2025年4月現在、S&P500は年初来の上昇基調から一転、調整局面に入っている。こうした相場環境では、アナリストの予想も下方修正されやすい。実際、2025年3月31日において、ゴールドマン・サックス社のはチーフストラテジスト、デービッド・コスティン氏は、S&P500の2025年末予想を「5,700」に引き下げた。僅か20日前に「6,200」と予想していることから20日で約8%も下げたことになる1。
トッププロのアナリストが見通しを引き下げることで、市場の悲観が一段と強まり、長期インデックス投資家の狼狽売りを誘ってしまう。では、こうしたアナリストの予想をどのように捉えるべきだろうか?
株価が下がればアナリスト予想は下がり、株価が上がればアナリスト予想は上がる。アナリスト予想は、株価予測ではなく、現在のマーケット価格の説明であるといえる。将来予測ではなく過去の説明、これが、S&P 500のアナリスト予想である。
今回は、世界最強の投資銀行であるゴールドマン・サックスの米国株チーフストラテジスト、デービッド・コスティン氏の予想を軸に、アナリスト予測がどのように変化していったかを見ながら、アナリスト予測は「将来予測ではなく過去の説明」説を解説していきたい。
業界の重鎮:デービッド・コスティン氏
デービッド・コスティン氏は、ゴールドマン・サックス社の顔として、いろいろなメディアに長年にわたって露出している業界の重鎮ともいえる方だ。
経歴も華やかだ。アメリカのアイビー・リーグを構成する名門大学であるブラウン大学を卒業。1986年から1994年までは、ソロモンブラザーズ、1994年からはゴールド・マンサックスと名門投資銀行に所属している金融エリートだ。ゴールドマン・サックスにおいては一貫して、リサーチ部門に所属し、2011年から米国株のチーフストラテジスト(経済や市場の動向を分析して、投資に関する戦略や方針を立案する専門家)として活躍している2。
2024年末のS&P500アナリスト予想と結果
以下が、実際のデービッド・コスティン氏がメディアに示した2024年末のS&P500の予想だ。このような予想は年末か、今から1年後に、という形で提示されることが多く、今回はデータをそろえるために2024年末の予想を集約した。
| Bloombergに掲載された日 | 予測(A) | 予測時点での株価(B) | 差(B/A %) | 年末価格(C) | 差(C/A %) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年12月18日3 | 5,100 | 4,741 | 8% | 5,882 | 13% |
| 2024年2月19日4 | 5,200 | 5,006 | 4% | 12% | |
| 2024年5月15日5 | 5,200 | 5,308 | -2% | 12% |
現在の市場価格に沿った予想
アナリスト予想はその時点の株価を大きく逸脱することは少ない。むしろ、比較的その時点の市場価格に沿った水準で提示されている傾向が見て取れる。これは、予想があくまで「その時の状況での合理的なバリュエーションの延長線上」にあり、極端な乖離を避けているようにさえ思える。
これは、予想と予想時点での株価、つまりB/Aの水準は、時間の経過と共に小さくなる傾向がわかる。
実際、2023年末に出された予想「5,100」に対し、2024年末の実際の終値は「5,882」と大きく上回った。これを逆説的に説明すると、
・ 2024年がS&P 500の平均よりも大きく株価が上がった年であった。
・ ただし、予想は現在の株価に大きく影響される。
・ 予想をどんどん更新しないと株価上昇に予想上昇が追い付かない
ということだろう。
2025年末のS&P500アナリスト予想
以下が、デービッド・コスティン氏がメディアに示した2025年末のS&P500の予想だ。
| Bloombergに掲載された日 | 予測(A) | 予測時点での株価(B) | 差(B/A %) |
|---|---|---|---|
| 2024年11月19日6 | 6,500 | 5,917 | 10% |
| 2025年3月12日7 | 6,200 | 5,572 | 11% |
| 2025年3月31日8 | 5,700 | 5,612 | 2% |
2025年に入り、アナリスト予想は下方修正の局面に入っている。2月後半の下落相場に入りすぐに、6,500 → 6,200 → 5,700と、段階的に引き下げられている。いわば、12.3%引き下げられているが、その間、S&P 500も最大10%程度の下落を経験している。
つまり、アナリスト予想は、とにかく現在に起こっていることに影響されているように思える。トッププロの予測には、独創的な未来予測はないように思える。
アナリスト予想は現在価格の説明であり、未来の保証ではない?
アナリスト予想は、株価予測という側面より、現在のマーケット環境の説明である。
相場が大きく下落すれば、アナリスト予想もそれに連動して下方修正される。そして、相場が回復すれば、再び予想も上方へと修正される。この動きは予測というより、むしろ結果の反映である。
実際、ゴールドマン・サックスのような一流証券会社に所属する大物アナリストであるデービッド・コスティン氏でさえ、年初に示した強気予想を短期間で下方修正してきた。トランプ政権下の相場を振り返ると、株価が激しく乱高下する一方で、回復は驚くほど早かったことも確認できる。結局のところ、株式市場は本質的に不確実性が高く、短期的な値動きをトッププロであっても正確に予測することは極めて難しい。この点については、別記事「株価予測は可能か?投資理論と投資心理で整理する」において、投資理論と投資心理の両面から体系的に整理している。
このように整理すると、投資家が取るべき姿勢は明確だ。アナリスト予想の数字を「将来の保証」と捉えるのではなく、投資エンターテイメントの一部として距離を取って受け止める必要がある。その一方で、株式市場は長期的に見れば右肩上がりで推移してきた。市場に長く残り続けることができれば、最終的にリターンを得られる可能性は高い。
結論としては、短期的な株価予測に振り回されるのではなく、投資家は自らが信じて構築した投資ポートフォリオを信じ、淡々と運用を継続することが重要である。
- ゴールドマン、S&P500種見通し再び引き下げ-景気・関税リスクで - Bloomberg ↩︎
- David Kostin - Partner, Chief U.S. Equity Strategist - Goldman Sachs | LinkedIn ↩︎
- ゴールドマン、来年のS&P500種ターゲットを約9%近く引き上げ - Bloomberg ↩︎
- ゴールドマン、S&P500目標を5200に上方修正-利益予想上振れ - Bloomberg ↩︎
- S&P500種、年末にかけて上値伸ばす可能性低いーゴールドマン - Bloomberg ↩︎
- S&P500種は2025年末までに6500に-ゴールドマンのコスティン氏予想 - Bloomberg ↩︎
- 米国株への懐疑的見方強まる-ゴールドマンがS&P500の目標引き下げ - Bloomberg ↩︎
- ゴールドマン、S&P500種見通し再び引き下げ-景気・関税リスクで - Bloomberg ↩︎
