見すると慎重で合理的に見える。

この思考の背景には、後悔回避バイアス(将来後悔したくないという心理から、失敗の可能性がある行動を避け、決断や行動を先延ばしにしてしまう心理的傾向)がある。失敗したくない、間違えたと思いたくないという心理が、行動そのものを止めてしまう。

しかし、実際には、人間がすべてを理解した状態で意思決定することは不可能である。

情報過多が後悔回避バイアスを増幅させる

情報が増えるほど、理解すべき項目も増える。その結果、「まだ足りない」「もう少し調べよう」という状態が続き、永遠に動けなくなる。行動しないことで心理的な責任から逃れようとする反応である。

他人の投資意見で安心しようとする思考パターン

バンドワゴン効果とは何か

投資情報に疲れているとき、人は自分の判断に自信を持てなくなる。その結果、SNSや掲示板で「多くの人が言っている意見」を探し、それに従おうとする。このとき強く働くのがバンドワゴン効果である。

バンドワゴン効果とは、多くの人が支持している意見や行動を「正しい」と感じ、深く考えずに同調してしまう心理的傾向である。少数派になる不安を避けるために起こる。

他人基準が不安を消さない理由

他人の意見に従っても、不安は消えない。なぜなら、その判断は自分の基準に基づいていないからである。

相場が逆に動いた瞬間、「あの人が言っていたから」という理由は無力になる。この状態は責任転嫁による一時的安心にすぎず、長期的には不安を増幅させる。

自己責任を誤解する思考パターン

投資は自己責任で」という言葉が氾濫している。これは事実であるが、だからといって自己責任を「自分が、情報収集に関して努力したら投資がうまくいく」と捉えるとそれは間違っている。

公正世界仮説という罠

積極的に投資情報を集めて投資の勉強をしていると「何かをしている」という感覚が得られる。これは「努力は必ず報われる」という公正世界仮説( just-world hypothesis)3という認知バイアスに基づいている。

この公正世界仮説に沿って考えると、行動しているわけであるから、投資情報を調べている以上は、投資で良い結果を得られて当然だということになるが、世界は予測可能ではない。つまり、調べたところで、株式市場の将来は予見できない。

情報収集はしたほうが良い。ただし、調べ続けることで、判断は先延ばしにされ、不安だけが蓄積される。そして、自分は努力が足りない、もしくは、株式投資は謎であるという形で不安が蓄積されていく。

まとめ:投資情報に疲れるのは情報不足ではなく情報過多が原因

投資情報に疲れてしまうのは、情報の質が悪いからでも、勉強が足りないからでもない。情報が過剰な環境の中で、人が陥りやすい思考パターンに引きずられているだけである。

正解を探し続け、すべてを理解しようとし、他人の意見で安心しようとし、情報収集が自己責任を果たす方法だと錯覚する。これらはいずれも、投資に真剣に向き合っている人ほど陥りやすい思考である。重要なのは、さらに情報を集めることではない。
何を考えないか
何を見ないか
というやらないことを決め、自分なりの判断軸を固定することである。

自分固有の判断基準を作る

以上を踏まえ、私自身の投資判断のスタンスを補足として述べておく。

XやYouTube上の投資情報における、エンターテイメント側面は非常に楽しんでいる。ただし、投資判断をする際に、自分の正解が正しいかを確認するためにSNSやインターネット上を検索することは避けている。オンライン証券会社のチャートや過去の決算情報を参考にして判断を下している。数字に基づいた一次情報を重視するやり方だ。

人の意見を参考にしていると、どれが正しいのかわからず迷子になる。早期に固有の判断基準を作るべきであろう。

また、投資情報そのものに不安を感じている場合は「投資情報は信じていいのか?投資不安の震源地、ニュース・SNSの正しい使い方」で、情報との距離の取り方を整理している。

投資の不安を減らす第一歩は、情報の取捨選択ではなく、人間の思考の傾向に気づくことだ。そして、1日でも早く自分で信じられる投資判断方針を確立することである。このような投資にまつわる不安は尽きることがない。体系的に整理したページを是非参考にしてほしい。

  1. 将来の市場予測はプロでも当たらない。詳しくは、著名アナリストのS&P500予想はなぜ当たらないのか?を参照してほしい。 ↩︎
  2. The Paradox of Choice - Wikipedia ↩︎
  3. Just-world fallacy - Wikipedia ↩︎

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