「含み益があっても不安が消えない」
「株価を見るたびに含み益がなくなるのではないかと不安になる」
このような悩みを多くの投資家が抱えている。
その一方で、長期で投資を続けている投資家においては、「株価の変動が気にならない」という状態に至ることがある。これは、含み益がある水準を超えた瞬間から、相場の上下に関わらず、大きな損失を被っていないと容易に認識できる状態に達するからだ。この心理的な境界線を、本記事では「含み益バリア」と呼ぶ。
含み益バリアとは、含み益が十分にあることで相場下落に対する不安が軽減する心理的安全域である。つまり、含み益バリアは投資成績そのものではなく、投資家の認知と心理の変化に由来する。
含み益バリアとは何か?
含み益が生む心理的な安全域
含み益がほとんどない状態では、価格が少し下落しただけで「損失」に意識が集中する。このとき投資家は、損を避けたいという感情に強く支配される。しかし、十分な含み益が形成されると、多少の下落があっても「まだ利益が残っている」という認識が働く。
この余白が心理的な安全域となり、不安を吸収するクッションの役割を果たす。これが、含み損バリアだ。
含み益バリアは心理の問題
重要なのは、含み益バリアは金額そのものよりも「どのくらい下がっても耐えられるか」という感覚に依存する点である。たとえば、20%の含み益がある場合、10%の下落は受け入れられる。「下落したが、それでも投資をしていない場合と比べれば資産は増えている」という事実が、不安を軽減するからだ。
この認知の変化が、冷静な判断を可能にする。
なぜ含み益が投資不安を軽減するのか?
含み益がなく不安になる理由
以下の図は、積立投資における含み益バリアの有無によって生じる心理状態の違いを示している。

- この図が示しているのは価格ではなく“心理の違い”である -
上段は、十分な含み益バリアが形成されていない積立初期の状態だ。わずかな下落でも評価額がマイナスに転じやすく、「将来が見えない」「今売るべきではないか」という不安が強くなりやすい。
一方、下段は含み益バリアが形成された後の状態である。一時的に大きな下落が発生しても、評価額は依然としてプラス圏にあり、心理的な余裕が保たれている。含み益が安定して積み上がると、投資家は価格下落を以前より冷静に受け止められる。
この含み益バリアが形成されるまでの期間は、一般的には少なくとも1年から2年程度が目安となることが多い。ここを超えると、投資に対する不安は大きく下がり、価格変動に一喜一憂しにくくなる。
損失回避バイアスを解決する含み益バリア
含み益バリアの心理を理解するためには、損失回避バイアスという投資心理の基本を知る必要がある。
失回避バイアスとは、利益を得る喜びよりも損失を被る苦痛を強く感じる心理傾向である。含み益が十分にある状態では、「損失を避けたい」という感情が相対的に弱まる。その結果、短期的な下落に過剰反応しなくなる。
そして、含み益バリアが形成されると、投資家の視点は短期から長期へと自然に移行する。価格の上下ではなく、資産全体の成長に意識が向くためである。
まとめ:積立投資の初期は耐えることが重要
含み益バリアとは、一定の含み益があることで相場変動への不安が軽減する心理的状態である。不安の正体は相場ではなく、人間の認知と感情にある。
含み益バリアを理解することは、長期投資を続けるための重要な視点であり、含み益バリアがない投資初期は「損失回避バイアス」の存在と「含み益バリア」の仕組みを理解した上で、冷静に投資判断を行うことが重要である。
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