含み損でナンピンする理由|サンクコスト効果(埋没費用効果)

2026年1月4日

「ここで少し買い増して、平均取得単価を下げれば、含み損が早く解消するかもしれない」
「自分の分析結果では割安だと思ってエントリーした、そこからの下落はまさに買い場」

このように思って、保有銘柄の株価が下がったとき、延々とナンピン(下落した価格で株式を購入して、平均単価を下げる行為)してしまう投資家も多いだろう。

ナンピンはトレード手法としては合理的な側面もある一方で、多くの場合、冷静な判断ではなく心理的な反応として行われている。つまり、ナンピンを繰り返した結果、損失が拡大し、身動きが取れなくなる投資家は少なくない。

ただし、ナンピンしてしまうのは、人間の意思決定の心理構造上、非常に起きやすい行動だという点だ。

サンクコスト効果によってナンピンは合理的に見える

ナンピンは合理的な投資判断のように見える。下がった株価で購入し、平均取得単価を下げれば、少し戻るだけで含み益に転じられる。数学上も理屈が通っている。

だが、ここで見ているのは「価格」だけだ。本来問うべきなのは、「なぜ株価が下がったのか」「その理由は解消されたのか」という点である。下落理由を無視したナンピンは、判断ではなく希望に近い。そして、多くのナンピンが人間の心理的な側面から、合理的な判断なく促進される。

サンクコスト効果(ここまで耐えたからやめられない)

ナンピンの最大の原因が、サンクコスト効果(埋没費用効果)1だ。これは、すでに取り戻せない過去のコストに引きずられ、合理的な判断ができなくなる心理を指す。含み損が出ると、人は無意識に「ここまで下がるまで耐えた」「今さら売れない」と考える。しかし、過去にいくらで買ったかは、将来の株価とは無関係だ。

判断基準にすべきなのは「今から新規で買う価値があるか」だけである。ナンピンは、平均取得単価が下がることで「過去の判断を修正した」という錯覚を得られる効果がある。

つまり、平均取得単価を下げるためでなく、その価格で買いたい株であれば、買うべきである。しかし、これはナンピンとは言わない。ナンピンは、「値下がりして損している局面(=難)」を「平均化して平らにする(=平)」という難平が語源だ2

サンクコスト効果によるナンピンが投資成績を悪化させる理由

ナンピンの問題点は、下落理由が解消されていない場合でも、ポジションを増やしてしまう点にある。業績悪化や市場環境の変化といった本質的な問題は、買い増しでは消えない。

さらに、ナンピンによってポジションが大きくなると、次の判断はより歪む。損切りしたときのダメージが大きくなるため、撤退がさらに難しくなる。この悪循環により、ナンピンによって損失を悪化することがある。

ナンピンをやめるための考え方

過去(サンクコスト効果)ではなく将来(期待値)に目を向けるということだ。下落した株価であってもその株が有望であれば良い。

ただし、多くのナンピン局面では、悪い材料が出て下落しているため、ナンピンするのではなくて、損切りするのが正解となることを意識しておく必要がある。

ナンピンはサンクコスト効果だけでなく複合的な心理要素が関わっている

このようにナンピン買いは投資戦略ではなく、心理が作り出す投資行動の場合が多い。

ナンピンには、前述のように損失を確定させることに強い抵抗が発生するプロスペクト理論もかかわってくる。つまり、人間が本来持つ思考の癖や心理的な罠を体系的に理解することが重要である。投資判断を狂わせやすい代表的な心理については、投資心理学の観点から整理した以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてほしい。

1分簡易診断:ナンピン投資家判定

最後に、自分の行動パターンを3問の質問から確認してみよう。ナンピンをしてしまうか、それとも、現実から目を背けて塩漬けにしてしまうか?もしくは、正しいアクティブ投資家として損切りできるか?を判定してほしい。

Q1. 含み損が出た銘柄を見たとき、最も近い行動は?

A. 「今が安い、逆にチャンス」と考え、追加で買い増す
B. 「戻るまで待とう」と買ったことをなかったことにする
C. 事前ルールに従い、淡々と売却する

Q2. 利益が出ている銘柄があるとき、どうすることが多い?

A. 少しでも利益が出たら、生活費や消費のためにすぐに売る
B. 目標価格までは持つが、途中で不安になる
C. シナリオが崩れるまで保有を続ける

Q3. 損切りをするときの正直な気持ちは?

A. 「ここで切って、再エントリーして取り返したい」と思う
B. 「損を確定させたくない」と強く感じる
C. 「確率上必要な行為」と割り切れる

診断結果

Aが多かったあなた:ナンピントレーダー

診断結果:含み損を「チャンス」と捉えやすい
・損失回避+一発逆転志向が強め
・相場環境によっては傷が深くなりやすい

お勧め記事:この記事をもう一度読むこと

Bが多かったあなた:塩漬けトレーダー

診断結果:損失を確定させることに強い抵抗がある
・「待てば戻る」が判断の軸になりやすい
・利小損大になりやすい典型パターンでサンクコスト効果だけでなくプロスペクト理論も併せて知ることがお勧め

お勧め記事プロスペクト理論が示す「損が痛い」投資心理

Cが多かったあなた:合理的な投資家

診断結果:投資感情と投資行動を切り離す意識がある準備ができた投資家
・ルールベースで判断できている自己裁量(アクティブ投資)が向いているタイプ
・「相場急変時にそのメンタルを保持できるように注意

お勧め記事アクティブ投資とは?主要戦略を体系化して学ぶ完全ガイド

  1. 英語では、Sunk Cost Fallacyという。このFallacyは、誤謬(ごびゅう)、誤った思い込み、論理的な誤りを表す英語で「埋没費用に基づく誤った判断」となる。 ↩︎
  2. 難平 - Wikipedia ↩︎